青山望シリーズの第12弾で、2018年12月に文庫のための書き下ろしとして出版された。そして、これがこのシリーズの最終作となる。なぜなら、ここで取り扱われる事件を最後に、同期4人のカルテットが組めなくなるというエンディングを迎えるに到るからだ。
最初にこのタイトルに触れておこう。龍が中学、高校の同窓会人脈から、担当案件に関連する背景情報を収集するために関西に一週間の出張をする。そして彼らとの会話の中で龍が語った言葉に出てくる。次の様な会話がかわされる。
「ゴミは多いで」
「ようわかっとります。その中でも、いまのうちに摘んでおかねばならないような、根絶ちしておいた方がいいようなゴミを取り払おうと思うてます」
「それは警察を挙げて・・・・・という意味か?そやないと意味ないで。九州、福岡の暴力団狩りのようにな。徹底的に集中できるかどうかや」
「今、それを任されてます。刑事警察だけやのうて、公安も一緒ですわ」
「公安か・・・・恐ろしい組織なんやろな?」
「まさに最恐組織ですわ。あらゆる手をサラッと使って、敵を根絶やし・・・・という感じですわ」
ここに龍が警察務めの仕上げにしようと追跡している案件への意気込みが現れている。
来年、内山警視総監は任期より半年早く辞任し国政を目指し衆院選に出る心づもりである。彼は大和田に参議院選挙に選挙区から出馬してはどうかと声を掛けた。その根回しも既にできているという。内山は国政の場に臨むにあたり、懐刀となる人材を欲し、大和田の力量に目をつけていた。大和田は重大な選択の岐路に立つことになる。
一方、龍は実家がもと関西財閥の一つであり、現在扱っている案件を解決した後、辞職して実家に戻り実業界に身を転じることを考え、密かに準備をしているという。
ノンキャリアの4人が、警察組織の中でノンキャリアの最高到達と見做されるポジションに一緒につけないことは明白な事実である。警視庁に入り、50歳を目前にした彼らはそろそろ警察組織内での生き方の選択を迫られていた。今後の生き方をどう選択するかの思いが底流に描きこまれていく。それは警察組織におけるノンキャリアの出世の限界を描き出すことにもなっている。
それぞれは直面する事件の捜査を指揮しながら、最後の機会として同期カルテットの強固なチームプレイを発揮していく。その結果、それぞれが担当する事件は背後で巧妙にリンクし接点をもっていた。その壮大な構図が明らかになっていく。政治の世界と金融界との繋がり、そこに反社会的勢力が巧妙に絡んでいるという構図は、フィクションではあるが実にリアル感に溢れている。
4人が己の生き方をどう選択するのか。それがどのように描き込まれていくかという点は読者にとって気がかりなサブ・テーマとなる。
プロローグは、東京マラソンの走行ルートで発生する事件の経緯を描く。四井銀行本店の総務部長と副部長が初出場を果たす。ハーフポイントを過ぎた給水所でボランティアから手渡された栄養ドリンクを飲んだ副部長の土山啓介が突然腹部を押さえて蹲る。そのまま死亡。これが事件の発端となる。行政解剖の結果、血液分布異常性ショックによる多臓器不全とされた。だが5日後に検体分析結果が判明し、胃の中から高濃度のメタフェタミンが検出され、急性覚醒剤中毒死とわかる。ボランティアが運営している給水所で多量の覚醒剤を混入したドリンクを飲んだことに起因する。オリンピックを2年後に控えて、東京マラソン中に発生した事件は、都知事ばかりでなく官邸まで揺るがす問題になる懸念を含む。いわば一種のテロ行為の可能性まで想定する必要があるかもしれないと・・・・。
