自民党総裁選2012は安倍晋三候補の勝利で終わりました。
蓋し、(1)日教組・自治労の解体(より正確には、それらの政治活動に対するより憲法規範に沿った制約の導入)、(2)日米同盟の再構築-再強化、(3)集団的自衛権の行使を制約している現在の政府解釈の変更、あるいは、(4)特定アジア諸国との公平で合理的な国際関係を再構築する上でも、実は、最早、百害あって一利なしの「河野談話」の否定(かつ、このような嘘八百の官房長官の私的談話が日本政府の公式見解でもあるかのように世界で流布している現状、就中、所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る朝日新聞の誤報に対する調査を行う国会調査委員会の設立)。
加之、(5)憲法改正、並びに、(6)国際法と確立した国際政治の慣習に則ったものに特定アジア諸国との外交関係を移行させること、そして、(7)社会保障制度の自助と自己責任の原則に基づく抜本改革と経済的規制の極小化、並びに、地方再生の推進、(8)教育部面における保守主義の貫徹。
これら(1)~(8)を巡る私の憲法論については下記自薦記事リストに掲げた拙稿をご参照いただければ大変嬉しいのですけれども、これらの実現を希望する保守系ブログとしては、<安倍総理の逆襲>という事実はまずは喜ばしいことと考えています。
けれども、早速、左翼・リベラル系の論者やマスメディアは安倍総裁の逆襲を巡ってはネガティブなコメントを発信しているようです。左翼・リベラル派に対する今後の反批判作業の資料とすべくその幾つかをまず転記しておきます(下線および【】内はKABUによるもの)。
・自薦記事一覧:保守主義の憲法論-憲法の改正/破棄を求めて
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11199216659.html
▼自民総裁選 党員票の「民意」無視
自民党総裁選は、一回目の投票で石破茂前政調会長が党員の「民意」ともいえる地方票(党員票)の過半数を獲得したにもかかわらず、国会議員だけによる決選投票で逆転され、安倍晋三元首相が新総裁に選ばれた。勝負を決めた決選投票の議員票を見ると、安倍氏は一回目の投票より五十四票増やしたのに対し、石破氏もほぼ同じ五十五票を上積みした。決選投票に進めなかった石原伸晃幹事長ら三人を支持した議員の票の行き先は真っ二つに割れたことがうかがえる。・・・
決選投票では、議員票の差が拡大し、惨敗の可能性すらささやかれていた石破氏が八十九票を獲得。安倍氏(百八票)の十九票差まで迫ったものの、大きく伸ばすことはできなかった。
安倍陣営は一回目の投票で優勢だった議員票を固めたうえ、決選投票で同じ派閥に所属する町村陣営の多くを取り込んだ。町村氏は投票先について「やっぱり仲間意識はある」と、安倍氏支持を示唆。石原氏を支援した額賀派の議員も安倍氏に流れた。これに対し、石破氏は一回目の投票で地方票(党員票)の過半数を獲得したことを受け、石原氏の出身派閥である山崎派は決選投票で石破氏に投票する方向となった。林氏を支援した古賀派が決選投票でだれに投票するか指示しなかったため、林陣営の議員の多くが石破氏に投票した。
ただ、石破氏が地方票で過半数を獲得したことが議員の投票に決定的な影響を与えたとはいえない。石破氏が一回目の安倍氏との票差をわずかしか縮められなかったことを考えれば、影響は限定的だった。安倍、石破両氏は外交・安全保障など政策面での主張が似ていることから、結局、派閥やベテラン議員とのしがらみで投票先を決めた議員が多かったようだ。
(東京新聞・2012年9月27日)
▼56年ぶり決選逆転!安倍新総裁“民意なき返り咲き”
自民党は26日午後、総裁選の投開票を行い、安倍晋三元首相(58)を新総裁に選出した。1回目でトップの石破茂前政調会長(55)に決選投票で逆転勝利。党所属国会議員を前に政権復帰への強い意欲を示したが、地方票で石破氏に大差をつけられての2位から選出されたことに「民意が反映されていない」と地方から批判の声が上がった。党人事では石破氏を幹事長などの要職で起用するとみられる。 ・・・
(スポニチ・2012年9月27日)
▼「民意反映されていない」秋田県連4役が辞意
自民党秋田県連の大野忠右エ門会長ら4役は26日、安倍晋三元首相が選ばれた党総裁選の結果について「民意が反映されていない」として県連の役職辞意を表明した。大野会長は記者団に「改革の必要があったにもかかわらず、旧態依然の党体質が変わっていない」と指摘。渋谷正敏幹事長も「地方の声を考えていない。国会議員が何を基準に投票したのか疑問だ」と述べた。秋田県連の持ち票は4票で、石破氏が3票、安倍氏が1票だった。
(産経新聞・2012年9月26日)
▼党員票ほぼ互角「想定内、党内は一致団結」
26日の自民党総裁選は、安倍晋三元首相が党員投票でトップの石破茂前政調会長を決選投票で破ったが、【安倍候補支持の麻生派の牙城である神奈川県の】神奈川県連の党員投票結果は算定票で石破氏5票、安倍氏4票とほぼ互角だった。このため、党員票と逆転する格好となった結果でも、県連では次期衆院選へのマイナスの影響を否定する意見が強い一方、「永田町の論理だ」と懸念の声も聞かれた。・・・
県連幹事長の竹内英明県会議長は「地方の意見を聞かない現執行部の流れを止めたい」と早くから石原氏不支持を打ち出しており、「想定していた2人の決選投票で、県連としては良しとする結果」と評価した。・・・前回衆院選で落選し、再起を目指す選挙区支部長の1人は、派閥の長老が推した石原氏の得票が伸びなかった点を「派閥政治が終わったことを有権者にアピールできた」と指摘。別の支部長は「2人の政策に大きな隔たりはなく、党内は一致団結できる」とみる。
(産経新聞・2012年9月26日)
>党員票の「民意」無視(東京新聞)
>民意なき返り咲き(スポニチ)
本稿では(アメリカでは大統領退任後も大統領経験者の正式呼称は(紛らわしくない限り)「president」であり「前」とか「元」はつかないことに鑑み、)安倍新総裁を原則「安倍総理」と表記していますが、その他、「派閥力学再び」「国民世論に近い地方の声軽視」「民意より永田町の論理」等々、上に転記したように安倍総理に対するネガキャンが早速出ています。而して、私はこれらのフレーズを弄んでいる論者は「民主主義」や「立憲制」というものが分かっていないのだろうと思います。加之、石破氏と並んで安倍総理が今回派閥の論理を否定して立候補した事実を忘れたのか、とも。
これ、「地方症」ならぬ痴呆症? もとい認知症?
