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国籍法改正を巡る海外報道紹介と反対論の論点整理

2008年12月09日 12時11分03秒 | 日々感じたこととか


 


日本時間の12月5日午前10時過ぎ、「外国人たる母から産まれ日本人たる父がその子の出生後に認知した婚外子」にも日本国籍を認める改正国籍法が成立しました。そして、比較的地味な法律マターのニュースであるに関わらず改正国籍法の成立を比較的詳細に報じた外電もあった。本稿ではその外電を紹介し、もって、この間見聞きした国籍法改正反対論の主張を整理したいと思います。

出典はAssociated Pressの”Japan extends citizenship to out-of-wedlock babies,” Dec 5, 8:46 AM EST, 2008「日本、婚外子をも市民権付与の対象に」です。




Japan approved a law Friday that will grant citizenship to all children born out of wedlock to Japanese fathers who acknowledge them, regardless of the nationality of their mothers.

All children of Japanese women are automatically granted citizenship. Before Friday's revision, however, those born out of wedlock to foreign women could claim citizenship only if their Japanese fathers acknowledged paternity before the birth or later married their mothers.

The new law expands the ability of those children to claim citizenship, stating that they need only to be acknowledged by their fathers before a claim is filed.

To prevent fraudulent claims, the law stipulates that violators will be fined of up to 200,000 yen ($2,170) or sentenced to one year in prison. The law also requires the government to study the feasibility of introducing DNA testing.


金曜日【12月5日】、その母親の国籍にかかわらず、その父が認知した非嫡出子に対して市民権【KABU註:このcitizenshipはnationalityのparaphrase, variationであるが厳密には間違い。】を与える法が日本で成立した。

日本人たる母の子には例外なく自動的に市民権が与えられているが、金曜日の法改正までは、【その日本人たる父と】婚姻関係にない外国人の母から産まれた子が市民権を得るのは、日本人たる父がその子の出生前に認知するか、あるいは、その子の母親と結婚するかのいずれかの場合に限られていた。

改正された新しい法律は、そのような【日本人たる父と婚姻関係にない外国人の母が産んだ】子が市民権を得る道を拡大した。すなわち、改正された法律はそのような子は市民権の申請手続き前にその父から認知を受けるだけでよいと規定したのだ。

詐欺的な犯罪を防止するため、改正国籍法は違反者には20万円($2,170)以下の罰金、もしくは、1年以下の懲役を課すと定めている。また、改正された法律は政府に対して、DNA鑑定の導入の実現可能性についても調査研究するように要求している。


The revision came after 10 children born to unmarried Japanese men and Filipino women demanded citizenship. In June, Japan's top court ruled in their favor, saying that the previous restrictions on citizenship violated constitutional guarantees of equality.

The plaintiffs are among the offspring of thousands of Filipino women who came to Japan as entertainers beginning the 1970s. Many had children with Japanese men who already had wives.・・・

Nationality in Japan is determined solely by bloodline - not place of birth - though foreigners may apply to become citizens.

Japan has long been reluctant to host outsiders or grant them nationality for fear of disrupting its tightly knit society. Despite increasing immigration, foreigners still make up less than 2 percent of Japan's population of 128 million, compared to 12 percent in the United States.


今回の法改正は、婚姻関係になかった日本人男性とフイリッピン人女性との間にできた10人の子供達が市民権を要求したことの結果である。而して、この6月、日本の最高裁は今回改正される前の市民権の制限は平等を保障している憲法に違反すると述べ、子供達の訴えを認める判決を下した。

原告達は1970年代以降エンターテーナー【芸能関係者】として来日した何千人ものフイリッピン女性の子孫である。彼女達の中には妻帯の日本人男性との間で子をなした者も多い。(中略)

外国人も日本公民になるべく申請をすることも可能ではあるけれども、日本において国籍は出生地ではなく血筋に基づいて決定される。

日本は長らく、際立って同族的に結合しているその社会が混乱することを恐れるあまり外国人を【その社会に】迎え入れることや彼等に日本国籍を与えることには消極的だった。日本に入国する外国人の数は増加しているにもかかわらず、1億2千8百万の日本の人口の中で外国人はいまだに2%にも達していなのである。而して、アメリカ合衆国の人口に占める外国人の比率は12%だというのに。





