いつものように写真撮影を済ませる。
しかし横断歩道上に落ちている片手袋なので、信号や通行人を気にして上手く撮れなかった。
でもまあ、一応写真は撮れたので、目的地に向かって再び歩き出した。
用事を済ませ家に帰ろうと思ったのだが、やはり先程の写真の出来が気になる。もう一度戻って撮り直す事にする。
戻ってみると、先程と若干場所はずれていたが、片手袋はまだあった。
「よし、撮ろう」
と、携帯電話のカメラを構えると…。
路上で暮らしていらっしゃるご老人が、つかつかと片手袋に近づいていく。そして、あっという間に拾って行ってしまった。
しばし途方に暮れる僕。せっかく撮りに戻ってきたのに…。
だが、冷静に考えてみると、片手袋道を歩み始めて何年目かで初めて片手袋が拾われる瞬間に遭遇したのである。この道を歩むものとして、一度は見ておきたい光景ではないか。
しかも、あの老人はこの寒い冬の間、きっとあの片手袋を大事に使うに違いない。片手袋も喜んでいるだろう。
そう思うと、今度は逆に嬉しい気分になったのであった。
という訳で、今日の一枚は最初に撮ったなんだかボヤけた写真です。