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アメリカ大統領選挙に見る「United State」あるいは「保守主義の牙城」(下)

2012年01月05日 10時29分01秒 | 海外報道2012米国大統領選挙


◆アメリカ大統領選挙というクラインの壺:Federal Democracy

なぜ、「州毎の勝者総取り方式:Winner Takes All」はアメリカの政治文化に根ざしていると言えるのか。それは、アメリカ憲法の解釈改憲によって漸次連邦政府の権限が強まってきているとはいえ、歴史的にも憲法的にも現在に至るもアメリカは独立性の高い「諸邦」が連合した連邦国以外の何ものでもないからです。

ことほど左様に、アメリカは各々相矛盾する「連邦制」と「主権国家=国民国家」、および、「自由」と「民主主義」が紡ぎ出す、謂わば「二重螺旋構造の緊張関係」の上で建国以来その形を漸次変えてきたと言えるでしょう。蓋し、「National Republic」若しくは「Federal Democracy」という(「燃えない火」や「液体の氷」ほど形容矛盾には陥ってはいないものの、ある意味、空想上の)「麒麟」や「鳳凰」を追い求めてきた歴史がアメリカの国家と憲法の歴史だったの、鴨。

例えば、1787年制定の合衆国憲法を支持する連邦派(フェデラリスト:ワシントンを頭領に戴きハミルトンとアダムス率いる中央集権派)とこれに批判的な反連邦派(アンチ・フェデラリスト:ジェファーソン率いる州権擁護派)の二つがアメリカ建国後最初の政治的党派。一応、前者が今日の共和党、後者が民主党の源流とされますが、最初期には後者の反連邦派が自派をリパブリカン(共和派)と名乗ったのでややこしい。

また、フランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)以降は、民主党が大きな政府による福祉国家を、共和党が小さな政府による自己責任の原則が貫徹する自由な国家社会を標榜しており、「州権の擁護-連邦政府の権限拡大」という対立軸でアメリカ政治史を鳥瞰することは現在でも有効ではあるものの、共和党と民主党の政治的立場は歴史的には「あざなえる縄の如き様相を呈してきた」と言わざるを得ないと思います。閑話休題。



日本では親米保守派に対して「そんなにアメリカの<ポチ>になりたかったら51番目の州にでもしてもらえば」と揶揄されることもままある。

けれども、日本が51番目の州になった場合(2010年の人口統計では)538人の選挙人の128人が「日本州」に割り当てられることになり、この場合、カリフォルニア州は「55人→39人」に減少します。蓋し、既存の州の政治的な影響力を著しく減じるこの結果を鑑みれば、政治力学的な観点からはアメリカが日本の州としての加盟を認めるはずがないことは自明でしょう。

畢竟、アメリカは地方自治旺盛な国どころかやはり連邦制の国である。よって、アメリカの政治指導者はこの政治の原理を体得した人物にしか務まらないの、鴨。

而して、フランクリン・ルーズベルト大統領から現在のオバマ大統領まで、第二次世界大戦以降の13人の歴代アメリカ大統領の中で州知事経験者は5名と38.46%を占めていることも(前マサチューセッツ州知事であった共和党のロムニー氏が大統領に当選すれば、第二次大戦後の6人目の州知事経験者の大統領になり、知事経験者の占める割合は42.86%になることも、)偶然ではないのだと思います。





◆アメリカを貫く保守主義の心性とエートス

アメリカの政治は諸州と地域に根ざしている。本当のアメリカの心性はニューヨークやカリフォルニアの浮ついたリベラルな表層ではなく、中西部から南部を大河のように貫く大草原にこそ横たわっている。

実は、私自身、まだインターネットが普及していなかった20年近く前にこのことを皮膚感覚であらためて体感したことがあります。1980年代半ば、無線を使った遠隔地教育のあり方を見学させていただいていた、中西部はミネソタ州のある大学のディスタンスエデュケーションの光景が今でも目に浮かぶということ。

それは、ちょうど、3月上旬のこと、それこそ隣家まで車で30分という大平原に住んでいる高校生から「HarvardとUniversity of Chicagoからどちらも奨学金付きでアドミッション(合格通知)が来ました」と無線が入ったとき、そのデパートメントの全スタッフが歓声をあげた光景をです。





現在の世論調査の結果通り今回の大統領選挙は、中道左派のオバマ候補または中道右派のロムニー候補の勝利で終るのかもしれません。そう私も思います。コースト・ツー・コーストで幅広い有権者の支持を獲得して、日本で言えば「真正保守」なるイデオロギー過剰な候補では、最後の勝利を、11月第1月曜日の次の火曜日の<関ヶ原>で収めることは難しいでしょうから。

しかし、民主党が勝とうが共和党が勝とうが、アメリカの本質は「健全なる保守主義」にこそある。要は、伝統の尊重と、左右の教条主義への懐疑、加之、小さな政府を好ましく感じ、自己責任の原則に価値を置く心性こそアメリカのエートスの基盤である。と、そう私は考えます。

ならば、「the 99%」なるルソーの「一般意志」ばりの妄想が(要は、この世に「the 99%」という具多的な個人は存在せず、まして、「the 99%」の具体的な利害なり特定の政治的意思なるものも存在しないのです!)世間を騒がせたことに端的な如く、アメリカ社会の閉塞感を打破するには、「茶話会運動:Tea Party movement」に具現するアメリカの健全な保守主義を尊重する政策しかどの政権も取れるはずはないとも。