深川署に特別捜査本部が立ち、捜査第一課が担当する。四井銀行が捜査に非協力的であり、被害者本人が何度もの銀行統合を経て四井銀行での現在の地位に就いていることも影響し、捜査が暗礁に乗り上げる。
また、5月に行われる浅草三社祭の最中に、警備に就いていた機動隊員が仲見世の裏通りを移動中に、5人のマル暴風の男たちが心肺停止状態になっているのを発見する。福山会系の浅草中村組の連中で、その一人は若頭補佐の古賀俊作と判明した。検体の組織検査結果で、こちらも急性覚醒剤中毒と断定される。浅草署に特別捜査本部が立つが、こちらは組対第四課が担当することになる。組対第四課長はキャリアだが変わり者という。
このストーリーの始まりでまず面白いのは、警察組織の所管の縦割りと地域割り、そして個別組織ごとの力関係や思惑が、特捜本部の設置自体に絡んでいることの描写にある。
これら特捜本部が立った時点で、カルテットの面々がどう関わっていくのか。
大和田は内山総監の特命を受けて、東京マラソン事件に関わっていく。
青山は、まず大和田から連絡を受け、情報交換をする。また青山は藤中と会う。一方、大和田は龍と合う。
青山は、独自に調査を始める。大和田との情報交換で、岡広組系二次団体が行ったシャブを飲ませるという公開処刑の例から、急性覚醒剤中毒症状と致死量の関係、2つの事件の関係に注目する。公安総務課長と話し合った青山は、副部長土山の銀行内での勤務経歴情報を課長から入手できた。それを契機に、土山の履歴の詳細追跡を手がけて行く。それが様々な過去の事件との繋がりへと波紋を広げていく。この縺れた糸が解きほぐされていくプロセスが読ませどころとなる。
土山の銀行勤務履歴は、関西の中規模銀行の兵庫大空銀行から始まっていた。そこで青山は、関西経済の裏側を知る為に、龍に協力を依頼する。彼の実家が元関西財閥だったことによる。その結果、龍が爺と呼ぶ吉澤清造、大菱銀行神戸支店顧問と青山は面談する。それは青山にとり関西経済を動かす人々の存在、経済の裏側での密なる情報交換の実態を知る経験でもあった。土山は将来の銀行統合化を見据え、敢えて地方銀行に入行して頭角を現す戦略をとったことがわかる。土山が裏の世界と繋がりのある側面の業務に積極的に関わっていたことも見えて来る。
一方で、青山は岡広組総本部若頭補佐の白谷にコンタクトをとる。昔話とともに最近の関西の金融事情を知るためである。裏社会から見た経済の動きを探るというところ。エピソードとして関西空港の埋立造成の話が出てくるが実に興味深い。リアル感が漂ってくる。
様々な情報収集は、隠退して高野山に棲む清水保との面談に青山を導いていく。
龍は岡広組総本部のマネーロンダリングを追跡していた。代々木教をはじめとした宗教団体の財務や政治家が多く連なっている状況が明らかになってきたと龍は青山に語る。情報収集で関西に出張した龍は、同窓会仲間から神戸の造船所の軍艦造船技術がチャイニーズマフィア関係に狙われているという噂を聞くことになる。
大和田は独自に、新宿歌舞伎町で福山会系一次団体の組長・根岸徹と会い、裏社会の動向について情報収集を試みる。そこには幾つもの問題兆候が含まれていた。
藤中は所轄警察署長を経験した後、再び警察庁長官官房分析官に戻っていた。そして、チャイニーズ・マフィアとコリアン・マフィアの連中による不法行為に関して福岡を拠点にして追っていた。清水保は藪中にとってやはり貴重な情報源だった。福岡県警の捜査第二課長、キャリア警視の里見幸次とも懇意な間柄になっている。
そして、カルテットが福岡に集合する。なぜ、福岡なのか?
