神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[コンサ] 2013 J2 第25節 松本 vs 札幌(その3)

2013-07-24 23:17:25 | コンサ

試合は終わっても、終わらないのがバスツアー。この日の午前中は松本観光。

 

昨晩はそんなに飲んでいないせいか頭痛は残っていないものの、なんとなく頭が重たいので風邪薬を飲んでみる。でも、良く考えたら、熱中症だったんじゃないかと思われ。やっぱり、水分補給はビールだけじゃダメだな。

ホテルの朝食バイキングは特筆すべきでもないけれど、ビジネスホテルにしてはそれなりに充実していたので満足。二日酔いだと食べられなかったかもね。

 

ツアーバスは松本城へ。ここで自由字行動。

とりあえず、松本城の天守閣を目指す。

松本城は烏城とも呼ばれるように、壁も瓦も黒いので、この炎天下では内部はさぞや暑かろうと思ったが、意外に風が通って涼しい。これならエアコンもいらないかもと思うくらい。これが日本の神秘の建築技術か!

急な階段を上りきった先には、青い空と白い雲と緑の山脈がコントラストをなす良い眺めがあった。でも、登り切った満足感と狭い階段から抜けた解放感の方が大きかったかも。

天守閣から降りて、黒門から赤い埋の橋まで歩いたくらいで、そろそろ昼食を。ということで、博物館はスキップ。ちゃんとした観光には時間が足りぬ。

昼食は同行者の希望で山賊焼き。ただの「鳥から」だろと油断してたら、でかい。うまい。ビールが進む。そういえば、昨日の台湾料理やのから揚げも馬鹿みたいにデカかったな。あれが松本流なのか。残念ながら、ビールはアサヒだったので、レーベンブロイを選択。サッポロビール以外も地ビールと輸入ビールは許されるのが俺ルール(何それ)

今回は時間が無かったので、この程度で許してやろう。

 

バスは東京を目指してレッツゴー。

お土産として配られたコンサドーレ爪切りには「Made In Sapporo」の文字が。やっぱり関税もあるし、パスポートも必要だからな。これ、栓抜きにも使えるんじゃね、とか言いつつ、クラシックを飲みながらけだるい雰囲気へ。

しかし、復路は完全に渋滞につかまる。事故渋滞9km。結局、予定より1時間半遅れで新宿到着。みなさまお疲れ様でした。

 

一泊二日だと、楽しいことも残念なことも、日帰りバスツアーの2倍だった。現実復帰が困難なくらい素晴らしい体験をさせてもらいました。ありがとうございます。何より、勝っちゃったしね。

バスツアーを2台出すとか、バスガイドを付けるとか、札幌発着アウェイツアーもやるとか、いろいろプランや野望もあるようなので、ぜひこれからもよろしくお願いします。

あ、たまには関東発着のホームツアーとかやりませんか? 

 

 


[コンサ] 2013 J2 第25節 松本 vs 札幌(その2)

2013-07-24 23:06:16 | コンサ

2013 J2 第25節 松本山雅FC 2-4 コンサドーレ札幌 @松本平広域公園総合球技場(アルウィン)

 

観戦記の続き。

試合はビデオでも見直したのだけれど、あまりにも気持ちのいい試合なので、ビデオ見ながらでもビールを飲み過ぎて、またわけがわからなくなってしまった(笑)

そんなわけで、スタジアムでも、ビデオ視聴でも、一部記憶が曖昧なのだが……。

 

キックオフ序盤はボールの奪い合い。お互いシュートまで行けず。

札幌は三上にボールが収まるとチャンスが生まれる。非常にわかりやすい。そして、左SBの上原があいかわらず高い位置まで上がる。やはりこれはチームにとって大きな武器だ。

上里、宮澤の二人とも上がらないボランチは、今日はちゃんと前に出る。すくなくとも、上原と同じぐらいは上がっている。上里がボールを持つと、宮澤が下がって荒野が中に入ってくるのが面白すぎ。たぶん、きちんと打ち合わせしたわけではないと思うけれども、プレイスタイルの組み合わせが絶妙に噛みあっているのだろう。この3人はいいトリオになるんじゃないか。宮澤はボールを持ってワンタッチで捌いた後に下がってしまうのは改善された模様。ちゃんとパスアンドゴーが見られたので満足。

一点目は砂川からのコーナーキック。決めたのはチョソンジンじゃなくて上原。チョソンジン触ってないのに喜び過ぎw 現地では反対側だったので、誰が入れたのやらまったくわからず、みんなで「誰?誰?」と言っていた。

