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「福田康夫首相」とは何だったのか☆内閣改造ですか、それが何か?

2008年09月07日 14時27分35秒 | 日々感じたこととか


最早半月前の記事だけれど「福田首相による内閣改造と党役員人事」を俎上に載せたいと思います。英文報道の紹介。公私多忙でこの半月余り更新が滞っていたのですがぼちぼちキャッチアップしていきたい、ならば、やはりこのニュースを避けては通れない。そう考えたからです。

この記事を通して考えさせられたポイントは、内閣改造によってもそう芳しいとはいえない福田康夫首相とその政権の低い支持率の原因は何なのか。要は、「福田康夫首相」が体現している日本の政治状況のあり方、而して、「政治に国民が求めるもの」とその政治状況の間にいかなる<ねじれ>が存在するのかです。出典は、Reuters, Friday, August 1, 2008, "Japan PM revamps cabinet, taps rival for key post"「日本の首相が内閣を改造、枢要なポストへの就任をライバルに要請」です。



Struggling Japanese Prime Minister Yasuo Fukuda tapped a popular rival for a top party post and replaced finance and economics ministers in a leadership shake-up on Friday to try to boost his flagging support among voters.


日本の窮地に陥っている福田康夫首相は、土曜日(=7月31日)の内閣改造と与党役員人事において、低下傾向にある彼に対する支持率を上昇させるべく、国民的な人気を持つライバルに党の最高幹部のポストに就任するよう要請し、かつ、財政と経済を取り仕切る閣僚も入れ替えた。


Fukuda, 72, wants to put his stamp on economic policy and erase doubts about his leadership that threaten his grip on power after just 10 months in office.

But it was unclear how effective the personnel revamp will be, especially after a high-profile delay in making the move that fed perceptions that Fukuda is indecisive.


福田首相(72歳)は、自身が志向する経済政策を実行すること、そして、就任からちょうど10ヵ月経って権力の掌握を脅かすようになっている彼の指導力に対する懸念を払拭することを望んでいる。

しかし、この人事一新がどの程度の効果をもたらすかは不透明である。特に、この人事異動の遅れが世間の注目を浴び、もって、その遅れが「福田は煮え切らない」という認識を一層広めてしまった今となってはその効果はなおさら不透明だ。


The prime minister appointed his ruling party No. 2, Bunmei Ibuki, for finance minister and drafted one-time foreign minister Taro Aso, a hawkish popular lawmaker and a rival for the premiership, to take on the key party post of secretary general.

Fukuda probably wants to draw on the popularity of Aso, a fan of manga comic books, to improve the ruling bloc's chances in a general election that must be held by September 2009 and could well come sooner, analysts said.・・・


首相は首相率いる与党のNo.2、伊吹文明氏を財務大臣に指名した上で、麻生太郎元外相を、この国民的人気を持つタカ派の国会議員にして首相の地位を脅かすライバルを幹事長という党の要のポストに就くよう促した。

おそらく福田首相は麻生氏の人気に頼りたいのだろう。漫画ファンの麻生氏の人気を利用することで、2009年9月までには必ず、否、ひょっとしたらそれ以前に実施されるかもしれない総選挙において与党の勝算を高めたいのではないか、と専門家は述べている。(中略)


Fukuda changed most of his ministers, bringing back several veteran but keeping four important posts unchanged, including Foreign Minister Masahiko Komura and Chief Cabinet Secretary Nobutaka Machimura, the top government spokesman.

Some analysts saw the new line-up as a signal of Fukada's intention to stress welfare issues and bread-and-butter issues close to voters' hearts -- a message underscored by his appointment of popular female lawmaker Seiko Noda to a new consumer affairs post.・・・


福田首相はその閣僚のほとんどを入れ替えた。しかし、一方、新たに幾人かのベテランを起用し、重要な四つの閣僚ポストには手をつけなかった。それら重要ポストには高村正彦氏の外務大臣、真に内閣を代表する日本政府のスポークスマンを務める町村信孝氏の内閣官房長官が含まれている。

内閣改造と党役員人事は、有権者の関心に直結する福祉の問題と日常生活の問題に福田首相が力を入れるつもりであることのシグナルであろう。そう見る識者は少なくない。而して、そのシグナルは人気のある女性国会議員、野田聖子氏が新たに消費者問題担当の閣僚に指名されたことにより一層強調されているとそれらの識者は考えている。(後略)



