鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

作業と環境条件

2015年07月24日 00時00分01秒 | 紹介

 どのような作業でも見落としがちな、最適環境条件がある。我が国は四季を持ち、天候の変化が激しい。環境条件をコントロール出来る環境では問題とならないが、屋内作業と屋外作業では全くといって条件が異なる。通常、塗装作業では作業環境を管理するのには、温度、湿度、風速、粉塵の有無等を用いる。空気中の炭酸ガス、揮発した溶剤の滞留、日射量等も関係してくる。作業内容によって、環境条件の程度は異なって来るが、最適環境を知っておく必要がある。むしろ、最悪条件を知っていた方がよい。

 

 塗料の塗装条件や乾燥条件は、作業時間に塗装環境にないのであれば、欠陥が起こる可能性が高くなる。塗りや塗料乾燥時の環境に十分配慮しなければならないのは当然のことである。塗料には使用条件が明示されているので、その条件を守るために何をしなければならないのかが仕上がり状態を左右する。

 

 一般的に共通する温度は10℃から30℃(±5℃)、湿度は60%以下で無風状態がよい。温度が高いと塗料の溶剤揮発量が多くなり、塗料の流動化が阻害され、平坦な塗面が得にくくなる。逆に温度は低いと流動化し易くなり、塗料がたれやすくなる。また、湿度が高いと白化現象という空気中の水分が塗料と結合して乳化現象の状態になる。極端に溶剤の蒸発速度が高い場合にも塗面が冷やされて白化現象が起こる。この他にも多くの障害があるが、その対策を熟知して障害を無くすか最小にしなければならない。

 

 漆工では一般の塗料と異なり、湿度を必要とする。温度20~25℃、湿度80~90%を適当としている。また、温度100℃以上に強制的に加熱すると漆は固化する。漆の高温硬化法といわれている。

 

 完全乾燥に至るまでには最適環境の維持が必要で、時間との勝負である。塗った後には指触時間(指で触って指紋が付かない状態)まではゴミや埃がない清浄環境にしなければならず、乾燥室などを設備した方がよい。漆工では漆風呂(回転風呂)という木箱に入れる。参考までに申し上げると、乾燥過程は、指触→粘着→定着→固着→硬化→固化→完全乾燥という過程を経る。

 

 環境条件は重要であるが、悪条件を克服する知恵も必要で、屋外では特に、気象予報を知り、作業上の環境変化についても意識しておく必要がある。


水準と水平

2015年07月23日 00時00分01秒 | 紹介

 水準は多くの言葉や現象に対して使われている。地位、階級、品質、価値などの高さの標準のことである。○○の水準に達するや水準を超える(上回る・下回る)、水準が低い等と使われる。知的水準、文化水準、給与水準、土地の傾斜、高低を測定する水準器等で、元々は水盛り器から派生している。水盛り器は建築の基礎工事等で使われる道具であるが、筒状のバケツの底にホースを繋ぎ、バケツに水を入れてホースを測定位置に置き、バケツの水の高さが、どの場所でも測れるという測定器である。水平を求める場合に使われる。

 

 この原理は、地球の表面において、水平面は、地球の中心に向かう鉛直線と直角になるため、水平を求めることが出来る。水平を求めるには、水準器が用いられ、ガラスのチューブや半球面に液体を閉じこめ、そこに泡を1粒入れてあるもので、泡が静止した位置で水平が分かる。

 

 漆工作業では、箱定盤を使うが、平面を持った作業台で、漆工は座って作業を行うことが多かったため、定盤上で、下地材をへらで練ることや漆ばけの調整、木べらの作製等多くの作業をこなす。乾漆においては蓋物等の合い口を水平にすることや、高さの調整等に水平を求める場合が多い。定盤がない場合には、透明ガラス板で代用出来る。ガラス板は、水屋の引き戸、自家用車の窓ガラス等の廃品利用で入手出来る。精密機械作業でも使われるトースカン、直角定規、ヤンキーバイスがあれば簡単に水平位置を計測出来、是非準備されたい。

 