前半は札幌優位で試合を進めることができた。その原動力はやっぱり三上だと思う。やっと札幌式のワントップをこなせる選手が生まれたかも。

 

しかし、後半開始早々に失点。オウンゴールは宮澤の後頭部。これも現地では反対側で見えてなかったので、何が起こったのかさっぱり。そんなもやもやとした感じの失点で、嫌な雰囲気が流れ始める。

ところが、この試合はこれで終わらなかった。なんとここからが本当の札幌の攻勢開始。

2点目はチョソンジンのゴール。再びニア。チョソンジンが動き出したときに、ディフェンスがしっかりついてこなかったのを見て上里がチョソンジンに合わせた感じ。あれは反町の指示ミスなんじゃないか。チョソンジンもフェイントで動き出したら誰もついてこなっかったので、戸惑いながらそのままいっちゃった感じ。

その後、砂川に替えて岡本を投入。頭部を打った上原が松本と交代。このあたりから、前がかりになった松本へ、札幌の効果的なカウンターが何度も襲い掛かる。

3点目は松本から狙い澄ましたクロスを内村がヘッド。後ろに三上もいたので完璧な崩し。というか、松本がフリーすぎ。

立て続けに4点目は三上。福岡戦では何度もラストパスをもらいながら決めきれなかったので、これはうれしい。

4点取った直後は松本サポもちょっと静かになったけど、すぐに山雅の歌を歌い始めた。サポの折れない心が選手を奮い立たせるのだろう。

ここで内村に替えてフェホが登場。三上に対しての交代ではないことから、財前監督の考え方が見えるかも。

フェホは高さに強い選手というよりは、長い脚を生かしたスピード系のようだった。どちらかというとキリノ系。これだと、今の札幌では使いずらいかも。

そして失点。まぁ、あれは仕方あるまい。ゴール前にDFが上がってきてフリーだった。

試合終了。松本 2-4 札幌。久し振りのアウェイ勝利。しかも、4得点は素晴らしい。

オウンゴールもミスというよりは不運なバウンドだったし、杉山のキャッチミスも失点はに結びつかなかったし、終了間際の1点が余計だったものの、守備の大きな破綻は無かった。

1-1に追いつかれたときに、そのまま失速するかと思って心配したが、そんなことはまったくなかった。逆に前がかりとなった松本の裏を狙うことができて、得点を重ねる結果となった。

その立役者は、やはり三上だろう。こんなにフィジカルの強い選手だったかと見違えるほど身体を張ってボールをキープすることができている。そこから、内村や岡本にボールが出れば、あとは相手ゴールまで一直線。これが内村をトップにした場合だと、逆に裏に抜ける選手がいなくなってしまう。

三上は今の札幌の選手の中で、もっともワントップに適した選手じゃないかと思う。怪我があったとはいえ、どうして三上がこれまで半干され状態だったのか理解できない。しかし、その状況でも腐らずにトレーニングを続けた成果がこうして出ているのだろう。風貌に似あわず、まだ3年目の選手だけれど、この姿勢は年上の選手にも見習って欲しい。そういえば、三上もリハビリを続けたゴン中山の姿を見習ったのかもしれない。

スタジアムから撤収するときにはスタジアムの向こうから花火が。試合と関係の無い花火だったかもしれないが、札幌の大勝を祝うかのような演出に酔った。

……しかし、このころから残念なことに頭が痛くなってきたのであった。

サポーターバスは渋滞につかまりながらも、一路ホテルへ。チェックインした後は一休みする間も無く、徒歩で祝勝会場の台湾料理屋へ。この時間ですでに21:30。大丈夫なのかと思いきや、このお店は24:00までだった。

本来はキリンビール(ここでもか!)しか置いていないお店なのだが、交渉によって黒ラベル瓶を100本注文済み。配られたキリンジョッキになみなみと注がれるサッポロビール。

全員そろわないうちに、フライングが相次ぎ、ついにそのまま乾杯。

バスツアー組、自力参加組、札幌組、関西組の合同祝勝会だったが、なぜか関西組の到着が遅れる。なんと、道に迷って反対側へ直進。引率のインチョーさんが青くなってタクシーで引き返してきたという大失態。そんなこともあったけれど、総勢40人弱での大宴会開始。

酔っ払いどもは、店に偶然いた松本サポを煽り始める。お前らもサッポロビールを飲めとばかりに「ビールはsapporo」コール。遂に松本サポも巻き込んで、コールバトル開始。

札幌サポが山雅の歌を歌い、岩沼のチャント山雅版と札幌版を歌いあい、再び「ビールはsapporo」コール。

ビール100本は飲みつくさないと帰れないらしいので、強制的にジョッキに注がれる。あれだけ酷くても、いろいろ大惨事にならないのは飲み慣れてるせいですかね。

おつきあいしていただいた松本サポは本当にいい人たちだった。お騒がせしてすみません。

最後は「好きです札幌」を店内で歌うという大暴挙に。机もジョッキも壊れなくてよかったよ。本当にお騒がせしました。

そして、この宴会の間、頭痛で苦しんでいたのは俺様です。ずーっと楽しみにしていたのに、たぶんビール瓶1本分も飲めませんでした。100本消化に貢献できなくて申し訳ない。本当に、次はリベンジしたい。リベンジするのだ。リベンジしなければならないのだ!

