手作り石鹸をいただいた
色も形も違うのに
敗戦後のあることを思い出した
昭和20年の今頃 道北のS町の 引揚げ寮に住んでいた
食べるものも着るものも何もない時代
着の身着のまま いつもお腹を空かしていた
配給の石鹸なども見たことがなかった
ある日
母が何処からか 闇で 魚油石鹸 を買ってきた
強烈に臭く 汚れも落ちるとは思えないのに
12歳だった私は こともあろうに
髪の毛を洗ってしまった
硬くて多く肩より長かった髪の毛が
もつれネバネバ 蜘蛛の巣のように絡まり 児雷也のような風体
異様なにおい
どうすることも出来ずに泣き出してしまった
母は動じなかった
たらいにお湯をはり ふのり(布糊)を袋に入れて濾し
私の髪の毛を洗ってくれた
ゆるやかに髪の毛は解きほぐれ すべすべと滑らかになり
前よりしなやかで艶もでてきた
奇跡が起きたような驚きと嬉しさ
その時の母の手のぬくもりは今でも忘れない
お味噌汁に入れて食べるが大好き
※ 布団の中身は綿の代わりに海藻だった時代
布糊は手に入りやすかったのだろう
※ 魚油石鹸を探したが資料は見つからなかった
おそらく ニシンや 鱈などの油で作ったのだろう
肝油を飲まされたことがあるし 魚油の天婦羅もあった
孫(私の長女)の結婚式で
もうじき母の命日が来る