「利休にたずねよ」に対して、
利休は、結局
秀吉に答えなかった。
利休の侘び茶は枯れることなく、その底に熱を秘め、艶がある。
その真因を突き止めたい秀吉のあくなき欲望に対し、
利休は怒りとともに切腹を受入れた。
天正19年2月の「死を賜る」日を起点に、物語は過去へ過去へと遡っていく。
遡及していくタイム・ポイントで焦点をあてられた人物が、
利休の茶の美の追究あるいはその考え・行動に関わっていく。
それらのエピソードが描かれ、積み重ねられていく。
それは、あたかも点描派画家の描く一点一点が、
独立していながら
絵を構成する必須の要素としてつながっていくようである。
そこに、利休の茶を究明する広がりと奥行きが生まれている。
時は、与四郎(利休)19歳の「恋」にまで遡る。
その恋の結果が
「利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまった」
という発想と展開はユニークで新鮮だった。
利休秘蔵の小さな緑釉の香合がストーリーを貫く黒子。
しかしその香合は、
切腹の当日に時が戻る物語の最終章で、
利休の妻・宗恩が擲ち砕いてしまう。
そこには宗恩の女の想いが凝縮されている。
緑釉の香合に仮託した千利休への著者のロマンを感じる。
[付記]
グーブログで読後印象記を書き始める前に、一時期アマゾンに読後印象記を投稿していた。その当時投稿した記録から、本の幾つかをチェックしてみると、今も掲載されているものがある。上記の読後印象記をチェックしてみたが、こちらは削除されたようだ。その時の原稿(2008/12時点)を保管していたので、再録しておきたい。(表示スタイルを変更、一部語句修正のみ)
千利休関連小説の読後印象記を残した手始めだった思い出と、茶の世界関連での読書印象記をここに一元化したいために・・・・・。
これまでに、茶の世界に関連した本を断続的に読み継いできています。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
=== 小説 ===
『利休の闇』 加藤 廣 文藝春秋
『天下人の茶』 伊東 潤 文藝春秋
『宗旦狐 茶湯にかかわる十二の短編』 澤田ふじ子 徳間書店
『古田織部』 土岐信吉 河出書房新社
『幻にて候 古田織部』 黒部 享 講談社
『小堀遠州』 中尾實信 鳥影社
『孤蓬のひと』 葉室 麟 角川書店
『山月庵茶会記』 葉室 麟 講談社
『橘花抄』 葉室 麟 新潮社
=== エッセイなど ===
『千利休 無言の前衛』 赤瀬川原平 岩波新書
『藤森照信の茶室学 日本の極小空間の謎』 藤森照信 六耀社
『利休の風景』 山本兼一 淡交社
『いちばんおいしい日本茶のいれかた』 柳本あかね 朝日新聞出版
『名碗を観る』 林屋晴三 小堀宗実 千宗屋 世界文化社
『売茶翁の生涯 The Life of Baisao』 ノーマン・ワデル 思文閣出版
「遊心逍遙記」として読後印象を掲載し始めた以降に、今は亡き山本兼一さんのこんな作品を読み継いできます。こちらもご一読いただけるとうれしいです。
『利休の風景』 淡交社
『花鳥の夢』 文藝春秋
『命もいらず名もいらず』(上/幕末篇、下/明治篇) NHK出版
『いっしん虎徹』 文藝春秋
『雷神の筒』 集英社
『おれは清麿』 祥伝社
『黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎』 講談社
『まりしてん誾千代姫』 PHP
『信長死すべし』 角川書店
『銀の島』 朝日新聞出版
『役小角絵巻 神変』 中央公論社
『弾正の鷹』 祥伝社
利休は、結局
秀吉に答えなかった。
利休の侘び茶は枯れることなく、その底に熱を秘め、艶がある。
その真因を突き止めたい秀吉のあくなき欲望に対し、
利休は怒りとともに切腹を受入れた。
天正19年2月の「死を賜る」日を起点に、物語は過去へ過去へと遡っていく。
遡及していくタイム・ポイントで焦点をあてられた人物が、
利休の茶の美の追究あるいはその考え・行動に関わっていく。
それらのエピソードが描かれ、積み重ねられていく。
それは、あたかも点描派画家の描く一点一点が、
独立していながら
絵を構成する必須の要素としてつながっていくようである。
そこに、利休の茶を究明する広がりと奥行きが生まれている。
時は、与四郎(利休)19歳の「恋」にまで遡る。
その恋の結果が
「利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまった」
という発想と展開はユニークで新鮮だった。
利休秘蔵の小さな緑釉の香合がストーリーを貫く黒子。
しかしその香合は、
切腹の当日に時が戻る物語の最終章で、
利休の妻・宗恩が擲ち砕いてしまう。
そこには宗恩の女の想いが凝縮されている。
緑釉の香合に仮託した千利休への著者のロマンを感じる。
[付記]
グーブログで読後印象記を書き始める前に、一時期アマゾンに読後印象記を投稿していた。その当時投稿した記録から、本の幾つかをチェックしてみると、今も掲載されているものがある。上記の読後印象記をチェックしてみたが、こちらは削除されたようだ。その時の原稿(2008/12時点)を保管していたので、再録しておきたい。(表示スタイルを変更、一部語句修正のみ)
千利休関連小説の読後印象記を残した手始めだった思い出と、茶の世界関連での読書印象記をここに一元化したいために・・・・・。
これまでに、茶の世界に関連した本を断続的に読み継いできています。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
=== 小説 ===
『利休の闇』 加藤 廣 文藝春秋
『天下人の茶』 伊東 潤 文藝春秋
『宗旦狐 茶湯にかかわる十二の短編』 澤田ふじ子 徳間書店
『古田織部』 土岐信吉 河出書房新社
『幻にて候 古田織部』 黒部 享 講談社
『小堀遠州』 中尾實信 鳥影社
『孤蓬のひと』 葉室 麟 角川書店
『山月庵茶会記』 葉室 麟 講談社
『橘花抄』 葉室 麟 新潮社
=== エッセイなど ===
『千利休 無言の前衛』 赤瀬川原平 岩波新書
『藤森照信の茶室学 日本の極小空間の謎』 藤森照信 六耀社
『利休の風景』 山本兼一 淡交社
『いちばんおいしい日本茶のいれかた』 柳本あかね 朝日新聞出版
『名碗を観る』 林屋晴三 小堀宗実 千宗屋 世界文化社
『売茶翁の生涯 The Life of Baisao』 ノーマン・ワデル 思文閣出版
「遊心逍遙記」として読後印象を掲載し始めた以降に、今は亡き山本兼一さんのこんな作品を読み継いできます。こちらもご一読いただけるとうれしいです。
『利休の風景』 淡交社
『花鳥の夢』 文藝春秋
『命もいらず名もいらず』(上/幕末篇、下/明治篇) NHK出版
『いっしん虎徹』 文藝春秋
『雷神の筒』 集英社
『おれは清麿』 祥伝社
『黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎』 講談社
『まりしてん誾千代姫』 PHP
『信長死すべし』 角川書店
『銀の島』 朝日新聞出版
『役小角絵巻 神変』 中央公論社
『弾正の鷹』 祥伝社
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