◆国籍法改正反対論の論点整理
今次の国籍法改正に反対していた論者の中には「国籍法改正などせずとも当該の母親が日本人たる父と結婚すればよかった/帰化すれば何の問題もなかった(それなのに、わざわざ最高裁まで争ったについては国籍法を骨抜きにしようという反日勢力の弁護士やプロ市民団体等々の支援者の邪な意図を感じる)」という主張も見聞きします。論外です。

確かに、反日の弁護士やプロ市民団体の支援なりも6月4日の最高裁判決が出されたについては与して力あったのでしょう。けれども、彼等の意図がどうあれ法律論として当該の最高裁判決は出るべくして出されたものと言えるから(当該判決に関する私の評価については最後にURLを記した拙稿をご一読ください)。

而して、「結婚できない状況だから訴訟を起こしたフイリッピン人母親の立場」「帰化申請に関しては帰化が認められる保証がないこと」「日本人としての国籍の確認をその子が求めているからといって、その母が日本人になりたがっているとは限らないこと(正に、国籍選択は個人の自由であること)」を鑑みるならば、「母親が日本人たる父と結婚すればよかった/帰化すれば何の問題もなかった」などの主張には何の根拠もなく、それらは単に国籍法改正反対という自己の願望を叶えるために他者に不利益を押し付ける日本人の風上にも置けないさもしい言辞にすぎない。私はそう考えています。

畢竟、「日本人たる父が生後認知した、外国人たる母の子」を巡る今次の国籍法改正の論点は次のようなものではなかったか。すなわち、

(1)両親の婚姻を国籍取得の条件から外すことの是非
(2a)そのような子の認知に原則DNA鑑定を導入することと民法等との整合性
(2b)誰が見ても疑わしいカテゴリーの申請者に対してはDNA鑑定等も導入可能ではないか

今次の国籍法改正に関して、煎じ詰めれば、私は(1)「婚姻要件の削除はやむをえない」、(2a)「DNA鑑定を全申請者に適用することは民法等との整合性がとれないが」、(2b)「誰が見ても疑わしいカテゴリーの申請者に対してはDNA鑑定の導入可能」と考えています【これは下の図表に掲げた「保守改革派市民B」の立場に分類できるでしょう】。

民法に疎い憲法研究者等を含む【同じく下の図表に掲げた「保守改革派市民A」に分類される論者】は、(2a)の是非は民法等、法体系全体の整合性から導かれるものであること(その否定は「性善説」に立つものというより「自己責任の原則」の帰結であること)に対する理解が足りなかったのかもしれません。



而して、【上の図表に掲げた国粋馬鹿右翼的主張】の中には、本音では(1)が主な反対点であるがゆえに、(1)を容認する【保守改革派市民A/B】からの慎重審議要求を批判する動きもまま見られた。蓋し、彼等は(1)国籍要件から婚姻を削除しないことが目的であり、「改正国籍法のルーズな規定」による「治安悪化」「偽装認知の横行」等の不安はその方便にすぎなかったのかもしれません。

もちろん、「治安維持」や「偽装認知の予防」が国籍法と無関係なはずはない。けれども、それらは「国民の定義規定」としての国籍法というよりは国籍法・戸籍法を運用する下位の手続き規定で対処すべき事柄でしょう。畢竟、「国籍法改正に賛成→改正国籍法の単独の施行に反対」。可及的速やかに(2b)の運用下位法規の成立と施行を期すべきのみ。頑張りましょう。

尚、このイシューに関する私の基本的な考えについては下記拙稿をご参照ください。


 

・差別排外主義に抗して「国籍法改正に賛成→改正国籍法の単独の施行に反対」する
 http://blogs.yahoo.co.jp/nukunukupower/58976500.html

・国籍法違憲判決が問う<国民概念>の実相と再生
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-419.html

・国籍法違憲判決違法論の荒唐無稽
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-440.html

・Japan Times の「国籍法改正」報道
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/eeb0d3c6a2ebaf15326daaeb109fdf9c

 


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