青山は、土山の入行した兵庫大空銀行を調べ始めた時点からの経緯を順を追い説明していく。ある鉄鋼大手企業の合併問題という過去の事件から始まり現下の事件・案件が繋がって行くことになる。さらに、それはロシアンマフィアに繋がる。福岡に日本で活動する拠点を創ろうとしているという。つまり、福岡に繋がって行くことになる。
ロシアンマフィアの登場はチャイニーズマフィア、コリアンマフィアにつながり、日本の反社会的勢力との繋がりとなっている。ロシア・中国・北朝鮮がリンクしていることにもなる。そこまでの広がりと闇を繋ぐ事件が起こっていた。
博多にロシアンマフィアの極東地域首領のセルゲイ・ノブリョフが訪れてくるという。もとGRUに所属した大佐級の諜報機関員でもあった。如何にこの人物を阻止できるか。 そして、カルテットが結集して挑む最終決戦へと進展していく。
そのターゲットはいくつかある。岡広組総本部が博多湾内にある埋立地に建設した大型冷凍庫、急性覚醒剤中毒という手段を使った殺人犯、そして極東ホールディングスである。
このストーリーのおもしろいところは、急性覚醒剤中毒による殺人事件の特捜本部の捜査は暗礁に乗り上げ、被害者の一人土山の銀行履歴を青山が調べ始めて、それがトリガーとなるところにある。過去及び現在進行形の様々な事件が相互にリンクしていく。その繋がりが明らかになる中で、殺人事件の実行犯もまた判明していく。廻り廻って事件が解明されるという構成展開にある。
2つの特捜本部の捜査が暗礁に乗り上げている状態に対して、藤中が合同捜査を提案する。捜査一課長は了解する。組対第四課長に藪中は面会を申し込む。このキャリアの組対第四課長に対する藪中の対応のしかたが実に痛快である。
その上で、さらに興味深いのは清水保の存在かもしれない。
本書のエピローグにカルテットの人生選択の結論が出ている。大和田は政界をめざす。龍は実家に戻り、起業を志す。藤中と青山は警察に留まる。
青山は妻の文子の質問に答える。「藤中とライバル? 考えたこともないな」「藤中と競争する点がないからな。仕事以外でも、競うものがないよ」と。
その続きの二人の会話部分もおもしろい。
一筋縄では行かないストーリー展開を大いに楽しんでいただきたい。
ご一読ありがとうございます。
こちらの本も読後印象を書いています。お読みいただけるとうれしいです。
『警視庁公安部・青山望 爆裂通貨』 文春文庫
『一網打尽 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 国家簒奪』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 聖域侵犯』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 頂上決戦』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 巨悪利権』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 濁流資金』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 機密漏洩』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 報復連鎖』 文春文庫
『政界汚染 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『完全黙秘 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
最初にこのタイトルに触れておこう。龍が中学、高校の同窓会人脈から、担当案件に関連する背景情報を収集するために関西に一週間の出張をする。そして彼らとの会話の中で龍が語った言葉に出てくる。次の様な会話がかわされる。
「ゴミは多いで」
「ようわかっとります。その中でも、いまのうちに摘んでおかねばならないような、根絶ちしておいた方がいいようなゴミを取り払おうと思うてます」
「それは警察を挙げて・・・・・という意味か?そやないと意味ないで。九州、福岡の暴力団狩りのようにな。徹底的に集中できるかどうかや」
「今、それを任されてます。刑事警察だけやのうて、公安も一緒ですわ」
「公安か・・・・恐ろしい組織なんやろな?」
「まさに最恐組織ですわ。あらゆる手をサラッと使って、敵を根絶やし・・・・という感じですわ」
ここに龍が警察務めの仕上げにしようと追跡している案件への意気込みが現れている。
