KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2008名古屋国際女子マラソン雑感vol.3

2008年03月29日 | マラソン観戦記
8年前に高橋尚子がシドニー五輪代表を決めたレースで、かつてのチームメイトが五輪代表を決める、というのも一つのドラマだが、全く別の新たなドラマの「主役」にのし上がってきたのが中村友梨香だった。堀江知佳ら後続との差はあっと言う間に広がった。

天満屋入社4年目の21歳。入社して4ヶ月目に開催されたアテネ五輪では、高校の先輩でもある坂本直子の応援にアテネのコースの沿道にいた。長いブランクからようやく立ち直った坂本を抑えてトップを独走する中村。またしても、事前の「展望」でノーマークのランナーの快挙が見られるか?またしても、僕の「予想ベタ」が露呈した。いや、中村の名前を知らなかったわけではない。昨年の実業団駅伝での快走から、彼女を優勝候補と推す記事も目にしていた。もしかしたら、坂本よりも上の順位で来るかもとはおぼろげに思っていた。

しかし、今回のメンバーで初マラソンのランナーの優勝を予想するのは、抵抗があった。と言うよりも、僕が別のランナーをイチオシしていたからだ。

以前から
「セカンドウインドACから五輪代表が出るかも。」
と述べてきていた。実績では嶋原清子が揺るぎ無いものを持っていたが、優勝を狙う、という部分では、中村を懸命に追っていた2位の加納由理が有力と見ていた。もし、彼女が代表となれば、日本の女子長距離界の流れも変化する。

全日本大学女子駅伝優勝校のメンバーとして、初めてのマラソン五輪代表となっていたからだ。

2004年以降、ラスト5km過ぎての逆転ドラマが毎年生まれていた名古屋のロード。中村と後続の差は縮まらない。加納もチームメイトである尾崎朱美の妹で初マラソンの尾崎好美に抜かれた。

トップに立ってからのペースはぐんぐん上がり、ゴールタイムも2時間25分台に迫る勢いだ。失速の気配は微塵もない。

瑞穂陸上競技場のスタジアムは、昨夏の世界選手権でも見られなかったほどの大観衆で埋め尽くされていた。ゴールタイムは2時間25分50秒。後半を自らのハーフマラソンのベストと1分遅れのペースまで上げた!

2位は尾崎。新星不在が嘆かれていた女子マラソンの五輪選考レースで初マラソンのランナーがワン・ツーフィニッシュ、という願ってもない結果となった。3位が加納。4位はゴール直前に堀江をかわした原裕美子。6位に大島めぐみ。7位にも初マラソンの平田裕美。8位に西尾麻耶。そして9位の弘山晴美までが2時間30分を切ってきた。中村のインタビューの最中、坂本が10位で戻ってきた。

9km過ぎてチャンネルを替えてしまった、という人も少なからずいるように、名古屋グランパスの試合以上にスタジアムを埋め尽くした人々も、「ランナーズ」誌によると、
「Qちゃんのゴールと同時に帰路につく人が多く、競技場が一気に閑散としてしまった」
のだそうである。

それでも、普段はマラソンなど見ることはなかった人の中にも、原の飛び出しから始まった中盤の先頭の入れ替わり、その果ての中村の独走に我を忘れた、という人がいるかもしれない。

「マラソン、というのはこんなに面白い競技だったのか。」
と思った方が少数でもいらっしゃれば、うれしい。実際、女子マラソンでこのような展開のレースというのはめったに見られるものではない。

それにしても、「終わってみれば天満屋」と言うべき結果だった。これで3大会連続で五輪代表を送り出した。世界選手権にも3人のランナーを輩出している。シドニー五輪の直後、インターネットを始めてまもない頃に、
「武富監督こそ、名将。」
と某掲示板に書きこんだ自分の目も、けっこうなものだななどと自惚れてしまう。あとはメダリストを生み出すだけだ。

今回は補欠となった森本友に、坂本直子もまだこれで燃え尽きたわけではないだろうし、今シーズンのマラソン挑戦は見送りとなった、寺田惠(彼女も、坂本、中村と同じ県立西宮高校出身)もいる。ロンドン五輪マラソン代表全員天満屋、も夢ではなさそうだ。それはあまりにも気が早い話だが、先の大阪に続いて、今回の大阪でようやく、世代交代の進まない日本の女子マラソンも新しい顔が出てきた。取り合えず、来年のベルリンの世界選手権のメンバーは揃えられそうだ。

最後に。いいかげんに、小出義雄氏に高橋のことをたずねるのは止めてはどうか。今回の堀江のように、今の彼の下には高校時代から、インターハイや都大路で活躍したランナーをはじめ、将来を嘱望されているランナーがいくらでもいる。国立大学に進学することを早くから表明していたスーパー高校生ランナーがいつのまにかメンバーに加わる、といった形で「マジック」も健在?だ。それはともかく、ノムさんにいまだにスワローズやタイガースについての質問をする野球記者はいないというのに。

(了)



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