 

 


[コンサ] 2013 J2 第25節 松本 vs 札幌(その1)

2013-07-24 22:37:37 | コンサ

2013 J2 第25節 松本山雅FC 2-4 コンサドーレ札幌 @松本平広域公園総合球技場(アルウィン)


コンサドーレ札幌関東地区後援会主催の一泊二日“大人の修学旅行”松本戦バスツアーで松本まで行ってきた。

今回は初の一泊ツアー参加で一日中ビール漬けのつもりだったのだけれど、肝心の宴会では頭痛でダウンしてしまい、残念だった。次は体調万全でリベンジするぞ。


新宿発アルウィン行のバスは、いつもと違いサロン席仕様じゃなかった。それを見たサロン席住人から大ブーイング。そこで、運転手さんが戸惑いながらもサロン席仕様に椅子を回転。あれって、ちゃんと回るようにできているんだ。サロン席は固定なのかと思ってた。

今回も真ん中ぐらいに席を取ったのだが、サロン席の会話は丸聞こえ。あなたたち、相変わらず下品ですよ。いや、面白くていいけど。

競馬場とビール工場と自宅のそばをかすめて、松本へ続くの中央道をひた走る。往きは好天に恵まれ、渋滞も無く、のんびりとした雰囲気でSA休憩をはさみながら。恒例の北海道直輸入クラシックもうまい。実は、新宿駅にてNewDaysの北海道フェアでクラシック買い込んでフライングしてましたが。ビールが冷えるまで、がまんでーきないー。

しかし、NewDaysでも、高速のSA/PAでも、そこら中で北海道フェア開催中。北海道ブランドのすごさを思い知る。個人的には、山梨とか長野のものが喰いたいんだけど。

途中に立ち寄ったPAの売店ではスナック菓子の袋がぱんぱん。ここはボリビアか!

そういえばユニも緑色だし。もしかして松本がホームで強いのは、高地なおかげでホームでなら無敵というあのチームと同じなのか!

そんなこんなで、開場時間の少し前にアルウィンに到着。乾燥しているせいか、暑さはそれほど感じないものの、日差しが強い。しかし、これが夏を感じさせて、意外に気持ちがいい。松本の気候は道産子にも過ごしやすいかも。

空港のすぐそばということで、頭の上をジェット機が通過。便数が少ないので、ほとんど見られないのかと思いきや、セスナを含めると結構な頻度で飛んでいく。ちょうど飛んでいったのは福岡便らしいが、新千歳便もあるでよ。

この日はキリンデーということで緑色の山雅ビール大プッシュ。キリンビールが緑色のビールを出荷しているのかと思ってたら、ビールにブルーキュラソーを垂らしたカクテルっぽい。泡に青い筋の入ったカップも見たので、たぶん、その場で垂らしているだけでしょう。

サッポロビールをこよなく愛する札幌サポとしては、キリンビールなんか飲むわけにはいかないので、まずは穂高地ビールに突撃。アルトとケルシュがあったが、ここはアルトの方がうまかった。普段はケルシュ派なはずなんですけどね。

つまみに牛串焼きを求めて列に並んだら、ここも北海道フェア開催中。北海道牛串\600也。えー、と思ったら、ちゃんと長野県牛串\500也もあった。値段の違いは関税か何かか?

長野牛は絶妙な焼き加減でやわらかくてうまかった。こういう串焼きって、焼きすぎで硬くて食えないものあるのだが、ここのはこれまででもベスト級だったかも。

他にも、緑色の山雅餃子とか、いろいろ食べてみたかったのだが、SA休憩で食べ過ぎ飲み過ぎ。試合後の宴会もあるので、泣く泣く断念。ここも、いずれリベンジしよう。


今節のスタメンにはワントップに三上が返り咲き。前節、なんで外されちゃったかわからなかったが、今回も活躍すれば、まさかのレギュラー定着があるかも。

ボランチには上里が怪我から復帰して宮澤とのコンビ。こちらはダメだった組み合わせなので、どう修正してくるか。

ベンチでは、フェホが初登場。確かにでかい。でも、ちょっと細い。練習試合では得点を獲りまくっているが、実際のプレーを見たことが無いので、どういうプレーをするのかサポにも未知数な感じ。

