先週の秋田中央高校の公演から秋田でそのまま休日を過ごし、ツアーの中日が過ぎた今週、東北から東海へと再び北から南へと縦断していく一週間でした。
10月19日 由利高校(秋田県)
20日 秋田北高校(秋田県)
21日 清水南高校・同中等部(静岡県)
22日 日本大学三島中学校・高校(静岡県)
23日 茂木高校(栃木県)
由利高校
由利高校では2000年に『Touch—孤独から愛へ』2003年に『星の王子さま』を上演以来、ひさしぶりの公演となります。今は共学ですが、女子高時代の筆者(工藤順子)の母校です。私を含め、今回で2度目の来校となるメンバーも何人かいます。
真新しい体育館での公演でした。
体育館に入ってくる生徒たちの先輩に挨拶する声が飛び交い、かつての懐かしい時間がふと蘇ってきました。集中したまなざしの中にプッと笑いがあったり、うれしそうに見ている顔が印象的でした。
終演後に担当の先生から「工藤さんは実は由利高卒業生です」と紹介をいただき、一瞬のどよめきのなか、私も興奮した気持ちで挨拶させていただきました(トップの画像はそのときの様子)。学校の体育館で上演できたことは、ひときわ感慨深いものがあります。
終演後にはバスケット部、野球部、生徒会そして演劇に興味のある人やボランティアで参加してくれた生徒さんが30人以上集まり、舞台の撤去を手伝ってくれました。
↑この3人は撤去の様子を最初から最後まで見守ってくれていました。
役者やスタッフと交流する生徒さんの姿もありながら、あっという間に、日常の体育館に戻りました。
一人ひとりが喜びや、失敗も含めて経験したことを大切に、夢をもって生きていってほしいと強く願っています。先生方、生徒のみなさん本当にありがとうございました。
秋田北高校
一階席に700人の生徒さんたち、二階席には「あげまきの会」の同窓生の皆さん、保護者の方々200人位が観劇に訪れました。前回上演した『ヘレン・ケラー』の公演の時にも100人以上の「あげまきの会」同窓生の皆さんがいらっしゃったそうです。
劇団員の母校公演が続きます。今回の公演では出演していませんが、この学校は白根有子の出身校です。
開場時のにぎやかな声から、放送部の生徒さんのアナウンスで、一変して集中し最初から最後までじっと静かに、そして熱く舞台を見つめるまなざしとともに舞台が創られていきました。
↑舞台袖での放送部の打ち合わせ風景。
カーテンコールでは、文化庁「文化芸術による子供の育成事業」で『星の王子さま』公演の事前ワークショップで九州を巡演している白根から、メッセージが届き、放送部の生徒さんに舞台上で読んでいただきました。
「仲間をつくること、今の自分を信じて大切にして学校生活を送って下さい」と演劇部に所属し、卒業後、風に入団してその経験のなかで、後輩たちに向けられた言葉に会場からは熱い拍手が送られました。拍手は鳴りやまず、見ているときの緊張感から解き放たれ、「ハムレット!」とあちらこちらからかけ声が聞こえ、元気に手を振ってくれる生徒、同窓生の皆さん。ここにしかない“演劇”を見る喜びをともに感じた日でした。
その後、トラックに荷物を積み込む搬入口のそばに興奮さめやらぬ生徒さん達が、大勢集まってきてくれました。
公演後は演劇部の皆さんとの座談会が行われました。
ここから旅班は秋田から一気に静岡県の清水に向かいました。
清水南高校・同中等部
この学校では音楽や表現の授業があり、生徒さん方は舞台に立つ機会もあるそうです。
「本物の舞台を、本物の目で見ましょう」という榊原副校長先生のご挨拶とともに開演しました。開演前に先生方が生徒さんにかける言葉には、演劇鑑賞に対してのさまざまな思いや願いが込められており、私たちにとっても舞台と客席を繋いでゆく大事な瞬間です。
ハムレットの言葉、一言一言を逃さず聞いている姿、作品世界と対峙しながら舞台を見るまなざし。一人ひとりの問いかけや沈黙のなかに対話が生まれてくるような上演でした。
「シェイクスピアの『ハムレット』は公演前に読み、おもしろいと思いましたが、より一層楽しめ、感動しました」と図書委員長さんのご挨拶の言葉をいただきました。
終演後には、声楽、演劇などの芸術を志す生徒さん方と客席で座談会が行われました。和気藹々としながら話が弾み、ハムレットが水槽に入るシーンでは一緒に息を止めてしまったという生徒さんもいました。
↑バスの出発を見送ってくれた体育の先生、舞踊家になる夢を語ってくれた生徒さんたち。東京での再会を約束しました。
日本大学三島中学校・高校
こちらの学校では『星の王子さま』『ヘレン・ケラー』を過去2回ずつ上演してきた学校です。今回は中学1,2年生、高校1年生の3学年の生徒さんが鑑賞しました。
開演前に「おもしろいところでは思いきり笑い、悲しいところでは悲しんでください」と担当の先生のご挨拶で盛り上げていただき、生徒さん方もリラックスした状態で開演。
先生の言葉通りに時には思い切り笑い、そして人間の生と死をじっと見つめるまなざしが印象深く残りました。公演後、マイクを使わず会場に届く声で挨拶してくれた代表の生徒さんの「ハムレットが愛するオフィーリアが死んだところは、とても悲しい気持ちになりました」という言葉は、生と死をさまようなかでより生きることが何か、問い返されたのではないでしょうか。
特に中学生たちからの「面白かった」という声にご担当の先生もとても喜んでおられました。
↑カーテンコールでは全員が立って挨拶してくれました。
↑終演後の座談会では生徒さんや先生方から沢山の質問が飛び交い、特に放送部の生徒は熱心にメモをとっていました。
茂木高校
静かな山間にある茂木町。前回の『星の王子さま』の公演から16年ぶりの公演となりました。
10月中旬を過ぎた時期にしては少し気温も上がり、少し暑くも感じられた体育館でしたが、元気いっぱいの生徒さんたちとの公演が行われました。
お礼の挨拶に緊張しながらも「僕たちに感動と影響を与えてくれてありがとうございました」と精一杯の気持ちを述べてくれた代表の生徒さんありがとうございます。
彼らが見たもののなかに、どんな影響を与えることができたのでしょうか。
体育館で行われたことが、一人ひとりの一歩踏み出す勇気、元気の源となってほしいと思います。
↑終演後、撤去の片付けを手伝ってくれた1年1組の皆さんのバックステージ。道具ひとつひとつに興味を持ち、シーンを思い出しながら実際に触れてみたり、体験してみたり。皆さんありがとうございました。
↑急遽、片付けの手伝いに参加してくれたバスケット部の皆さん、本当にありがとうございました。
終演後は体育館近くの和室にて座談会が行われました。参加してくれたのは一年生の女の子と、二年生の演劇実行委員会の皆さん。
この実行委員会は1人の女の子の「演劇をやってみたい」という一言から急遽集まり、先週初めての本番を終えたばかり・・・彼らの行動力にハムレット役の佐野はとても驚いていました。
来週も客席のなかで小さくとも鼓動するものを逃さず、その本質に触れるべき新たな出会いとなるよう、後半の公演に向かいます。
コロス 工藤順子