来年、内山警視総監は任期より半年早く辞任し国政を目指し衆院選に出る心づもりである。彼は大和田に参議院選挙に選挙区から出馬してはどうかと声を掛けた。その根回しも既にできているという。内山は国政の場に臨むにあたり、懐刀となる人材を欲し、大和田の力量に目をつけていた。大和田は重大な選択の岐路に立つことになる。
一方、龍は実家がもと関西財閥の一つであり、現在扱っている案件を解決した後、辞職して実家に戻り実業界に身を転じることを考え、密かに準備をしているという。
ノンキャリアの4人が、警察組織の中でノンキャリアの最高到達と見做されるポジションに一緒につけないことは明白な事実である。警視庁に入り、50歳を目前にした彼らはそろそろ警察組織内での生き方の選択を迫られていた。今後の生き方をどう選択するかの思いが底流に描きこまれていく。それは警察組織におけるノンキャリアの出世の限界を描き出すことにもなっている。
それぞれは直面する事件の捜査を指揮しながら、最後の機会として同期カルテットの強固なチームプレイを発揮していく。その結果、それぞれが担当する事件は背後で巧妙にリンクし接点をもっていた。その壮大な構図が明らかになっていく。政治の世界と金融界との繋がり、そこに反社会的勢力が巧妙に絡んでいるという構図は、フィクションではあるが実にリアル感に溢れている。
4人が己の生き方をどう選択するのか。それがどのように描き込まれていくかという点は読者にとって気がかりなサブ・テーマとなる。
プロローグは、東京マラソンの走行ルートで発生する事件の経緯を描く。四井銀行本店の総務部長と副部長が初出場を果たす。ハーフポイントを過ぎた給水所でボランティアから手渡された栄養ドリンクを飲んだ副部長の土山啓介が突然腹部を押さえて蹲る。そのまま死亡。これが事件の発端となる。行政解剖の結果、血液分布異常性ショックによる多臓器不全とされた。だが5日後に検体分析結果が判明し、胃の中から高濃度のメタフェタミンが検出され、急性覚醒剤中毒死とわかる。ボランティアが運営している給水所で多量の覚醒剤を混入したドリンクを飲んだことに起因する。オリンピックを2年後に控えて、東京マラソン中に発生した事件は、都知事ばかりでなく官邸まで揺るがす問題になる懸念を含む。いわば一種のテロ行為の可能性まで想定する必要があるかもしれないと・・・・。
深川署に特別捜査本部が立ち、捜査第一課が担当する。四井銀行が捜査に非協力的であり、被害者本人が何度もの銀行統合を経て四井銀行での現在の地位に就いていることも影響し、捜査が暗礁に乗り上げる。
また、5月に行われる浅草三社祭の最中に、警備に就いていた機動隊員が仲見世の裏通りを移動中に、5人のマル暴風の男たちが心肺停止状態になっているのを発見する。福山会系の浅草中村組の連中で、その一人は若頭補佐の古賀俊作と判明した。検体の組織検査結果で、こちらも急性覚醒剤中毒と断定される。浅草署に特別捜査本部が立つが、こちらは組対第四課が担当することになる。組対第四課長はキャリアだが変わり者という。
このストーリーの始まりでまず面白いのは、警察組織の所管の縦割りと地域割り、そして個別組織ごとの力関係や思惑が、特捜本部の設置自体に絡んでいることの描写にある。
これら特捜本部が立った時点で、カルテットの面々がどう関わっていくのか。
大和田は内山総監の特命を受けて、東京マラソン事件に関わっていく。
青山は、まず大和田から連絡を受け、情報交換をする。また青山は藤中と会う。一方、大和田は龍と合う。
青山は、独自に調査を始める。大和田との情報交換で、岡広組系二次団体が行ったシャブを飲ませるという公開処刑の例から、急性覚醒剤中毒症状と致死量の関係、2つの事件の関係に注目する。公安総務課長と話し合った青山は、副部長土山の銀行内での勤務経歴情報を課長から入手できた。それを契機に、土山の履歴の詳細追跡を手がけて行く。それが様々な過去の事件との繋がりへと波紋を広げていく。この縺れた糸が解きほぐされていくプロセスが読ませどころとなる。
土山の銀行勤務履歴は、関西の中規模銀行の兵庫大空銀行から始まっていた。そこで青山は、関西経済の裏側を知る為に、龍に協力を依頼する。彼の実家が元関西財閥だったことによる。その結果、龍が爺と呼ぶ吉澤清造、大菱銀行神戸支店顧問と青山は面談する。それは青山にとり関西経済を動かす人々の存在、経済の裏側での密なる情報交換の実態を知る経験でもあった。土山は将来の銀行統合化を見据え、敢えて地方銀行に入行して頭角を現す戦略をとったことがわかる。土山が裏の世界と繋がりのある側面の業務に積極的に関わっていたことも見えて来る。
一方で、青山は岡広組総本部若頭補佐の白谷にコンタクトをとる。昔話とともに最近の関西の金融事情を知るためである。裏社会から見た経済の動きを探るというところ。エピソードとして関西空港の埋立造成の話が出てくるが実に興味深い。リアル感が漂ってくる。