 乾漆制作の第一歩は、図面に二次元で書かれる物体を三次元にするので、完成品をガラス版上に基台となるアクリル板を置き、アクリル板上に油粘土を使って造形物を作る。このときに油粘土を整形するため、ジグであるアクリル製の定規を作り、ヤンキーバイスで固定して水平を保ったまま、アクリル基台がゲージとなり、余分の油粘土を掻き取って成型する。四方の高さは同一にするためにはトースカンを使う。

 

 水平な面を求める場合にはカラス板上に研磨紙を置き、制作物を前後に動かして合い口や、底の水平を取るが、刃物研ぎに使う砥石も時々水平面にする必要がある。水平なコンクリート面で同様に砥石を動かして水平面を得る。

 

 家庭内でも家電製品等設置には常に水平に置くことで、雑音の防止や製品の変形等を防ぐため、それに自家用車の駐車に置いても同様で、特に地震による家屋の水平が取れない場合は居住する人の健康を害することもあり、水平の必要性は常にある。


大学改革の提唱記事

2015年07月22日 00時00分01秒 | 提言

 数日前の日経新聞教育欄に、「大学改革は学生側の視点で」「国の過剰介入が問題」と題して新潟国際情報大学学長平山征夫氏の提言が載っていた。編集者の視点は平山氏の主張が過激であると指摘している。国側の矢継ぎ早の改革攻勢に大学側が疲弊しているとも述べているが、立場上中庸を取っていて、ポイントを突いていない気がした。編集者の社としての記事掲載基準なるものがあると思うが、掲載前にもっと精査すべきであろう。

 

 自らは実務を行う大学側の詳細な実態を十分把握している立場ではないが、新潟県知事をも経験した平山氏の論は行政経験をした者の発言としてはいささか場違いな気がし、改革に取り組まざるを得ない状況認識の甘さは批判の矛先が間違っているといいたい。問題の根底は、何度となくブログで取り上げてきた背景があることで、大学ばかりではなく学校教育全体に及ぶ制度改革が、喫緊の課題となっているからである。

 

 大学専攻コースの問題、少子化の問題、就職のマッチングの問題、教員の指導力不足、企業ニーズとの遊離等、どの問題も根が深く、所管の文部科学省も現状を改善するかの模索が続いている。国民の税金を使っての国立大学への運営費交付金、私立大学への経常費助成の補助金が投入されているので、それに見合う成果は要求されるのは当然である。教育の目的が大学の自治だけではないこともいわずと知れた事実であり、今までに改善への自助努力が形となって現れない以上、所管である行政府の改革指示は攻勢を期すのは至極当たり前のことで、反論の余地はないと思われる。

 

 大学は企業と同じとまではいわないが、採算が取れなければ、倒産せざるを得ない。国立大学も法人化されているし、私学に至っては、原則、学校経営が立ち行かなければ、店をたたむしかないであろう。一般企業においては特別の分野でなければ助成金や補助金は支給されないし、支給額も規模によって助成率が異なっている。要はニーズに合わなければ、利益は得られないのは世の常である。

 

 学生の視点を無視することは出来ないのは、従来も同様で、今の段階で、それを表に出すことも説得力に欠けるのではないであろうか、また、定員を削減することで、生き残りを図る算段を述べられているが、これについても、大学生の受け入れ側が世の中のニーズに対して敏感でなければならないのは、学生側の視点を無視することではない。学生側が企業を選ぶのではなく、企業側が自社に必要な学生を採用するのである。

 

 基本的な認識に欠ける暴論は、過激ではなく、百害有って一利無しの提言に他ならない。


漆工作業その20

2015年07月21日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 漆工作業はその歴史が示すとおり、技術的な技法は完成されているといえる。我が国が江戸時代に鎖国を行っていたが、黒船来航以後、鎖国は解かれ、開国して行く時期にペンキ(ペイント)も移入されたといわれる。培われていた漆工技術があったため、比較的容易に移入されたワニス等の油性塗料が使われる様になったようである。現在は多くの合成樹脂が使用されているが、その作業の多くに漆工技術が使われていて、基本的な塗装作業には共通点が多くある。

 

