かたてブログ

片手袋研究家、石井公二による研究活動報告。

『フラッシュバック・メモリーズ』

2018-02-28 22:38:18 | 写真

四千枚以上の片手袋写真を撮ってきたが、当然全ての写真を覚えている訳ではない…、と思っていたが、たまに写真を撮っていて「ハッ!」となる瞬間がある。

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2018.2.20撮影

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2006.2.6撮影

やはり12年前(しかも同じ二月)に似たような片手袋を撮っていた。頭のどこかに四千枚全ての記憶がインプットされているのかもしれない。

もうちょっと有用な事に機能を使えよ、俺の脳…。


『最近読んだ本から』

2018-02-22 23:42:08 | 番外

片手袋研究のヒントになるようなものって、思わぬところにあるものです。今日は最近読んだ本の中から、片手袋について考える上で非常に大きなヒントになった本を二冊ご紹介致します。

①『観察の練習』菅俊一

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こちらは手のひらサイズの可愛い本ですが、かなり直接的に片手袋研究と通じる本でした。

まず著者の菅俊一さんが撮影した日常生活の何気ない一コマが掲載されています。写真をじっくり眺めてからページをめくると、今度は菅さんがその風景の中に見出した小さな違和感が綴られています。それが60回ほど繰り返される本当にシンプルな構成。

でも読み終わって思ったのは、「幾つ答えを知っているかより、幾つの疑問を抱けるかが重要なのではないか?」という事。

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例えばこの片手袋がある風景に、幾つの疑問を感じることが出来るか?片手袋研究を十数年続けてきて、結局当初より分からない事は多くなってしまったのですが、疑問の多さはそのまま世界へアプローチする道筋の多さに繋がるのかもしれません。

「観察」という言葉は時に、観察者と観察の対象者との間に壁が出来るような冷たい響きを持ってしまいますが、菅さんの観察は疑問を持った自分自身にも目が向けられているような、そんな印象を抱く本でした。

②『対話する医療』孫大輔

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こちらは地元でご縁のある、東京大学大学院医学系研究科講師の孫大輔先生によるご著書です。

先生は僕の地元で屋台でコーヒーを配ったり、映画会や落語会を開催したりしているのですが、それらすべてが医療的課題に取り組む為にやられている、とお伺いしておりました。しかしその真意をきちんと理解していなかったので、新しく発売されたこちらのご著書を手に取ってみたのです。

そしたらなんと、医療や社会に対する問題提起は勿論、片手袋研究にめちゃくちゃ通じる話が満載なので驚きました!

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例えば僕はこのような片手袋が発生するまでにどんな物語があったのか、論理的(片手袋分類図やこれまでに積み重ねた知見)・感覚的(物語を妄想・想像してみる)両面から追及してきた訳です。しかし片手袋が発生したその現場を目撃したわけではないので、どれだけ精度を高めていっても、最終的には不確かな部分が残されます。

こうした患者の抱える「不確かさ」をも考慮するような医療者のアプローチとして、いくつかのモデルが提唱されています。(中略)その基本をなすのは、患者の「物語(ナラティブ)」に耳を傾け、患者が病気に関してどのような「不確かさ」を抱えているのかを理解する事でしょう。(P.206)

たとえばこの部分の「患者」を「片手袋」に変えてみれば、殆ど僕が取り組んできた問題意識と一致してしまうのです。

なので本著が「不確実性」に耐える方法として取り上げる様々な「対話」の事例は、医療だけでなくそのまま片手袋研究にも(そして社会問題全般にも)大変参考になるものでした。

これから殆どの人が経験する問題について書かれていながら、映画や哲学を例に読みやすくまとめられておりますので、皆様にお勧めします。

当たり前の話なんですけど、片手袋を研究していく上で参考になる先行の片手袋研究などなかったので、映画や本やアートなど、様々な分野の考え方を取り入れながら研究を進めてきました。

