山口県県史編さん室に投稿していた標記の小論文を掲載する『山口県史研究』第30号が完成し発行されました。掲載は82~92ページです。
近年日本史学界で議論を深めつつある「自治体史論」につき、実際編さん事業に携わった研究者がその意義を説明するのに重点を置きがちな動向に対して、都(道府)県ごとに「市町村史を大づかみで見る」方法論まで新たに提起したのが、関東近世史研究会の企画「関東近世史研究と自治体史編纂」(2009~2018年)です。そこでは、1つの都県ごとに発行史誌の分析一覧表を、開催する例会ごとにレイアウトを改良しながら見やすくすることに努められました。
こうした一連の取り組みにつき、評価点と課題点を整理しつつ私自身の取り組みと照らし合わせながら、将来山口県域をめぐっても議論が盛んになっていくための道筋をつけようとしています。ただ、元々は、山口県域で発行された史誌の分析一覧表を載せてその考察まで述べる計画でした。しかし、投稿の〆切日前に新型コロナウイルス感染症の第5波が到来して山口県内の図書館がことごとく臨時休館……。史誌現物の最終チェックができなくなったため、分析の部分は省略して、もっぱら研究動向ばかり述べるものに仕上げました。分析の成果については後日、別の会誌で発表したいと思います。
なお、完成誌のタイトル表示につき、表紙で「関東近世史研究に学ぶ自治体史論のあり方の変化」とありますが、これは発行者側の誤植ですので、ご注意願います。