社保庁の杜撰な年金処理は呆れたが、職員の横領・着服もゾロゾロ。
半数近くが刑事告発せず 社保庁職員の年金横領 産経(2007/09/06 00:50)
社会保険庁や自治体職員が3億4300万円もの年金を横領・着服していた問題で、社保庁職員による事件50件のうち15件は、警察に相談もせず社保庁の“自主判断”で刑事告発を見送っていたことが分かった。横領した職員を依願退職扱いにするなど身内に甘い処分をしようとしたケースもあった。舛添要一厚生労働相は6日、増田寛也総務相らに全容解明への協力を要請するが、横領が年金記録紛失の一因になっているとの指摘もあり、調査が手間取れば新たな年金不信を招きかねない。
悪質な手口
今回明らかになった99件の横領・着服には、悪質な手口が少なくない。社保庁職員による横領で最も額が大きかった愛知県の半田社会保険事務所(約4444万円)では、年金給付係長がオンライン端末を不正操作し、自分の親などを架空の年金受給者に仕立て上げ、厚生年金を不正に受け取っていた。
さらに複雑な手口だったのは蒲田社会保険事務所(東京都)のケース。年金専門官が平成6年8月から4年1カ月にわたり、加入者から預かった国民年金保険料約1266万円を着服。さらに、未払い期間が長く年金受給資格を満たしていない複数のオンライン記録を書き換えて計約2645万円を不正受給させ、これらの“受給者”から謝礼金の形で「分け前」を受け取っていた。年金専門官は事件発覚後に自殺し、被害額は弁済されていない。
自治体職員の横領で最も大きかった昭和56年の岡山県寄島町(現浅口市)のケースでは町民課主事が、地元の婦人会が徴収した国民年金保険料の一部約6245万円を着服。主事は領収書の控えを破棄し、上司には手書きのメモで徴収金額を報告する隠蔽(いんぺい)工作をしていた。
積極的に公表せず
社保庁はこうした横領・着服事件を長年、積極的に公表してこなかった。今回明らかになった社保庁職員の横領50件のうち18件は未公表。「公表」扱いとされた32件のうち8件も報道によって明らかになったケースで、社保庁が自主的に公表したものではない。
社保庁が原則公表するようになったのは平成10年度から。同年に城東社会保険事務所(大阪府)が国民年金保険料の横領などをした職員を依願退職させるなど、内々に処理していたことが発覚したためだ。甘い対応に批判が集まり、平成11年2月に宮下創平厚相(当時)が「今後は懲戒処分にしたものはきちんと公表し、刑事告発や会計検査院への報告も適切に対応したい」と表明したことがきっかけだった。
刑事告発も消極的
さらに、社保庁職員による横領50件のうち23件は刑事告発しておらず、15件は警察当局に相談もせずに社保庁の判断で見送っていた。社保庁は15件について「当時『社保庁内部で処分したから』『損害を弁済している』といった判断があった」と説明している。
自治体でも、栃木県藤原町(現日光市)の住民課年金係主査が昭和59~62年度に約5736万円を着服していたケースでは、保険料の免除申請書を偽造し、加入者に督促状が届かないよう工作する悪質な手口にもかかわらず、「懲戒免職処分を受け、全額返済されている」との判断で、刑事告発が見送られた。
舛添厚労相は、刑事告発がされていないケースについて「横領をした連中は、きちんと牢屋に入ってもらいますよというのは当たり前だ」として、総務相に首長が率先して刑事告発するよう申し入れる考えだ。ただ、業務上横領罪の時効は7年で、「新たに刑事告発できるケースは限定的」(総務省幹部)という。
刑事告発も半分以下、時効も7年でそれも限定的とは情けない。年金不信も極まってきている。いまさら調査に手間取ろうが徹底的にやってから解体すればいい。桝添さんの荒療治に期待したい。