アメリカ政府は「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」を米議会に通告しました。これにより、45日後の8月10日以降、特段の状況変化がない限り、北朝鮮は「テロ支援国家」としてアメリカ政府が同国(ちなみに、私は自国民の1~2割を餓死せしめるような政治体制を近代的な意味での「国家」とは呼べないと考えていますけれども、その北朝鮮に)課してきた数多の経済活動の制約から解放されることになります。
11月に大統領選挙を控えていることを鑑みた場合、(a)ブッシュ政権が残している任期の短さ、(b)国際問題に関しては北朝鮮などよりもイラク・イランに、そして何より国内問題によりエネルギーを注がねばならない同政権の状況、(c)アメリカ政治におけるアジア・太平洋地域の本質的な非重要性、ましていわんや北朝鮮問題の本質的な「細事性」を考慮すればアメリカ政府のこの決定はアメリカにとっては当然のことと言うべきでしょう。次期アメリカ大統領のポジションを争っている民主党オバマ、共和党マケインの両候補とも基本的にはこの決定を支持する旨を表明したことがなによりそれを雄弁に物語っていると思います。而して、この報道に接して私がまず感じたことは、むしろ今まで「テロ支援国家指定解除」を行なわないでくれたブッシュ政権への感謝です。
Thank you, President Bush.
I would like to express my heartfelt thanks to you
for your kindly support until yesterday.
以下、産経新聞とNew York Times (AP配信)から報道の引用。
●米政府「指定解除」を発表 20年経てついに
北朝鮮による核計画の申告書提出を受け、米政府は26日、同国を「テロ支援国家」としてきた指定を解除すると発表した。指定解除を議会に通告し、通告から45日で発効する。1988年から約20年間にわった米側の指定が解除に踏み込むことで、米朝関係は、最終的な非核化への取り組みをにらみつつ、将来的な正常化に向け動き始める。
指定解除に絡み、日本側で問題棚上げの懸念が強まる拉致問題については、ブッシュ米大統領が25日、福田康夫首相との電話協議で「決して忘れない」と伝達。米国務省のケーシー副報道官も、「解決に向けた日本の取り組みを引き続き支援する」と説明した。
テロ支援国家の指定解除は、大統領からの書面指示を受け、国務長官が議会に通告手続きを取るもよう。リビアなど過去のケースから、指定解除にかかわる一連の文書には、北朝鮮に関してテロ支援の危険がないと判断した根拠が簡潔に示されるものとみられる。(2008.6.26)
●Bush administration lifts North Korea sanctions
After months of stalling, North Korea offered a glimpse of its secretive nuclear program Thursday and was promptly rewarded by President Bush with an easing of trade sanctions and a move to take the communist state off the U.S. terrorism blacklist.
Bush, who once famously branded North Korea a part of his ''axis of evil,'' offered mostly symbolic concessions in exchange for Kim Jong Il's agreement to hand over a long-awaited accounting of its nuclear bomb-making abilities. Critics said even symbolism was too much give to a regime that can't be trusted.
●ブッシュ政権が北朝鮮制裁を解除する
数ヵ月の停滞を経て、北朝鮮が木曜日(26日)これまで秘密にしてきたその核開発計画の一部をほのかに垣間見せる報告書を申告した。この報告書の提出に対してブッシュ大統領は、貿易に関する制裁の緩和とこの共産主義国家(★KABU註:北朝鮮は「絶対主義王朝」と言うべきである。)をテロ支援国家のリストから削除することで北朝鮮に報いることにした。
周知の如く、かって彼の言う「悪の枢軸」の一角と北朝鮮を名指ししたことさえあるブッシュ大統領は、遅れに遅れたとはいえ核兵器開発能力に関する説明の提出がなされたこともあり、その説明提出を巡る金正日氏との協定に基づき、その提出に対する見返りとして象徴的なものではあれ譲歩したわけだ。而して、識者によれば、象徴的なものとは言え、到底信用できるはずもない政権に対するものとしては、このブッシュ政権の決定は気前が良すぎるものらしい。(June 26, 2008:以上、引用終了)
