KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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箱根の山は天下の・・・vol.3

2005年01月22日 | 駅伝時評
箱根駅伝のテレビ中継の視聴率が高い理由の一つは、ずばり、

「他に見るべき番組がない。」

というのもあると思う。来年の正月、2日か3日のちょうど正午頃にメイン・イベントを行い、テレビで生中継をする興行を行う格闘技団体はないだろうか?
「紅白を潰した、次は箱根を潰す!」
というわけで。昔、天龍源一郎がいた団体(名前ど忘れした。)が正月興行に「闘会始(たたかいはじめ)」と名づけていたのは、うまい、と思った。どこかで復活しないだろうか?

どこのテレビ局も、箱根駅伝とは視聴率争いをするつもりがないのだろうか?箱根を中継するテレビ局は、正月番組の予告番組で、箱根駅伝のことを「アマチュア・スポーツ最後の聖域」と称していたが、「聖なるもの」だけにケンカをしたくないのだろう。

以前、僕は、箱根に、高卒で実業団入りして活躍している選手、数年前だとコニカミノルタの松宮兄弟や、ヤクルトの辻隼、最近だとアテネ五輪代表になった大野龍二らを中心に、実業団の「U-23選抜」チームや、海外の同年代のランナーらをオープン参加させてみたら面白そうだ、と思ったことがある。しかし、全日本実業団駅伝が、元旦開催からかつてのように、12月開催に戻ったとしても、これは実現不可能なプランだと思うようになった。これは、「箱根駅伝の真の価値」を破壊するプランだと気づいたからだ。

箱根駅伝は学生ランナーのための大会である。これが、重要なのだ。「学生ランナー」というのは、「アマチュア」だからである。日本では、しばしば、同じスポーツでも、学生の大会の人気が社会人を上回る。ラグビーは早明戦はNHKで生中継されるのに、W杯は地上波で見られなかった。Jリーグ以前は、高校サッカーの方が日本リーグよりも人気が高かった。

その理由は、日本人の中に
「アマチュアはプロよりも尊い。」
という意識が根強いせいではないだろうか?

箱根駅伝は激しいレースであるが、勝者はそこで金銭的な報酬を得られるわけではない。
「それが潔い。」
と思っている人も意外と少なくないかもしれない。

プロ野球選手の五輪出場をめぐり、「プロ野球界の盟主」を標榜するチームのオーナーであり、箱根駅伝を主催する新聞社の会長は、
「プロ選手が出場するようになって、オリンピックは堕落した!」
と語っていたではないか!彼の「暴言」に共感を覚える人はけっこう多いのだろうな。

オリンピックに「プロ」が出場するようになった今、箱根駅伝こそ、「真のアマチュアの祭典」として、その価値を主催するメディアは高めようとしているのではあるまいか?
「今や箱根は、オリンピックを越えた!」
と言わんばかりに。

ケニアからの留学生を起用する大学が、批判にさらされるのも、それがプロ・チームにおける「助っ人外国人」を連想させるからだろう。同年代の若者には珍しくない、茶髪にピアスのランナーが批判されるのも、高校球児の「眉剃り」が批判されるのにも似ている。

僕は「アマチュア=善、プロ=悪」という二元論はナンセンスだと思っている。以前、書いたことだが、「プロとアマの違い」を最初に、マラソン界で示したのは、ソウル五輪のマラソンで4位でゴールした後、
「1位でなければ、ビリも同じです。」
と語った中山竹通さんだと思っている。これこそ、「プロ」の言葉だ!
ソルトレイク五輪で銀メダルを獲得して、にこりともしなかったスピード・スケートの清水宏保
にも、中山さんと共通するプロ意識を感じた。

今や、「学生アスリート」が全て「アマチュア」とは限らない。卓球の人気女子選手、彼女は高校生だが、企業とプロ契約をしている。

「月刊陸上競技」誌の2004年12月号の「編集長ひとりごと」というコラムに気になる言葉があった。編集長の廣瀬豊氏は、箱根駅伝を主催する関東学生陸上連合の会長でもある方なのだが、そのような地位の方が、駅伝人気の盛り上がりの一方で、
「華やかなレースを支える水面下の熾烈な選手勧誘合戦」
を危惧しているのである。3人ものプロ野球チームオーナーの引責辞任を招いた球界の贈賄問題を
「明確な規約があり、それを犯した罪によるもの。」
とし、
「日本の陸上界には勧誘に係るなんの規約もありません。事態は深刻です。各組織ごとの規約の制定が急務と思われます。」
と結んでいる。「危ない話」はいくらでもありそうだ。短期間で、急に人気が高まった反動が怖い。

箱根駅伝、礼賛しようと思えば、いくらでもできるし、批判しようと思ってもいくらでもできる。ともあれ、トラック長距離種目とマラソンの日本記録を独占しているランナーも、世界選手権で2回、五輪で1回入賞しているランナーも箱根を走っていない、という事実を箱根駅伝を貶める材料に使うのはやめようと思うし、箱根の区間新記録をマークしたランナーを、次の五輪のマラソン代表候補のごとく扱うのもやめようと思う。

(了)




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