赤瀬川原平さんがお亡くなりになられました。ここ何年か、体調があまり良くないらしいという噂を聞いていたので心配しておりました。残念でなりません。
片手袋は幼少の頃から気になっていたのですが、赤瀬川さんの著作に出会い、遡って考現学などを知り、「そう言えば俺が昔から好きだった片手袋。あれも路上観察、考現学的アプローチで研究できるんじゃないか?」と思い、約十年前から本格的に始動したのです。
赤瀬川さんの何が凄かったか?その活動、影響は多岐に渡っている為、簡単には説明出来ません。しかしいつだって赤瀬川さんの「視点・視線」は我々にフレッシュな驚きを与えてくれました。
芸術、お金、資本主義、路上、老い…。我々が当たり前のように見て、触れている筈のものでも、赤瀬川さんの「視点・視線」を通過すると全く違う側面が浮き上がってくる。その「視点・視線」を共有する、という事は「世界の見方」が変わるという事ですから、「赤瀬川さんに人生を変えられた」と語る人が多いのは当然です。
僕は赤瀬川さんに関して後悔していることが二つあります。
一つは、大学の卒業論文。僕は『赤瀬川原平論~路上への視点~』というテーマで書いたのですが、たとえ駄目でも本人に取材の申し込みをしておけば良かった、という事。何しろ僕の大学は赤瀬川さんのニラハウスの目と鼻の先にあったのです。若くてそこまで踏み込めなかった、いや、若いからこそ無鉄砲にトライしてみるべきだった。とても後悔してます。
二つ目は、片手袋活動。当ブログなど緩やかに綴っていましたが、基本的には一生個人的な趣味でも良い、と思ってました。でも数年前に近しい人が急逝してしまった時に、「生きているうちに出来る事はやっておくべきだな」と思い、片手袋研究を何か形にしたい、と考えました。
そしてある程度研究成果もまとまってきた頃、冒頭にも書いた赤瀬川さんの体調の事を知ったのです。「片手袋研究を本にまとめて、是非見てもらいたい」。僕は具体的に出版が出来ないか動いてみました。しかし、やはり僕自身に何か実績がある訳でもなく、中々上手くいきません。「それなら何か実績となるようなことをやってみよう!」。実は神戸ビエンナーレに応募したきっかけはそんな所にあったのです。
幸い神戸ビエンナーレで展示が出来る事になり、その流れで以前では考えられないようなお話も幾つか頂きました。「そろそろ出版に向けてもう一度動いてみよう」。そんな矢先に赤瀬川さんは逝ってしまいました。
片手袋に限らず、世界の見方・面白がり方・表現の仕方、全てにおいて影響を与えてくれた人です。本当に本当に悲しいですが、赤瀬川さんがいなくなっても「視点・視線」が消える事はありません。この「視点・視線」でこれからも片手袋を、世界を楽しんでいこうと思います。
どれだけ思いが深くても、言葉にした瞬間にその思いは軽くなっていくような気がするのですが…。赤瀬川さん、本当に本当にありがとうございました。
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・『全面自供!』:自伝的対談集。多岐に渡る赤瀬川さんの活動を一冊で把握できる本。
・『赤瀬川原平の芸術原論1960年代から現在まで』:名古屋以来、久しぶりの大型回顧展。すごく楽しみにしていたのですが、まさかこんなタイミングになるとは…。千葉市美術館にて。必見です。
・『尾辻克彦×赤瀬川原平-文学と美術の多面体-』:小説家としての顔、尾辻克彦も超重要。小説はどれもすごく面白いですよ。町田で尾辻克彦に迫る企画展開催中。
“ディスポーザル類”って大抵の場合、
こんな感じでクシャクシャになっている事が多いです。まあ、素材が極薄なんだから当たり前ですけど。なのでたまに今日出会った…
こういう(指こそへこんでいるものの)形がしっかりしたディスポーザル類に出会うと、妙に嬉しかったりします。
さて、東京は今週に入って一気に寒くなってきました。今日なんか早くもマフラー巻いてる人が結構いました。例年より片手袋の旬が早く来るかもしれないので、皆さん、気を抜かないで下さいよ!
長年の片手袋研究の成果として、僕は片手袋の分類法を確立出来た。
しかし毎年新種の片手袋を発見するので、研究は一生継続していかなくてはならない。その意味でこの図は未完成だし、十分に実例が集まったものに関しては追加していくつもりである。
最近はmixiの片手袋コミュニティにて精力的に研究に参加して下さる方が増え、今まで僕が見た事もなかったような片手袋を投稿してくれている。北海道のみかりんさんが発見した、『雪どけこんにちは系』に関しては以前ご報告させて頂いた。
今回は、関東在住のうみがめさんが発見した新種について。
うみがめさんは以前田畑の多い地域に住んでいらして、田畑の周辺に片手袋が非常に多い事に気付いた。とにかくうみがめさんの投稿数は圧倒的で、新種と認定して分類図に加えるのに十分な数が集まった。我々はこの新種を『田んぼ系』と名付ける事にした。
農作業中に落ちるであろう事から、当然軍手類やゴム手袋類が多くなるが、
また、基本的には放置型であるが、
このように田んぼの中や脇に立っている棒に挿さっている事もある。これらに関しては、“介入型棒系”に分類すべきなのか、何か農作業特有の役割があるのか(つまり“放置型作業系”)、未だに解明されていない。
いずれにせよ、田畑周辺に片手袋が多い事は確実である。
みかりんさんからご報告頂いた雪国特有の片手袋。そしてうみがめさんの田んぼ。僕一人で研究を続けていたのでは、絶対に気付く事が無かったであろう。もっともっと片手袋研究が多くの人に届けば、日本各地のご当地片手袋が発見されるのだろう。やはり研究を深化させると同時に、広めていく努力も続けていかなくては。
最新の片手袋事情を反映した片手袋分類図も、いずれ発表したいと思っています。
※今日の記事の写真は全て、うみがめさんより投稿して頂いたものです。