4年前の夏、東海地方のI市の課長が朝のジョギング中に亡くなった事件について、現在、ネットの検索で知り得る範囲で、紹介してみます。
もともと、自身も腹囲90cmを越えるメタボ体型だったこの町の市長が、市民に肥満予防の普及、啓発を行なうために、市の幹部職員ら7人で、3ヶ月で、腹囲85cm以下を目指して減量に取り組むという企画だったといいます。名付けて
「七人のメタボ侍 内臓脂肪を斬る!」
健康課の職員が立てたプランをそれぞれが実施し、体脂肪値や体重、腹囲の測定値をホームページで公表もしていたそうです。
亡くなったのは当時47歳の健康福祉部の課長で、腹囲は100cmを越えていたといいます。立ち上げの際は「出陣式」まで行なったそうですが、それから1ヶ月過ぎた休日の朝、ジョギングに出かけた2時間後に路上にて遺体で発見されたのでした。
彼の上司である健康福祉部の部長は、部下の死を、「痛恨の極み」としたものの、
「死亡と減量の因果関係はなく、減量のために運動すること自体は健康に良い行為」
と述べたのだそうです。その後もプランは「六人の侍」として、継続され、予定通り3ヶ月後に、結果が発表されました。それによると市長は5.6kgの減量に成功し、腹囲も84.5cmに減らすことが出来たのだそうです。
本稿において、事件の舞台となった市や市長らの実名を伏せているのは、市長の責任を追及することが本稿の目的ではないので、あくまでも当時のメディアで報道された記事からの引用に留めました。
なお、I市のホームページを検索したところ、2年後の市長選挙で当時の市長は落選していて、同様の企画は現在は実施されていないようでした。
僕もダイエットを目的にランニングを始めた者ですから、ダイエットについては、自分なりに研究していました。3ヶ月で5kg以上の体重減が妥当か無茶かの判断は出来ませんが、少なくとも、ダイエットには法則があります。
「短期間で増えた体脂肪は、短期間で落とせるが、長い時間をかけて身体にこびりついた体脂肪は、長い時間をかけないと落とせない。」
ものなのです。
そして、ランニングを続けてきて思い知ったことは、
「ダイエットのために、ランニングをするのは無理がある。ランニングをするために、ダイエットを行なうべきなのだ。」
という事です。課長が亡くなったのは8月でした。夏、走るのなら早朝、というのは理に叶っていますが、8月ともなれば7時になると、もうかなり気温は上がっています。そして、朝、起きた直後の人間の身体は、たいていは脱水状態になっています。寝ている間に汗をかいているからです。もし、早朝にランニングを行なうなら、その前に水分補給を行なう事が必要です。課長の死因は、急性虚血性心疾患。腹囲100cmを越えるという体型ならば、血圧も血糖値もかなり高かったと思われます。それに脱水状態が加わり、血液はかなりドロドロの状態だったと想像できます。そんな状態で、心拍数を上げたら、どういうことになるか。
ダイエットのためにランニングを行なうのであれば、心拍数を「180マイナス自分の年齢」以上上がらないペースで行なうのが鉄則です。メタボ体型の、運動歴のない中高年の方なら、速いペースのウォーキングくらいのスピードでも、すぐに心拍数が上がるはずです。でも、それで十分なのです。
3ヶ月というのは、短すぎます。適度の運動や食生活の改善によって、身体の器官や組織の細胞が全て入れ替わるのに最低3ヶ月はかかるといいます。言わば、身体が変化していく土台の基礎がようやく固まった段階に過ぎません。
「まじめな性格だった」という亡くなった課長が、どのような気持ちでこのプランに参加していたのかは推測するしかありません。自分の体型が変っていくことに嬉々としていたのか、市長からの「業務命令」と思ってしぶしぶ行なっていたのか、1ヶ月過ぎて、結果が出ないことに焦って、ジョギングで体重を落とそうとしたのか、現地に出かけ、関係者の重たい口を開かせて証言を集めることは僕には出来ません。ただ、残された遺族の方の心中を察すると胸が締め付けられます。この町は、有名な駅伝大会のコースにもなっています。遺族の方はランナーたちをとのような気持ちで見ているのでしょうか。
※参考文献
「ゆっくり走れば速くなる」佐々木功