 漆工では天然樹脂の漆を使い、被塗物に対し、保護と美観を与える皮膜を形作る。使用する塗料である漆もJIS(日本工業規格)でその種類、品質等を規定している。天然素材を用いることは環境に対する影響を最小限にするとの意識があることはその通りと思われるが、他の塗料が必ずしも悪いわけではない。既に危険であり、人体等に悪影響を及ぼす塗料は安全なものに変わっている。環境に対して影響が少ない塗料を使用していて、ことさら合成樹脂塗料を否定する必要はない。むしろ、塗料の使用量は圧倒的に合成樹脂塗料で占められている。

 

 現在の塗装技術に漆工で培った変わり塗りなどの加飾方法はむしろ積極的に用いればよいのであって、100種類を超える変わり塗りの表現はデザインを一変させる効果を持つ。また、我が国独自の色合いである浅黄色、うるみ色、なす紺色、透(すき)、紅溜、緋色等の発色も和風といわれる雰囲気を醸し出す。

 

 漆で塗られた製品に、カシュー等の合成樹脂塗料を上塗りすると漆が持つ抗酸化作用が原因で乾燥しない場合がある。逆は問題ない様で、下塗りまでをカシュー等の合成樹脂塗料で仕上げ、上塗りに漆を用いた製品もある。塗装には、最終工程だけを目にするわけで、だからといって、下塗りは何でも良いということではない。下塗りまでの工程は上塗りの機能と異なる目的があることを知るべきで、手抜きは許されることではないであろう。

 

 使い捨ての時代となり、消費が美徳までいわれる昨今、物を大事に使い、それを長持ちさせる事の方が美徳であり、無駄にしない努力は永遠に必要な見識である。その一助に漆工の世界も存在してきた。必要ない機能を敢えて付加する必要はないが、漆工技術の持つ奥深さの中に、次世代を担う技術がかくされているのかも知れない。既に、電子線を当てて、乾燥時間を短縮する技術などが報告されている。


漆工作業その19

2015年07月20日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 摺り合わせは水平な面を作るのに大変大事な作業である。どの段階で水平を出しておくかを意識して作業に当たらなければならない。石膏を利用した乾漆作業において、胎となる漆と麻布等で塗り重ねた漆胎すなわち乾漆は、経時変化で変形し、縮む。製品の僅かな歪みは全体の安定性を欠き、水平さえも取れなくなる。蓋物は特に、左右、上下が狂いやすい。下地を施してから直ぐに中塗り、上塗りと進めばよいかというと、そうではなく、上物ほど狂いを生じる時間を長く取る。半年や1年寝かせる場合もある。その間に、温度変化や、漆の固着が進み、痩せさせて、もう痩せることがないと見極めてから仕上げ塗りにかかる。

 

 合板に使うピアノなどの鏡面仕上げに使う木材も輸入した後、製材し、屋外で棚積みして、乾燥させ、十分に狂いを出してから利用している。

 伝統工芸展など展示会においても、目痩せして、下地に使った寒冷紗や麻布の模様が浮き出た作品も見受けられる。施工にかかる時間的制限があり、仕方がない面もあるが、表面のやせだけでなく、蓋が閉まらない、合い口部分に隙間が空く等の欠陥が生じる。変形は展示物に長時間スポットライトを浴びさせたことによる、温度変化で、照射された場所の膨張が起こることに起因する場合もある。

 

 上塗りまでしてからの修正は困難であるので、下地の状態で水平を取っておく。ガラス板に比較的粗い耐水研磨紙に水を潤滑剤として、合い口の一方を前後左右にこすり、水平を出す。耐水研磨紙の代わりに砥の粉を用いても良い。立ち上がり面の水平は、一方の合い口の水平面を基準に、隙間を埋める。独自に治具を作り、へらとして、また、ゲージとして利用する。水平が取れた合い口部には塗料を薄く塗って仕上げる。

 

 塗装面が縮むのは仕方ないことで、塗料は単体ではなく、刷毛等で塗りやすいようにするため、流動化させる。溶剤(シンナー)で原液を薄める。乾燥塗膜からシンナーが抜け出て、塗膜となる固形物だけが残るが、完全に抜けきるまでは時間がかかる。漆においても同様で、空気中の水分を採り入れるため、膨らむイメージがあるが、酵素(ラッカーゼ)の作用によってウルシオールが水分と結合して安定するばかりではなく、多くの炭化水素を持っていて、揮発する成分もあるため、結果的に縮む。下地材も同様で余分な水分が揮発する。また、塗りやすくするため、テレピン油などのシンナーを加えている。