何より、民主党内の議員グループは「善」かつ「新」で自民党のそれは<派閥>であり「悪」かつ「古」なのでしょうかね? 率直に言えば、民主党の議員グループは「派閥」の域にさえ達してない私欲の坩堝なんじゃないのかな(爆)。
その点で流石なのは朝日新聞。「安倍氏、難路の再登板-派閥の支えなく苦戦」(2012年9月27日第2面記事)、「もともと安倍氏は本命視されていなかった。ところが、谷垣禎一前総裁を立候補断念に追いやる形になった石原伸晃幹事長がまず失速。決選投票では派閥会長や古参議員に嫌われている石破茂前政調会長に競り勝った。いわば消去法的な選択といっていい」(同日付け社説)等々、朝日新聞は「派閥の力学」と安倍総理返り咲きを一応分けて報じているから。
まあ、そんな事実認定のことで揚げ足を取られたくないということか。流石、揚げ足取りの名人は自分がその愚を犯すことには敏感なの、鴨(笑)。いずれにせよ、「派閥」を巡る私の基本的理解については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。閑話休題。
・<再論>派閥擁護論-派閥は政党政治の癌細胞か?
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11352837015.html
さて、グローバル化の昂進著しい、かつ、(左では唯物史観や普遍的なる人権観念、右においては国粋馬鹿右翼的の皇国史観等々、左右の教条を粉砕する、価値相対主義の価値論と分析哲学・現象学の方法論が支配する)現下の人類史段階において、すなわち、国際化の波濤に洗われている福祉国家の大衆民主主義社会において「民主主義」とは何なのでしょうか。民主主義とは何か?
蓋し、「民主主義」とは、①政治の方針を決める権威、よって、政権(≒政党の執行部)の正当性は(個々の国民やその偶さかの集団ではなくて)<総体としての国民>の意向に起因するという価値論、および、②何が<総体としての国民>や<総体としての党員>の意向であるかを確定するルールが事前に定められているという手続論の合体なのです。
実際、アメリカの大統領選挙のプロセス。「予備選挙」と呼ばれる、共和党と民主党の大統領候補を選ぶ、両党の全国大会においても、例えば、有力候補者が乱立して(「ドングリの背比べ」とも言う?)どの候補者も党の大統領候補のポジションを獲得するために必要な代議員の過半数を得られない場合には、代議員は地方の党員の意向には取りあえず拘束されなくなり、代議員間の話し合いで党の大統領候補が決定される仕組なのです。
而して、その代議員間の話し合いの結果が地方の党員の意志とねじれる結果になったとしても、①党員の総体としての意志が政治的決定の究極的な権威であること、および、②その党員の総意を具現する手続が踏まえられている限り、このような代議員間の話し合いによる候補者決定も/代議員間の話し合いによる候補者決定こそ民主主義の帰結と言えるのだと思います。
よって、「党員の民意vs党員を含む有権者の委託を受けた議員の意志」などの対比は社会思想的・憲法総論的には全く意味がない。まして、国会議員は地方党員から「強制委任」されてはいないのであり、ならば、非対象的な存在たる両者、地方の党員・党友と国会議員の意向を同列に論じるのは無意味。
加之、「政党」とは究極的には私的なもの(例えば、自民党の総裁選挙にも民主党の代表選挙にも公職選挙法は適用されず、票の売買も各陣営の派遣する運動員による投票依頼も毫も違法ではないのですから)。ならば、総裁決定において、100%党員票に基づき決定するにせよ、100%党所属の国会議員の投票で決定するにせよ、何が政党メンバーの<総意>であるかを決めるルールをどのようなものにするかも「政党」自体に委ねられている/委ねられるしかないのです(尚、「政党」と民主主義を巡る私の基本的理解については下記拙稿をご参照ください)。
・政党政治が機能するための共通の前提
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11142645831.html
・政治主導の意味と限界
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11142630431.html
・民主主義の意味と限界-脱原発論と原発論の脱構築
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11138964915.html
畢竟、石破茂氏や小泉進次郎氏がいみじくも述べたように石破候補は「ルール」に則って戦い敗れた。その過程で「地方の民意」によって、石原氏・町村氏・林氏は1回戦で姿を消したのではなかったか? そこに「地方の民意」が少なからず作用した。もし、そうでなければ、今回の総裁選は第1回目の国会議員票数で1位と2位を占めた「石原 vs 安倍」の構図での決選投票になったはずであり、件の石破候補は第1回投票の段階で敗退したはずなのですから。
すなわち、安倍総理の逆襲。蓋し、これこそ<民意>と<民主主義>の具現に他ならない。
6票の県の持ち票の中3票が安倍候補に寄せられた、
福岡県のコアな自民党員たる私はそう考えます。
而して、安倍総理の逆襲に、
б(≧◇≦)ノ ・・・乾杯~♪
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