ランナーズ・ブックス
もともと、自身も腹囲90cmを越えるメタボ体型だったこの町の市長が、市民に肥満予防の普及、啓発を行なうために、市の幹部職員ら7人で、3ヶ月で、腹囲85cm以下を目指して減量に取り組むという企画だったといいます。名付けて
「七人のメタボ侍 内臓脂肪を斬る!」
健康課の職員が立てたプランをそれぞれが実施し、体脂肪値や体重、腹囲の測定値をホームページで公表もしていたそうです。
亡くなったのは当時47歳の健康福祉部の課長で、腹囲は100cmを越えていたといいます。立ち上げの際は「出陣式」まで行なったそうですが、それから1ヶ月過ぎた休日の朝、ジョギングに出かけた2時間後に路上にて遺体で発見されたのでした。
彼の上司である健康福祉部の部長は、部下の死を、「痛恨の極み」としたものの、
「死亡と減量の因果関係はなく、減量のために運動すること自体は健康に良い行為」
と述べたのだそうです。その後もプランは「六人の侍」として、継続され、予定通り3ヶ月後に、結果が発表されました。それによると市長は5.6kgの減量に成功し、腹囲も84.5cmに減らすことが出来たのだそうです。
本稿において、事件の舞台となった市や市長らの実名を伏せているのは、市長の責任を追及することが本稿の目的ではないので、あくまでも当時のメディアで報道された記事からの引用に留めました。
なお、I市のホームページを検索したところ、2年後の市長選挙で当時の市長は落選していて、同様の企画は現在は実施されていないようでした。
僕もダイエットを目的にランニングを始めた者ですから、ダイエットについては、自分なりに研究していました。3ヶ月で5kg以上の体重減が妥当か無茶かの判断は出来ませんが、少なくとも、ダイエットには法則があります。
「短期間で増えた体脂肪は、短期間で落とせるが、長い時間をかけて身体にこびりついた体脂肪は、長い時間をかけないと落とせない。」
ものなのです。
そして、ランニングを続けてきて思い知ったことは、
「ダイエットのために、ランニングをするのは無理がある。ランニングをするために、ダイエットを行なうべきなのだ。」
という事です。課長が亡くなったのは8月でした。夏、走るのなら早朝、というのは理に叶っていますが、8月ともなれば7時になると、もうかなり気温は上がっています。そして、朝、起きた直後の人間の身体は、たいていは脱水状態になっています。寝ている間に汗をかいているからです。もし、早朝にランニングを行なうなら、その前に水分補給を行なう事が必要です。課長の死因は、急性虚血性心疾患。腹囲100cmを越えるという体型ならば、血圧も血糖値もかなり高かったと思われます。それに脱水状態が加わり、血液はかなりドロドロの状態だったと想像できます。そんな状態で、心拍数を上げたら、どういうことになるか。
ダイエットのためにランニングを行なうのであれば、心拍数を「180マイナス自分の年齢」以上上がらないペースで行なうのが鉄則です。メタボ体型の、運動歴のない中高年の方なら、速いペースのウォーキングくらいのスピードでも、すぐに心拍数が上がるはずです。でも、それで十分なのです。
3ヶ月というのは、短すぎます。適度の運動や食生活の改善によって、身体の器官や組織の細胞が全て入れ替わるのに最低3ヶ月はかかるといいます。言わば、身体が変化していく土台の基礎がようやく固まった段階に過ぎません。
「まじめな性格だった」という亡くなった課長が、どのような気持ちでこのプランに参加していたのかは推測するしかありません。自分の体型が変っていくことに嬉々としていたのか、市長からの「業務命令」と思ってしぶしぶ行なっていたのか、1ヶ月過ぎて、結果が出ないことに焦って、ジョギングで体重を落とそうとしたのか、現地に出かけ、関係者の重たい口を開かせて証言を集めることは僕には出来ません。ただ、残された遺族の方の心中を察すると胸が締め付けられます。この町は、有名な駅伝大会のコースにもなっています。遺族の方はランナーたちをとのような気持ちで見ているのでしょうか。
※参考文献
「ゆっくり走れば速くなる」佐々木功
ランナーズ・ブックス
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