率直に言えば、拉致問題はアメリカの問題ではなく日本の問題です。よって、この件に関してアメリカ政府の不義理をなじることなど筋違いである。まして、冷厳冷徹な国際政治の現実、かつ、「万物は流転する」の理が最も顕著な国際政治の現実を鑑みるならば、再度述べますが、昨日まで「テロ支援国家指定解除」を拒んでくれていたブッシュ大統領に感謝こそすれ、北朝鮮の報告書の提出を受けて「テロ支援国家指定解除」を決断したブッシュ大統領を非難するなどは大人の態度ではない。それは、単なる一ファンにすぎない者が贔屓のアイドル歌手の熱愛発覚報道に接して怒りをぶちまける愚行にさえ等しい。そう私は考えます。
畢竟、日本国民はアメリカ政府による北朝鮮のテロ支援国家指定解除という事実を冷静に受け止めるしかない。その事実を踏まえて日本国民は冷厳冷徹、かつ、「100年の友も100年の敵も存在し得ない」変転極まりないな国際政治においては、確立した国際法と国際政治の慣習、つまり、国際政治の世界の作法に則った対応を粛々と行なうべきのみ、と。而して、施策の実際の効果と政治的メッセージとしての効果を考えるならば、日本が今後取るべき施策とは次のようなものではないかとも。すなわち、
(0)日米同盟が日本外交の基軸である認識の表明
(1)アメリカ政府に対する遺憾の意とこれまでの感謝の意の表明
(2)アメリカ政府に対する日本国民の遺憾の意の表現として、
・対米軍の所謂「おもいやり予算」の1年間凍結
・1年間の所謂「おもいやり予算」と同額の資金を1988ー2008の間、日本駐留経験のあるアメリカ兵またはその遺族に謝礼として贈与(公務員利益供与禁止、就中、外国政府からの利益供与を禁止するアメリカ国内法に抵触する部分に関しては、在日駐留米軍勤務経験者の人数比に応じて各地の在郷軍人会に寄付、または、Veteran's benefitの一貫として本人またはその親族の方を対象とした日本留学奨学基金「ブッシュ基金」の設立)
(3)上記、(0)(1)(2)の趣旨を米国の主要な新聞・TVに記事広告として掲載
(4)拉致問題が解決するか検証可能で不可逆な前進が認められるまでの間、所謂「6ヵ国会議」への出席の無期限停止
(5)ロシアとの間で「軍事同盟の締結」を議題から排除することなく、包括的な関係強化交渉に入る用意がある旨を表明
(6)北朝鮮籍在日朝鮮人の方の所謂「在日特権」の廃止(尚、この措置はその運用によっては、現行憲法の理念に反する「差別的取扱」に該当する恐れもある。而して、公平平等を期し北朝鮮籍の方々だけではなく韓国籍の在日韓国人の方に関しても所謂「在日特権」の廃止を同時に行なう。また、この措置により増加が予想される帰化希望者に対しては人員的に法務省だけでは対処できないかもしれない。よって、公安調査庁・国税庁の職員も動員して帰化申請に対しては失礼のないように手厚く対応する)
(7)日本が核武装に向けて研究を開始する旨の表明
(8)現行の有事法制を改正し、スパイ防止法・軍事法廷の設置(戦車からウインカーを外せ! 航路の優先航行権を自衛艦に認めよ!)等々、非有事・非周辺事態における「軍隊」としての自衛隊を運用する上での障害の全廃
(9)所謂「6ヵ国会議」にかかわった過去現在の外務省職員の責任を明らかにすべく(日本政府に籍を置いている者に関しては)、外務省から自衛隊の現場部隊に5年間もしくは定年までの短い方の期間出向させ、安全保障の現場感覚を「反省文」という形式で全国民に還元する
(10)上記の措置の人的手当として、また、日本外交のステップアップのためにボルトン元国連大使等のアメリカの北朝鮮制裁解除反対派、ならびに、旧ソ連・東欧およびラテンアメリカの優秀な外交官経験者を外務省の幹部職員として大量に採用する
今回のアメリカ政府による「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」の決定という現実が、このような措置を日本が取ることについて日本国民のコンセンサスを形成するための契機になるとするならば、蓋し、ブッシュ政権の決定は日本にとって<神風>と呼ぶべきものかもしれない。私は真面目にそう考えています。畢竟、人生万事「塞翁が馬」。ピンチはチャンス、チャンスはピンチです。而して、拉致被害者全員の一日も早い救出に向けて、保守改革派の仲間の皆さん、各自自分の持ち場で微力を尽くしましょう。共に闘わん。
こんにちは。北朝鮮への制裁はかなり効いています。ここで手を緩めることはできません。たとえ、アメリカがテロ支援国家指定解除後でも有利になるように立ち回る方法はいくらでもあります。詳細は、私ブログを是非ご覧になってください。