それでも今回みたいに、医療問題からヒントを貰えるなんてやはり驚きでした。これからもジャンルを問わず、様々な表現、考え、に触れていこうと思います。


トークライブ『片手袋のうら・おもて』リポート

2018-02-17 21:50:00 | お知らせ

今週月曜日(2/12)、トークライブ『片手袋のうら・おもて』を無事開催することが出来ました。

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おかげさまで沢山な方にお越し頂き、楽しいイベントになったと思います。勿論、僕だけの力ではこんなに大勢の方々に集まって頂けるはずもなく、主催と対談相手を務めて下さった東京別視点ガイドの松澤さん(とスタッフの皆様)には感謝しております。

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せっかくなので、使用したスライドのほんの一部をご紹介して、当日話した事を軽くまとめてみます。

僕は片手袋研究を十数年続けてきた結果、もう何が何だか分からない状態になってしまっておりまして…。最近は初めて片手袋研究について聞く人にも、いきなり「片手袋って何なんですかね?僕は何でこんな事をやっているんですかね?」なんていう話をしてしまう始末。

「これではいかん!」という事で、今回のトークイベントでは第一部を「おもて面」として、まずは僕がこれまで何をやってきたのか?を紹介する事から開始。

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※でも上のような経歴は自分では嘘くさく感じられ…

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※結局「これが本当の年表だ!」とか言い出してしまいました…

そして次に、片手袋と聞いて皆さんが真っ先に疑問に思うであろう事…

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についてお答えしました。

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でもこれも結局、あらゆる可能性を丁寧に考えていくあまり…

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↑こんな全然答えになっていない結論に辿り着き、

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結局、いつも僕が口を酸っぱくして言い続けてるこの言葉で終わってしまいました。

このように第一部から既に暗雲が立ち込めていましたが、本当に問題なのは第二部『うら面』。僕自身が未だ言語化出来ていない抽象的な問題に踏み込み、答えがないまま皆さんにぶつけてみたのです!

まずは僕が良く言う「片手袋とは呪いである」とはどういう感覚なのかを、これまでに体験した不思議な現象の数々を見てもらいながら解説。

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(余談ですが、当日の会場になったエディトリー神保町の入り口に当然のように片手袋があったのには驚きました)

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さらに元々「“ない”という景色を見に行くことが好きだった」という話から、

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「“片手袋がある”というのは“片手袋がない”期間があるからこそ発生するのではないか?」という問題意識が芽生えてきたことを語り、

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遂にはかつて片手袋と出会った場所を再訪し、片手袋がなくなった景色を撮り始め、

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今では片手袋と全く関係のない景色にも片手袋を感じる事がある、という話をしたのです。

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もはや片手袋すらない場所も撮り始めてるのですから、まあもう完全にノイローゼな訳です。ライブ前は「本当にこんな話して大丈夫かな?」と不安になっていましたが、丁寧に段階を踏んで説明した結果、何となく皆さんにも通じたような気がしました。

事実ライブ後の感想はむしろ第二部についての方が多かった気がします。

トークライブ「片手袋のうら・おもて」の感想ツイートまとめ

このまとめは当日の話を本当に簡略化したもので、実際にはもっと大量のスライドを使用し二時間みっちり語りつくしました(参加して下さった皆様は体調が悪くなっていないか心配です)。

自分のやってきたことを語るという事は、自分がやってきた事を客観的に整理する良い機会でもあるんですね。だからこれからも、チャンスや場があれば積極的に片手袋について語っていきますんで、「体調悪くなっても良いから、聞いてみたいぜ!」という方がいらっしゃったら、お声をおかけ下さい。

ライブに参加して下さった全ての皆様に、御礼申し上げます。


『また一つ背負い込んでしまった…』

2018-02-13 22:37:18 | 写真

昨日のトークイベント『片手袋のうら・おもて』、沢山のお運び有難うございました。いずれちゃんと当日のご報告を書こうと思いますが、何とか無事に終えることが出来たと思います。