一方、松本は岩沼がスタメン。ボランチじゃなくて左サイドらしい。去年まで札幌にいた選手なので、選手紹介では容赦ないブーイングが飛んだが、コールリーダーからの煽りや弄りは無し。これまで、変に煽って負けフラグを立てることがあったけれど、松本の素晴らしい応援に敬意を表してか、アウェイで負け続きのせいか、今回は自重した。

さて、本日はキリンデー。ということで、キリンの人が試合前にあいさつ。ここで札幌サポを煽る。試合もビールもキリンが勝ちます。これには札幌サポからブーイング。

そもそも、札幌サポのサッポロ愛を知った松本側が意識してキリンデーを札幌戦にぶつけてきたらしい。そういう経緯なので、この挨拶とそれに対するブーイングは様式美。しかしながら、結果を見ると、今回の負けフラグを立てちゃったのはキリンビールだったのかも。

松本の応援は試合開始前から素晴らしい。そもそも、ゴール裏にサポが多い。前節の同じ緑のチームとはエライ違いだ。スタグルにも山雅ビールをはじめ、緑をモチーフにした名物がいっぱい。この盛り上がりは他のチームから見てもうらやましい。この応援は、J1でも立派に通じると思う。

松本のゴール裏には緑の旗がいっぱい立っていたが、後からスカパーのビデオを見直すと、あれはいつもじゃなくって、サポが主導の旗いっぱいデーだったとか。それでも、そういう運動で売店からフラッグが売り切れるというのはすごいことだよな。

対する札幌は負けずにビッグフラグ+12襷。アウェイでは久し振り。しかし、スカパーではせっかくの12タスキが映らず。残念。


そしてキックオフ。

いやあ、本当に久しぶりに楽しい試合でした。

長くなってしまったので、また次回。

 

 


[SF] NOVA10

2013-07-24 22:11:10 | SF

『NOVA10』 大森望 責任編集 (河出文庫)

 

描き下ろしSFアンソロジーの『NOVA』が遂に第1期終結。もともと、描き下ろし短編SF発表の場が少ないということから始まったと記憶しているのだけれど、今や一般文芸誌に普通にSFが載る時代になってきたということで、使命を全うしたという位置付け。

それ以上に、大森さんが「もう疲れた」と言っていたのが印象的。本当にお疲れ様でした。

使命を全うしたとは言っても、『NOVA1』から見るとわずか3年半しかたっていないわけで、短い間にSFを取り巻く状況はずいぶん変わったなという印象。

90年代の冬から00年代の春を経て、10年代の夏へ一気になだれ込んだ。この勢いに乗ったのが伊藤計劃と円城塔。伊藤計劃は残念ながらNOVA開始前に早逝されてしまったが、円城塔は『NOVA1』と『NOVA10』の両方に参加している。

その伊藤計劃の遺稿「屍者の帝国」冒頭部が掲載されたのが『NOVA1』であり、これを引き継いで完成させたのが円城塔。そして、完成した『屍者の帝国』は今年のSF大会で星雲賞を受賞し、そのスピーチで円城塔は「伊藤計劃を不死化するな、誰か倒せと」と語ったとか。

これまた印象的な発言で、いろいろ議論を呼んでいるようだが、その場に居合わせられなかったことが純粋に悔しい。きっと、日本SFの歴史に残る名言になるのではないかと思う。(って、すっかり『NOVA』の感想じゃないじゃん)


「妄想少女」 菅浩江
SFファンにはおなじみの新井素子問題というのがあって、それは「少女はいつまで少女か」という重大な問題である。しかしながら、この短編には中年女性SFでありながら、“少女”というタイトルこそがまさしくふさわしい。人類には妄想が必要な人種と、妄想を必要としない人種がいる。昨今の非実在青少年問題などを見る限り、この二つの人種はまったく相容れないように思える。しかし、だれでも妄想を必要とする時が来るののではないかと思う。

「メルボルンの想い出」 柴崎友香
不慣れな外国に一人取り残されるという悪夢的な物語。メルボルンは隔離され、何かが始まっているのだが、街中はゼッケンを付けた作業員だらけで、誰も何も教えてくれない。SF的解釈はいろいろできるのだけれど、それをやってはおしまいな気がする。