蓋し、このことは、「the 99%」が、結局、二大政党を通じても第三の政党を押し立てるにせよ今回の大統領選挙に駒を進める、資金力もなく政策の統合もできないでいるのを尻目に、「Tea Party」に親しいリバタリアンは第三の政党を通じても、あるいは、既存の二大政党を通してもいずれも大統領選挙に大きな影響を与えていること。このことを見ても(おそらく、誰が共和党の大統領候補になろうとも、大統領候補か副大統領候補は間違いなく保守派の人物が指名される趨勢であることからも)これはそうそう荒唐無稽な私の願望ではなかろうと思います。尚、アメリカ大統領選挙における「副大統領」と「宗教」の持つ意義については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。

・2012年大統領選挙の火蓋切られる!-アメリカ大統領選挙における「副大統領」と「宗教」の意味

 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ed00e7817a763a22f45839e7cf7a313e





ことほど左様に、世論調査の描く状況を超越した/貫く「地域に根ざしたUnited States」としてのアメリカという現象に思いを馳せる時、私は、自己責任の原則と隣人愛の精神に価値を置くアメリカの人々の心性を連想せざるを得ないのです。

先の実体験に引きつけて敷衍させていただければ、ウィスコンシン州やアイダホ州の、地平線を望む大平原に育ちながら、国家レヴェルの競争に参加して能力開発を怠らない、健全な野心と潔い自己責任の姿勢に満ちた1人の女子高校生がいたとすれば、そんな彼女をアメリカという社会は応援し彼女の存在を誇りに感じる社会である。すなわち、アメリカは彼女に遠隔地教育の便宜を与え奨学金を手配して、彼女のハーバードやシカゴ大学への進学を支援してやまない社会ということです。

加之、更に実例を加え敷衍します。
それはアメリカ出張の帰りに偶々隣に座った在日米軍兵士との出会い。

20歳の空軍兵士。彼女は感謝祭の休暇を郷里のモンタナ州ですごして東京に帰る途中でした。そう、家庭が貧しく、また、奨学金を獲得するGPA(高校の成績)も取れなかった田舎娘。彼女は、しかし、グラフィックデザイナーになる夢を叶えるため、大学・大学院に進む機会と資金を得るために、迷わず軍隊に志願したとのこと。


而して、自己紹介がすんでから成田に着くまでの10時間余り、私がアメリカの大学・大学院をクライアントとするコンサルタントと知るや、彼女からは、日本駐在中の進学準備のノウハウ(就中、中近東や南アジアに移動している際の米軍内の大学とe-learning併用のノウハウ)、そして、日本での就職のTipsを求める質問の嵐でした。しかも、情報のgive and takeのマナーを弁えた清々しい嵐。

Ask, and it shall be given you;
seek, and ye shall find;
knock, and it shall be opened unto you. 


そう、「求めよさらば与えられん!」なのです。アメリカの社会では、give and takeとAsk, and it shall be given youのマナー、並びに、僅かばかりのユーモアと勇気があれば、そして、十分な努力があれば与えられるのです。各人が欲してよいものがですよ。



而して、「アメリカ軍の兵士は貧困層出身者が多い、戦死者もよって出身家庭の所得に反比例する」等々の左翼・リベラル派の物言いは、彼女の前向きの姿勢、芳紀二十歳のレディーが漂わす気品に比べればいかにさもしく薄汚れたものか。

そのような左翼・リベラル派の物言いは、それが嘘でも本当でも、本当でも嘘でも、(与件としての不平等と個人の個性としての能力差が、寧ろ、自然である人間の現存在性のあり様を鑑みれば)問題を解決するという意味での正解にはけっしてたどり着けない不平不満にすぎない。それは、事実認識としては間違いではないのだろうけれど、与えられた人生を良く善く強く生きるという目的のためには不毛なもの、すなわち、自己を<神>の高みに置く、無責任な評論家の傲岸不遜にすぎない。と、そう私は考えます。

畢竟、彼女達の心性とその心性を受け止めるアメリカ社会のエートスは、貧困からの脱却や自己実現が思うようにいかない現状を連邦政府の無策に帰してこと足れりと考えるリベラルなsomethingとは好対照をなす保守主義の発露・顕現であるとも。

而して、そのような「保守主義の粋が息づく社会」は日本の社会統合の理念とも極めて整合的ではないでしょうか。ならば、この20年の間に、アメリカが世界唯一の超大国から極普通の世界一の大国になった現在、他方、日本がその安全保障においても国際政治・経済においてもアメリカとの枢軸関係に頼らざるをえない現在、蓋し、日本はアメリカに何かを期待することはそろそろ止めて、政治的と社会的の価値を共有するこの唯一の同盟国のために何が貢献できるかということをこそ考えるべきである。

2012年の大統領選挙の火蓋が切られた(日本時間・2012年1月4日の)今回のアイオワ州の共和党党員集会(Iowa Republican caucuses)の日、私はそう考えました。

尚、アメリカ大統領選挙に関しては下記の拙稿と「Yahoo検定」をご参照くだされば嬉しいと思います。


・来年はなんの年? アメリカ大統領選挙-観戦資格検定案内

 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60927803.html







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