 

 塗料類の殆どは乾燥すると痩せると思っても良い。また、良い製品は基材の狂いを如何に抑えているのかによるが、直ぐには分からず、長年の使用で結果が出る。


漆工作業その18

2015年07月19日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 研ぎについて考えてみる。漆工では各種の研ぎに必要な研削材料を使っている。研ぐことは研削や研磨という言葉を使う。原理は出っ張っている部分や出っ張りを削り取って平らな面にすることなのであるが、そればかりではなく、わざわざ平らな表面に傷を付けて表面を粗(あら)し、次ぎに塗る塗料の足がかりを付ける。これをアンカー効果といっている。船が海洋で錨(イカリ)を降ろし、船を固定する投錨の意味である。このことは、意外と知られていないのであるが、一定の厚みが必要な塗膜は、塗り重ねることによって得られる物で、刷毛塗り1回の膜厚は精々30~50ミクロンぐらいであるので、また、ガラスの様な平坦な表面に塗料を塗ると乾燥後密着が悪く直ぐに剥がれてしまう。

 

 塗料が物体の表面に塗られ、密着するには、投錨効果ばかりではなく、分子間引力が作用することや、物体の表面に異物や、油脂類があると塗料がはじき、うまく密着してくれない。これを濡れ(ぬれ)という言葉で表しているが、研ぎは、表面の異物を除き、濡れをよくする目的もある。

 

 研ぎと磨きは作業に必要な材料が異なり、区別して用いているが、原理は同じである。漆工に用いる研ぎ材料としては、砥石、炭、木賊(とくさ)研磨紙、耐水研磨紙等である。砥粒の粗さによって用途を変えるが、下地の研ぎには砥石を用い、上塗りに従って、砥粒の細かい炭や砥の粉を使う。連続して磨きを行うが、炭の粉をふるいにかけた炭粉、砥の粉とあぶらをねった研磨剤、チタン白、醐紛等も用いられている。

 

 塗装作業で研ぎは作業全体の2/3位のウエイトを持っていて、必ず必要な作業である。空研ぎと水研ぎに分かれているが、粉塵を吸い込まない水研ぎの方が体には良く、耐水研磨紙を使用する。漆工では、手で研ぐのが普通であるが、面積が広くなると機械研磨(サンダー)を利用する場合もある。エアサンダー、ベルトサンダー、ポリッシャー等も導入されている。円軌道運動をするオービタルサンダー、前後運動をするラインサンダー等も仕上げの程度によって選択されて使われている。

 

 機械による研ぎは、簡単な様に思えるが、平面を出すのはそれなりの熟練がいる。塗面の研ぎは研削材料との摩擦による熱の発生が塗膜を軟化させ、研削効率を逆に落とす場合もあるので、取り扱いには熟練を要する。研ぎ作業は難しい作業で、研ぎすぎることによって、塗膜を台無しにする研ぎ破りなど仕上がりに直接影響する作業である。


漆工作業その17

2015年07月18日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 漆工作業の生まれる前には、縄文や弥生土器がある。粘土を整形して素焼きにし、器や穀物や飲料水の保存に用いられた壺や瓶(甕)がある。現在の壺を作るのに、細長く伸ばした粘土を渦巻き状に重ねて壺状にし、表面を平らにする方法が使われる(板状の粘土を重ねても良い)。これは縄文時代から続いている方法である。他の方法では、壺の大きさにもよるが、心棒となる木材や鋼製パイプに荒縄を巻き付けて立体造形を作り、粘土を周りに塗りつけて乾燥させ、そのまま素焼きにすれば、上下に穴の空いた壺が焼き上がる。(片方の穴にそこを付けるか、予め粘土でこしらえておけば後から作ることはない)

 