「味噌樽の中のカブト虫」 北野勇作
これも悪夢的な話で、唐突でシュールな場面転換が続く。味噌樽=脳味噌の詰まった頭がい骨のような、わかりやすいダジャレをはじめ、各モチーフに重層的な意味があるのではないかと感じる。実はこの悪夢を夢見ている主人公がいる。彼はサラリーマンではなく航宙士で、カブトムシ型宇宙人につかまり……なんていう“真実”を幻視してしまう。

「ライフ・オブザリビングデッド」 片瀬二郎
とっくに死んでいるのに、それに気付かず、いつものように会社へ向かうゾンビたち。車に轢かれても、ホームから落ちても、電車にズタズタにされようともおかまいなし。それを警備するお気楽な多国籍軍。いったい日本はどうなってしまったのか。滑稽というよりは物悲しいイメージを感じてしまうのは、それが現実の日本と対して変わらないと思ってしまったからだろう。

「地獄八景」 山野浩一
「この人、まだ生きてたんだ!」などと言ってはいけない。33年振りの新作だとか。現代の地獄というか、タンパク質のネットワークにより生まれた仮想世界というか。唐突に地獄での犯罪とは、みたいな議論が入ってくるのが、山野浩一らしくておもしろい。

「大正航時機綺譚」 山本弘
これはあれだよあれ、フェリクス・J・パルマの『時の地図』。別にパクリというわけでもないのだけれど。意外なところに飛ぶ最後のオチがよい。

「かみ☆ふぁみ! ~彼女の家族が「お前なんぞにうちの子はやらん」と頑なな件~」 伴名練
今回の俺的ナンバーワン。というか、今年の俺的ナンバーワン。タイトルからしてライトノベルの体裁で、中学生の淡い(けれども熱烈な)恋愛を描いた作品ながら、超絶奇想なハードSF。全知全能な力を持ってしまった人間は神になってしまうのか。神に恋した少年はどうなってしまうのか。走れ少年、恋のために! 神ファミリーそれぞれのキャラクターが立っているのもラノベ体裁と相まっておもしろすぎる。未来は変えられるという力強いメッセージも素晴らしい。何より、全知全能とはどういうことかを、宗教もファンタジーも飛び越えてちゃんとしたSF設定に引き込み、それで物語を構築した力技に脱帽するしかない。

「百合君と百合ちゃん」 森奈津子
少子化対策のおぞましい結末。なのか、感動的な結末なのか、わけがわからん。ただ、この性交代理アンドロイドが、実はアンドロイドじゃなかったという方がありがちな気がする。アンドロイドを量産するより、感覚記録とフィードバックの方が実現性が高そうな上に、少子化対策だけでなく、貧困対策も一気に解決しそうだ。(ブラック)

「トーキョーを食べて育った」 倉田タカシ
核戦争により荒廃した北半球。すべてを作り替えるために荒れた街を破壊する巨大マシン。その足元をすり抜けていく、パワードスーツの子供たち。クールで魅力的な視覚イメージの裏で、破壊と死に麻痺した子供たちの姿が薄ら寒い。さらに、生き延びるために選択肢の分かれた人々の争いは、いつまでも絶え間なく。

「ぼくとわらう」 木本雅彦
木本氏の長男はダウン症である。それを知って読むのと、知らずに読むのとでは、解釈に大きな違いが出るのではないかと思ってしまう。「僕の自伝はダウン症患者の物語ではなく、僕の物語である」という言葉の意味は重い。しかし、ライフログを書き換えることによって過去を書き換えるという意味、ライフログから再構成された文章という意味、この二つの意味がうまくつながらずに消化不良。たぶん、外側から見た彼の姿が描かれないことも重要なポイント。タイムリーに「iPS細胞でダウン症治療の可能性が」というニュースを読んだが、残念ながら、まだ先は長そうだ。

「(Atlas)^3」 円城塔
あなたの主観と私の主観は違う。そういう話はクオリアの話をするまでもなく常識だと思っていたが、2chやtogetterなんかを読むに、まったくそうではないらしい。主観と主観をつなぎ合わせたところには不整合が発生する。その不整合を解消するのことに、客観的な真実である「地図を作る」という言葉が与えられる。これがタイトルのAtlras。しかし、それが立体を意味する3乗になっているところが意味深。細かく読んでいくと意味が不明だが、おおざっぱに眺めると大変わかりやすいというのも地図っぽい。

「ミシェル」 瀬名秀明
小松左京『虚無回廊』の瀬名秀明的解釈による補完。『虚無回廊』はずっと積読になっているので(完結したら読もうと思ってたのに)未読。この短編だけだと、断片的なエピソードだけでよくわかりません。この際、『虚無回廊』から一気読みしてみようか。と思いつつ……。