『もいちどあなたにあいたいな』 新井素子 (新潮社)
SFを読み慣れていると、いきなり冒頭でネタばれしてしまっているわけで、澪湖がオロオロするさまはちょっといらいらする。
おかげで興味は木塚くんに移っていって、「間違えるな、菅原はビッチじゃないぞ」とか、「だめだ、それじゃ引かれる!」とか、応援しながら呼んでしまいましたよ。
お兄ちゃんの役立たずっぷりは、どこがヒーローだって感じだし、お母さんは気持ち悪い。なんかこう、ちょっとずれた感じが、ほのぼのとしていながら、薄ら寒さを感じてしまう。
それぞれにいろんな立場の人がいて、いろんなことを考えながら生きてるんだなと、今さらながら思うけど、これだけ視点が切り替わるのに、共感できる登場人物がいないというのが困る。いや、がんばれ木塚くんがいたか。
自分だけのヒーローに再び巡り逢うことだけを頼りに生きているだけというのは確かに悲しい話で、同情もするけれど、物語としてはもうちょっとなんかあってもいいような気がする。
そう思ってしまうのは『紫色のクオリア』なんて、暴走しすぎなものを読んだせいか。ただ、今回はタイムトラベルはしてなさそうなんで、自ら不幸に遭い続けるなんていう方法は駄目なのだな。
なんとなく、静かに少しずつ狂っていく様相が、奇妙な物語を越えたホラーな感覚に思えてしまう。そういえば、タイトルが微妙に似ている『ひとめあなたに…』も、ほのぼのとしていながら、どこか狂っている人たちを描いた作品だったと思い出す。
ぬい系も、よくよく考えると、ホラーだよな。だって、ぬいぐるみがいきないしゃべりだすんだぜ。
新井素子の“ほのぼのホラー”とでも名付けようか。
SFを読み慣れていると、いきなり冒頭でネタばれしてしまっているわけで、澪湖がオロオロするさまはちょっといらいらする。
おかげで興味は木塚くんに移っていって、「間違えるな、菅原はビッチじゃないぞ」とか、「だめだ、それじゃ引かれる!」とか、応援しながら呼んでしまいましたよ。
お兄ちゃんの役立たずっぷりは、どこがヒーローだって感じだし、お母さんは気持ち悪い。なんかこう、ちょっとずれた感じが、ほのぼのとしていながら、薄ら寒さを感じてしまう。
それぞれにいろんな立場の人がいて、いろんなことを考えながら生きてるんだなと、今さらながら思うけど、これだけ視点が切り替わるのに、共感できる登場人物がいないというのが困る。いや、がんばれ木塚くんがいたか。
自分だけのヒーローに再び巡り逢うことだけを頼りに生きているだけというのは確かに悲しい話で、同情もするけれど、物語としてはもうちょっとなんかあってもいいような気がする。
そう思ってしまうのは『紫色のクオリア』なんて、暴走しすぎなものを読んだせいか。ただ、今回はタイムトラベルはしてなさそうなんで、自ら不幸に遭い続けるなんていう方法は駄目なのだな。
なんとなく、静かに少しずつ狂っていく様相が、奇妙な物語を越えたホラーな感覚に思えてしまう。そういえば、タイトルが微妙に似ている『ひとめあなたに…』も、ほのぼのとしていながら、どこか狂っている人たちを描いた作品だったと思い出す。
ぬい系も、よくよく考えると、ホラーだよな。だって、ぬいぐるみがいきないしゃべりだすんだぜ。
新井素子の“ほのぼのホラー”とでも名付けようか。