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イベントの最後にも言ったんですが、色々大変な片手袋研究なのにまた一つ新たな困難を背負ってしまいまして…。

十数年間、片手袋の撮影は一貫して携帯電話のカメラで行ってきました。理由として、いつどこで出会うか分からない片手袋の撮影にはそれが便利だったのと、「“写真としてのクオリティ”を追求していってしまうと、その沼から抜け出すことが出来なくなってしまうのではないか?」という恐れからでした。

勿論作品として片手袋写真を発表する事もあるのですが、昔のガラケーからiphoneに変化していく中でカメラの性能も飛躍的に向上しており、不便さを感じる事も殆どなかったのです。

しかし唯一不満を感じるのが夜間撮影でして。

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流石にiphoneでは無理があるのか、こんな感じの写真が沢山あるのです。作品としては当然使えないレベルなのも問題ですが、研究としても夜の町に佇む片手袋の様子が記録できていないのが残念過ぎて。

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仕方がないので撮影に納得できなかった場合は、翌日の早朝に再撮影しに行く事がしょっちゅうありました。でもそれにしても、夜の感じは捉えられていない訳で。

そんなこんなで迎えた今月。気付いたら買ってましたよ。ミラーレス一眼を。片手袋研究にまつわるあらゆる事が後戻りできない程深い部分に突き進んでいってしまってますが、13年目にして遂に撮影の分野も追及が始まる事になりそうです。

で、先日東京別視点ガイドさんのオフィスを訪ねた帰り。人形町の交差点で初めてミラーレス一眼で撮影する機会が到来しました。

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で、その後。自分がごく自然にやった行動に自分でも驚きまして。

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ポケットからiphoneを取り出して、おさえの一枚を撮り出したんです。しかもこの行動、結局この後もずっと続いてるんです。どうやら自分の中で「片手袋を見つけたら“iphoneで”撮る」という事が定着化していたみたいで。ミラーレス一眼だけで済ませようとすると、強烈な罪悪感が芽生えてきちゃうんです。

なので、結局作業量が今までの二倍になっただけでした…。トークイベントで聞き役を務めてくれた東京別視点ガイドさんの松澤さんが、「なんか最終的に色々な手順が増えて、一つの片手袋に対して物凄く長い儀式みたいのをやるようになるんじゃないですか?」と呆れてました。あながち無い話じゃない、というのが怖いです。

とにかく、色んな業を引き連れて進んでいくしかありません。


『マツコの知らない世界』をご覧頂いた皆様へ

2018-02-06 22:10:00 | お知らせ

『マツコの知らない世界』をご覧頂いた皆様、有難うございました。そして、なんだか申し訳ありませんでした…。僕の極めて個人的な研究(という名の病)を、公共の電波、しかもあの人気番組で取り上げて頂くなんて、活動を本格始動させた13年前には想像すら出来ませんでした。

僕の悪い癖で、いつも「片手袋研究そのもの」と「片手袋研究に憑りつかれた自分自身」をごちゃ混ぜにして喋ってしまうんです。

例えば「片手袋の写真を撮る」というのは研究にとって必要な作業ですが、「片手袋を見つけたら“必ず”写真を撮る」というのは研究を逸脱し僕自身の心の問題になってきます。これを同一レベルで話してしまうので、いつも「で、結局何をやってる人なの?」となってしまうんですよね。番組をご覧頂いた皆様はどうでしたか?

半ば呆れながらもマツコさんは、「片手袋研究に限らず、この世の中の事なんてみんな無駄なんだよ。私がこうやってテレビに出て話している事だって。でもそんな無駄なものだって、いつか「あー、よくぞやっておいて下さいました!」って言ってくれる人が出てこないとも限らないんだよ」と仰って下さり。とても勇気付けられる言葉でした。

今回の番組はあくまで入門編的内容でしたが、来週2/12(月、祝)にトークイベント、「片手袋のうら・おもて」が開催されます。

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場所はEDITORY神保町 、時間は18時より。ご予約はこちらのページから出来ます。ネタとしてやってると思われてしまうのですが、本気(狂気)で13年続けてきた活動のかなり深い部分まで二時間みっちり掘り下げていきます。是非来てください!