 通常は半分にした大きさの油粘土型を作り、石膏型を取って雌型→雄型→雌型、左右の分二つを作る。後は乾漆の方法で、雌型の内側に下地材と麻布を塗り重ねて胎とし、合体させる。乱暴な方法でもあるが、油粘土に離形剤(グリース、パラフィン、ワックス等)を塗っておき、直接、合成樹脂下地材(ポリエステル樹脂パテ)を塗って、補強のためのガラスクロス(グラスウール)を貼り付ける場合もある。乾燥後粘土を取り去り胎とするもの(この場合粘土表面に接した部分が壺の内側になる)。

 

 心棒に荒縄を巻き付ける方法は、現在でも使われている。予めベニヤ板に図面で描いた半分を描き、定規(あて板)とし、荒縄を巻いた心棒が回転する様に水平に置いて、粘土で整形する。定規のカーブが得られる。乾燥後、離形剤(膠等)を塗っておく。透明な膠に弁柄(ベンガラ)を加えて色づけする場合もある。

 

 塗装方法は、乾漆胎を作る要領である。

中塗り→炭粉蒔→生漆固め→さび付け2回→地の粉下地2回→水研ぎ→布張り2回→地の粉下地2回→布張り→地の粉下地2回→切り粉下地2回→水研ぎ→さび付け2回→水研ぎ→中塗り2回

 

 上記工程を経ると、7~8mm の膜厚を持つ塗膜が出来る。心棒を抜き、縄を取りだし、水で粘土を溶かして流し出す。すると、乾漆となる漆胎が完成する。底は別途作製すればよい。丸く石膏型を作り、それに乾漆胎の制作要領で作成する。

 

 漆の代わりにカシュー漆といわれる合成漆を用いて同様の工程を簡略化して行う方法もあり、経費のことを考えると漆と遜色のない同様な製品を作成することが可能である。当然、下地材や、多くの種類の製品が市販されている。


歯科での治療

2015年07月17日 00時00分01秒 | 紹介

 数年前から歯茎のやせが目立ち始め、それに伴い歯槽膿漏が頻発し、何本か抜く羽目になった。歯並びや、歯自体はそれなりに健康と思っていたが、歯が痛むと虫歯の治療や、歯槽膿漏の治療を続けてきた。寄る年波には勝てないのかも知れない。抜いた歯の後は入れ歯を使っていたが、これも毎日の手入れは面倒となり、入れ歯を使わない日も多くなった。

 

 数日前から痛みが続き、正露丸を詰めて、痛みを我慢していたが、それも限界で、急遽歯科医へ電話をした。予約制なので、アポイントを取ったが、あいにく夕方まで待たないと空きがなかったため、直接行って、診療の合間に入れて貰うことにした。幸いなことに、キャンセルがあったため、行って直ぐに診療して貰うことが出来た。レントゲンを撮り、歯茎が浮いた歯の神経を抜く手術となる。

 

 さて、歯については食べ物をかみ砕く機能しかないと常々思っていたが、入れ歯を入れると食感が変わってくることに気づいていた。どうも、歯はかみ砕く機能ばかりでない様である。食感は舌で感じるよりも、歯が主であり、かみ砕く音を聞いている耳である。舌で味わうのは味覚であり、食感を陰で支えているサポーターの様である。

 

 噛む力を加減するのは音であり、音を聞いて噛む程度を加減している。温度感覚も重要で、これは温度センサーを持つ歯で感じ、舌や口内全体であるのかも知れない。冷たい物を口にすると歯が感覚麻痺を起こし、冷たく、また痛くも感じる。歯に繋がる神経の働きなのである。

 

 麻酔をかけ、神経を眠らせての治療であったが、治療中は全く感覚が無くなる。痛くもなく、何をされているのか音だけでしか分からない。歯に穴を開けている様で、歯を削る音と、発生する熱を下げるための水を吸引する音だけである。治療中の様子は目では見ることが出来ないので、神経をどのようにして抜き取るのかよく分からなかった。

 

 時間的には30分ぐらいであったと思うが、1本の歯の神経を抜くのに大変である。詰め物をして治療は終わったが、看護婦から食事は麻酔が覚めるまで待った方が良いとのアドバイスを貰い、処方された痛み止め(ボルタレン)を貰って帰宅した。麻酔が覚めると痛みが襲ってきて、神経の最後の抵抗であったのか不明であるが、その来襲は一昼夜に及んだ。