参議院選挙での「与党の地滑り的敗北→ネジレ国会の現出」は福田康夫氏の責任ではない。それは、(これはその再起を念じての叱咤激励の呼称なのですが)「根性なしの安倍前首相」が負うべき事柄である。而して、安倍前首相の責任は端的に言えば、①朝日新聞やNHKを始めとするマスメディア、あるいは、社会保険庁の職員組合を含む自治労等々の大東亜戦争終結後のこの社会で跳梁跋扈し猖獗を極めた戦後民主主義を信奉する勢力による常軌を逸した凄まじいネガティブキャンペーンに有効な反撃ができなかったこと、そしてなにより、②平成の大宰相・小泉純一郎元首相が断行した構造改革と並んで地方再生をも同時に具現する具体策を有効に提示できなかったことことだ。

福田政権は安倍政権の負の遺産を抱えて船出したのであり、<7・29>以降の政治構図の中では、おそらく(民主党の党首も含め)誰が宰相の印綬を帯びたとしても福田康夫首相と大同小異の政治しかできなかったのではないか。概略、私はこのように見ています。

では、福田政権はなぜにかくも不人気か。蓋し、この問いに対する解答はそう難しくはない。それは、首相が福田康夫氏だから、と。もし、この解答が満更私の妄想ではないとするならば、福田政権を苦しめている現下の支持率の低さは、「福田康夫首相」が体現している日本の政治のあり方に対する国民の不満と不安、而して、「政治に国民が求めるもの」と現下の日本の政治状況の間に<ねじれ>が存在していることの証左であろうと思います。

世界中でそれに対する批判が渦巻いているチベットと東トルキスタンにおける人権侵害が現在進行形の状況下で、あるいは、支那製の毒餃子問題の存在自体を支那政府が認めていない中で、胡錦濤主席の訪日を受け入れ北京オリンピックの開会式に出席する。このような福田首相と彼が選んだ閣僚・党役員の媚支那の言動に対して不信感を抱いている国民は少なくないでしょう。まして、(経験則的には)絶対に約束を守るはずのない北朝鮮に対して、拉致問題の再調査を約束したことの見返りに制裁措置の一部緩和を表明した福田首相に対しては国粋馬鹿右翼ならずとも保守改革派の多くの論者も憤りを隠さない。

ただ、それによって「損して得取れ」的な成果を狙っているとするならば、外交交渉のマヌーバーからは(不愉快ながら)上記の福田政権の支那と北朝鮮に対する対応は満更全否定されるものではない。まして、構造改革の断行継続と地方再生の同時実現という方向づけは間違ってはおらず、それこそ、それは安倍前首相が<7・29>で勝利できたとすれば着手したであろう(而して、麻生太郎幹事長が現在その実現に自身采配を揮うべく虎視眈々と中原に鹿を逐おうとされている、正に、そのような)政策路線であろうと思います。

何を私は言いたいのか。それは、(甲)<7・29>後の現実政治の場面でできうることに限定すれば、宰相・福田康夫とその政権がこの10ヵ月行ってきたことは、ある意味、間違いなく国民の多数が望んでいることの最大公約数的な内容と言えるだろうこと。他方、(乙)最早、国民の最大公約数的な政治的要求に応えることでは国民は政治と政治家に満足しない状況にこの社会は踏み込んだのかもしれないこと。畢竟、(丙)「政治に国民が求めるもの」は個々の政治課題の解決(外交や安全保障、地方分権や公務員制度の改革、国際競争力維持向上と厚生経済学的な経済政策)だけではなく、政治理念とビジョンの端的な表明、それらを実現する方法論(ロードマップとマイルストーンとデッドライン)の提示、而して、政治の方法における旗幟鮮明さではないか。そう私は思うのです。

蓋し、福田康夫首相が不人気なのは国民の多くが彼に「新しい時代状況に拮抗できないでいる情けない自分の姿」を感じているからではないか。「鏡に映った、時の流れを越えて変わらない夢を見たがる自分」=「宰相・福田康夫」ではないか、と。

畢竟、「福田康夫」は55年体制下の内外の政治状況であれば戦後史に残る名宰相になったかもしれない。しかし、情報流通がグローバル化して政治家・官僚・マスメディアと一般の国民との間の情報の非対称性が決定的ではなくなりつつある現在、練達の政治技法は陳腐な政治スタイルでしかなく、理念と方法を簡明直截に明示しないそのパーソナリティーは単なる「日本政治の不安定要因」でさえある。ならば、福田政権の支持率低迷は時代と世情の変化と、そして、その事に日本人の過半が好むと好まざるとにかかわらず気づきつつあることの証左ではないか。現在進行形で変わらない首相と現在完了形で変容した国民の政治意識の落差。これが「福田康夫首相の不人気」の構図であろう。そう私は考えます。

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