あと取り合えず片手袋研究の概要はホームページ、

「片手袋大全」

にまとめてあります。また片手袋活動を続けていく心理的な辛さなどは、東京別視点ガイドさんにインタビューしてもらった記事、

「片手袋は呪い」なぜ道路に手袋が落ちているのか。その道30年、片手袋研究家に聞いてきた

にまとまっています。

僕は書籍などを出版した経験はないのですが、片手袋研究がひとまず理解できる無料小冊子、『片手袋研究入門』があります。東京千駄木の往来堂書店さんと、東京谷中のひるねこBOOKSさんに置かせてもらってます。

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ご近所の方、お近くに立ち寄られた方は是非お手に取ってみて下さい。あと東京で片手袋を熱心にとっている男を見かけたら、それ多分僕なんで、声をかけて下されば差し上げます。鶴瓶のチンコ人形スタイルです(分かりにくい例え)。

さて、せっかくこのような機会に恵まれたので、一度片手袋研究で取り組んでいるテーマを、「論理」「感覚」にきちんと分けて整理しておきます。ちょっと長くなりますが。

・論理サイド

①撮影:見つけた片手袋の状況や場所の記録として、写真を撮る。大事なのは片手袋そのものを撮ると同時に、片手袋が存在している町の雰囲気も撮る事。現在までに4000枚以上の片手袋を撮影。なお、見つけた片手袋には絶対に触らない(研究対象に意図的な変化を加えない為)。

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②考察:4000枚以上の写真、そして町で実際に片手袋と出会った体験をもとに、片手袋が生み出される原因や法則、時代や場所との関連性などを探っていく。

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※考察の集大成、片手袋分類図(頻繁に修正、改訂あり)

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※片手袋の形状なども分類している

③歴史の記録:実は片手袋に魅かれてしまったのは歴史上、僕だけではない。あらゆる創作物に登場する片手袋を探し出し記録して、『片手袋の文化史』を形成していく。また、トム・ハンクス以降急速に広がり始めた片手袋撮影の輪を、どこまで広がっていくのか(あるいはいつか収束してしまうのか)観察していく。

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※現在までに判明している、片手袋が登場する創作物一覧

④発信:執筆やメディア・イベント出演などを通じ、片手袋の魅力を伝えていく。

★『この世界の片手袋に』(東京別視点ガイドにて連載中)

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※片手袋を探しながらの七福神巡りツアー『片手袋GO』

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※本屋さんでのトークイベントの様子

・感覚サイド

①想像&妄想:片手袋を落とした人、片手袋を拾った人。一枚の片手袋の背後にある様々な物語を、ボーっと想像してみる。冷たく無機質に思われがちな都会でも、様々な人々の人生が交錯し、影響しあっている事に思いを馳せる。

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※ワークショップ形式で参加者が想像した物語を発表しあう事も。

②作品化:文章のように論理的に説明するのではなく、片手袋の持つ不思議な魅力を抽象的に作品として展開してみる。

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※神戸ビエンナーレ2013での展示

③自分自身の観察:自分が片手袋研究から逃れられなくなっていく過程をどこかで第三者的に観察していく事で、人間の心の動きや思想の変遷がどのように行われるのか考察していく。
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長々と書いてしまいましたが、こんな事を続けてきた訳です。この十三年、ひと時も心と頭が片手袋から解放されたことはありませんでした…。しかし、そこまで心を奪われる対象と出会えたことは、やはり幸せなんでしょうね。

まだまだ冬型の片手袋と頻繁に出会える時期です。町中で片手袋と出会ったら、心のどこかで「そういえば馬鹿な事やってるやつがいたな」と思い出して頂けるだけで幸いです。

番組をご覧頂き、わざわざ当ブログまでお越し頂いた皆様。本当に有難うございました!