様々な情報収集は、隠退して高野山に棲む清水保との面談に青山を導いていく。
龍は岡広組総本部のマネーロンダリングを追跡していた。代々木教をはじめとした宗教団体の財務や政治家が多く連なっている状況が明らかになってきたと龍は青山に語る。情報収集で関西に出張した龍は、同窓会仲間から神戸の造船所の軍艦造船技術がチャイニーズマフィア関係に狙われているという噂を聞くことになる。
大和田は独自に、新宿歌舞伎町で福山会系一次団体の組長・根岸徹と会い、裏社会の動向について情報収集を試みる。そこには幾つもの問題兆候が含まれていた。
藤中は所轄警察署長を経験した後、再び警察庁長官官房分析官に戻っていた。そして、チャイニーズ・マフィアとコリアン・マフィアの連中による不法行為に関して福岡を拠点にして追っていた。清水保は藪中にとってやはり貴重な情報源だった。福岡県警の捜査第二課長、キャリア警視の里見幸次とも懇意な間柄になっている。
そして、カルテットが福岡に集合する。なぜ、福岡なのか?
青山は、土山の入行した兵庫大空銀行を調べ始めた時点からの経緯を順を追い説明していく。ある鉄鋼大手企業の合併問題という過去の事件から始まり現下の事件・案件が繋がって行くことになる。さらに、それはロシアンマフィアに繋がる。福岡に日本で活動する拠点を創ろうとしているという。つまり、福岡に繋がって行くことになる。
ロシアンマフィアの登場はチャイニーズマフィア、コリアンマフィアにつながり、日本の反社会的勢力との繋がりとなっている。ロシア・中国・北朝鮮がリンクしていることにもなる。そこまでの広がりと闇を繋ぐ事件が起こっていた。
博多にロシアンマフィアの極東地域首領のセルゲイ・ノブリョフが訪れてくるという。もとGRUに所属した大佐級の諜報機関員でもあった。如何にこの人物を阻止できるか。 そして、カルテットが結集して挑む最終決戦へと進展していく。
そのターゲットはいくつかある。岡広組総本部が博多湾内にある埋立地に建設した大型冷凍庫、急性覚醒剤中毒という手段を使った殺人犯、そして極東ホールディングスである。
このストーリーのおもしろいところは、急性覚醒剤中毒による殺人事件の特捜本部の捜査は暗礁に乗り上げ、被害者の一人土山の銀行履歴を青山が調べ始めて、それがトリガーとなるところにある。過去及び現在進行形の様々な事件が相互にリンクしていく。その繋がりが明らかになる中で、殺人事件の実行犯もまた判明していく。廻り廻って事件が解明されるという構成展開にある。
2つの特捜本部の捜査が暗礁に乗り上げている状態に対して、藤中が合同捜査を提案する。捜査一課長は了解する。組対第四課長に藪中は面会を申し込む。このキャリアの組対第四課長に対する藪中の対応のしかたが実に痛快である。
その上で、さらに興味深いのは清水保の存在かもしれない。
本書のエピローグにカルテットの人生選択の結論が出ている。大和田は政界をめざす。龍は実家に戻り、起業を志す。藤中と青山は警察に留まる。
青山は妻の文子の質問に答える。「藤中とライバル? 考えたこともないな」「藤中と競争する点がないからな。仕事以外でも、競うものがないよ」と。
その続きの二人の会話部分もおもしろい。
一筋縄では行かないストーリー展開を大いに楽しんでいただきたい。
ご一読ありがとうございます。
こちらの本も読後印象を書いています。お読みいただけるとうれしいです。
『警視庁公安部・青山望 爆裂通貨』 文春文庫
『一網打尽 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 国家簒奪』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 聖域侵犯』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 頂上決戦』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 巨悪利権』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 濁流資金』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 機密漏洩』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 報復連鎖』 文春文庫
『政界汚染 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『完全黙秘 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます