この秋、私たちは巡回公演2作品の舞台稽古を群馬県みなかみ町で行いました。
我々のもう一つの拠点、群馬県みなかみ町にある月夜野演劇工房では西日本・東日本地域を巡回する「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」の稽古を行い、私たちも稽古や、道具作り等でよく利用させて頂いているみなかみ町猿ヶ京にある旅館ふじやさん体育館では、九州地域を巡回する「Touch~孤独から愛へ」の舞台を本番通りに設営し、稽古を行いました。
ふじやさんの体育館は普段、合宿する学生さんたちや地域の子供たちが使っています。
9月17日、九州ツアーに向かう「Touch~孤独から愛へ」はみなかみ町の地域の方々や子供たちを迎えて、公開舞台稽古も行いました。
体育館の前には出店を出し、このスペースは子供たちの遊び場にもなっていました
「孫に誘われて、埼玉から観にきました。」という方や「孫が高校生の時に風の舞台を観てて、照明のスタッフになりたいって今東京で一生懸命勉強してるよ。孫の分も観にきました。」と話して下さる方もいらっしゃいました。
この公開舞台稽古は昨年の「ジャンヌ・ダルクージャンヌと炎」の公開舞台稽古から、ふじやさんの体育館で開催しています。
去年会った子供たちは少し大人っぽくなっていたり、去年高校3年生だった子が大学生になっていて、一人暮らしをしている先からきてくれていたり、
多くの出会いや再会のあった公演でした。
詳しくは「Touch〜孤独から愛へ」のブログに掲載されますので更新を待っていてくださいね。
「Touch〜孤独から愛へ」「ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち」この2本の舞台が月夜野演劇工房の集中した稽古場と、私たちはみなかみ町の地域の方々や子供たちと過ごした大切な時間を力に、勢いを持ってそれぞれの地域に向かって、月夜野演劇工房を出発しました。
そして、2018年秋 「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」西日本・東日本ツアーは富山県で初日を迎えます。
9月19日(水) 富山県 高岡第一高校 同校体育館
9月20日(木) 山口県 高川学園高校・中学校 同校講堂
9月21日(金) 山口県 下松高校/下松工業高校/華陵高校 スターピアくだまつ
(下松市3校合同1・2年生)
高岡第一高校
カーテンコール時の生徒会長さんからの挨拶
3階の体育館での午前開演。
富山県の高校で一番大きな体育館なのだそうでとても立派な体育館でした。
私たちは公演前日のお昼の時間に高岡第一高校に到着し、「ここまで大掛かりなことをこの体育館で行うのは初めてで想像がつきません、楽しみにしております」と先生たちの期待の声に迎い入れられ、私たちツアーメンバーは当日の公演に向けて、舞台準備をスタートしました。
舞台準備作業中に聴こえてきたお昼の放送では、文化祭の実行委員の生徒さんが、週間後の文化祭へ向けた応援メッセージと「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」の予告をしていました。
公演の一週間前から毎日欠かさず放送してくれていたみたいで、体育の授業の時間を使って舞台仕込みの様子を生徒さんが見学できるようにしていました。
体育館のギャラリーから仕込みの様子を覗く生徒さんたちの「すげーっ」「体育館じゃない見たい」「あれ、どうやったの?」という様々な声が飛び交う中での舞台仕込みでした。
放課後の時間には新聞部のみなさんによるヘレン・ケラー役、アニー・サリバン役の役者への取材が行われ、「なぜこの題材なのか」「一番伝えたいことは何か」「文化祭に向けて私たちに一言」と10個以上の質問を前もってしっかりと自分たちで用意していました。
新聞部のみなさんによる取材の様子
公演当日は校長先生からの劇団紹介から始まり、高岡第一高校の皆さんの元気な声と力強い拍手により、西日本・東日本地域秋ツアー「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」は初日が幕開けしました。
体育館に入場してくる生徒さんたち
舞台に向かう生徒さんたちは集中した様子で、熱い視線を注ぎ、前のめりになりながら観ている子もいました。
公演後には学校の抽選で選ばれた全校生徒約800人のうちの400人が100人ずつの4グループに別れて、役者との座談会、音響・照明の機材操作体験、舞台見学と15分程度を目安に体験する時間が設けられ、生徒さんは自分の触れたいものに触れ、聞きたいことは積極的に役者に聞いたりしていました。また、先生方が見守るだけでなく、生徒さんたちとこの時間を共にしていることが印象的でした。
アニー・サリバン/アナグノス校長との座談会
ヘレン・ケラー/アーサー・ケラー(ヘレンの父)との座談会
座談会の中で「長崎の西海学園でも風のヘレン・ケラーを観ました。その時のことをよく覚えています。」と声をかけてくださった先生の言葉にはとても驚きました。
4年前の西海学園での公演がついこの間のことのように思い出されました。
思わぬ再会で驚きましたが、本当に嬉しかったです。
音響・照明の機材を見たり実際に操作したりしていました
実際に道具に触れている様子
およそ100人の生徒さんたちが舞台上に上がっています
舞台袖で道具の仕組みを見ながら劇団員の説明を聞いていました
舞台見学・座談会が終わった後にもお昼休みの時間を使って会いにきてくれる子たちもいました。
彼女たちは思いっきり舞台の感想を伝えてくれました
みんなのいつものポーズで
舞台撤去作業には体育の授業の時間を使って、生徒さんたちがお手伝いにきてくれました。
見えないところで活躍している舞台の土台部分の一部を彼らは運んでいます
精密機械と知った彼はとても丁寧に機材をケースにしまってくれてます
大きいものは仲間と力を合わせて運んでくれました
作業中ヘレン役の倉八に言葉をかけていました
カメラを向けたら集まってくれました
お手伝いに参加していた生徒さんたちは、積極的に手を貸してくれる中で、合間を見つけては舞台クライマックスの場面を友達同士でやって見たり、舞台を通して自分が見たもの、出会ったことを私たち劇団員に自分の身体や言葉をたくさん伝えてくれました。
高岡第一高校は本当に盛りだくさんで、みなさんと過ごすことのできた時間の中で私たちもたくさんのエネルギーを貰いました。
後日、新聞部のみなさんが、私たちの東京の劇場に出来上がった記事を送ってくれました。
記事の内容は風を知らない人や、ヘレン・ケラーを知らない人が読んでもわかるように細かく書かれていました。
新聞部のみなさん、素敵な時間と素晴らしい記事をありがとうございました。
劇団員みんなで読みたいと思います。
文化祭、次は皆さんの出番ですね。
みなさんがつくる舞台、一高祭を思う存分楽しんで、頑張ってください!!
高岡第一高校新聞部のみなさんの記事
高川学園高校・中学校
カーテンコール時の生徒会長さんの挨拶
早朝、普通の会館に近いくらい立派な学校の講堂の舞台仕込み。
担当の先生が「自慢の講堂なんです!今日はよろしくお願いします!」と早朝の眠気も吹き飛ばす勢いで、私たち劇団員を出迎えてくれました。
中・高合わせて1000人程の生徒さん、先生方に加えて、保護者の方も来られていました。
会場はホールの客席だけに収まらず、ホールのギャラリー部分にも椅子を設置してやっと収まるという、客席に囲まれているような舞台空間でした。
開場中の生徒さんの様子
開演前の校長先生の挨拶の中に、「舞台は演じる役者さんだけでなく、観劇する皆さんも一緒に作るものです。」という言葉がありました。
席順は前の方に中学生、後ろ側に高校生、その後ろ先生方や保護者の方々、生徒の中に混ざって観ている先生もいました。
舞台に向かう生徒さんたち
生徒さんたちはリラックスした様子で舞台で起こっている出来事に反応しながら観てくれていました。
カーテンコール時のPTA副会長の方の挨拶では「自分自身の中にもグッとくるものがあり、子供達の心のにも何かが残るような時間でした。」と話して下さいました。
終演後すぐに公開座談会が行われました。
多くの生徒さんが役者たちに、時間いっぱい質問を投げかけてくれました。
ヘレン・ケラー役の俳優の身振りについての質問や、
どれくらいの規模で活動している劇団なのか、
人前で大きな声を出すための工夫や、
普段気をつけていること等、数々の質問が出る中で、高校生の男子生徒さんから「ヘレン・ケラーを演じたいと思いました。自分にもヘレン・ケラー役はできますか?」という思い切りのいい質問もありました。
後ろの席から客席の中心まできた彼はみんなを笑顔にしてくれました
聞きたいこと、伝えたいことを公開された場で堂々と言えることは本当にすごいと思いましたし、それぞれの質問を聞いている生徒さんたちや見守っている先生方、保護者の方々の柔らかい表情もとても印象的でした。
その後、舞台撤去作業のお手伝いに吹奏楽部の生徒さんたちが来てくれ、作業まで少し時間があったので、舞台を片付ける前に舞台見学を行いました。
吹奏楽部の生徒さんたちは、舞台で出て来た道具たちに触れたり、間近で見たり、
衣装を着てみたりする中で、
左からケート・ケラー/アニー・サリバン/ヘレン・ケラーの衣装を纏って
さっきまで客席で自分たち自身が観ていたことを思い起こすように、
「サリバン先生の本!」「ヘレンのコップ、何回も出てきてた」「ポンプから水が出てきたときはびっくりしました」と声に出しながら見学していました。
作業中の生徒さんたちは劇団員と、そしていつも楽器とかを普段から一緒に運んでいる仲間たちと力を合わせて作業に手を貸してくれました。
音響機材に触れたりして、「みんなに自慢してやろう!」という声も。
吹奏楽部の皆さん力を貸してくれて本当にありがとうございました!
学校を去る劇団バスを姿が見えなくなるまで見送ってくれました
劇団のHPの掲示板には「普段では知ることのできない舞台の裏側まで教えていただき、楽しく片付けをすることができました。サリバン先生とヘレンのやりとりが心に残りました。」とたくさんの思いが綴られたメッセージが寄せられていました。
下松市合同 1・2年生(下松高校/下松工業高校/華陵高校)
3校それぞれが会場に入場してくる様子
この公演は下松市の高校3校の校長先生が繋げた公演です。
前日から先生方も心配していた通り、当日は大雨。会場までの道のりが心配されましたが、会館から3校とも何事もなく会場に到着することが出来たため、公演は予定通りの時刻に開演することができました。
開場の様子
公演前は華陵高校・下松高校の教頭先生の司会・進行で勧められ、下松高校の校長先生からの挨拶から、3校の生徒さん方の拍手で開演しました。
下松高校の校長先生の挨拶
校長先生の挨拶の中には「この公演にはたくさんの人が関わって実現することのできた公演です。皆さんが今日の舞台を通して感じたことが、高校生活の中の一つの思い出になってくれたら、と思います。」とありました。
客席は、はじめは少しの緊張感と普段こない場所に来たという期待感を持って舞台に向かっている様子で、時が経つに連れじわじわと3校が一体となって集中しているのが客席から感じられました。
カーテンコール時には3校のそれぞれの代表の生徒さんたちがお礼の言葉と花束を贈ってくれました。
下松工業高校の生徒代表の挨拶
「自分の言葉を持って相手に伝えれば、思いは伝わるということを感じました。」
下松高校の生徒さん代表挨拶
「私たち生徒にとって本当に大切な時間となりました。劇団の皆さん、そしてこの機会を作ってくださった先生方、ありがとうございました。」
3校の生徒さんから花束を贈っていただきました
「私もヘレンのように力強く生きていきたいです。」
とそれぞれが、その場で生み出した言葉をかけてくれました。
座談会や舞台見学に参加しない生徒さんたちも多くいたので、ヘレン・ケラーとアニー・サリバン役の役者がで生徒さんの送り出しに向かいました。
声をかけてくれた下松高校の生徒さんたちと
終演後には、華陵高校の舞台芸術部の生徒さんたち、下松高校の希望の生徒さんたちとの舞台見学と座談会が行われました。
ガラスや陶器の小道具には割れても大丈夫なように全面にビニールテープを貼っています
ポンプから水が出る仕組みに興味津々な生徒さんたち
舞台見学の時の生徒さんたちはポンプの仕組みや舞台の作り、舞台美術に強い関心を持ちながら、ものに触れている様子でした。
座談会は舞台の作り方についてや、ヘレン・ケラーやアニーの時代背景について、演じる時に大切にしていること、緊張してしまう時はどうしたらいいのか、どんなイメージを持って役に入り込んでいっているのか、どれくらいの稽古期間であったのか、どんな風に繋がって今回自分たちにヘレン・ケラーの舞台を届けてくれたのか、、、
本当にたくさんの質問が投げかけられました。
最後の質問では、ずっとメモを取りながら黙々と座談会に参加していた、華陵高校の男子生徒さんが「演出と俳優同士で、役のイメージや台本の読み方が違った時はぶつかったりもしますか。」という質問をしてくれました。
聞いてみると、「将来、演出家になりたいと思っています。」と部活動の中で一つの舞台に取り組む時の仲間との向き合い方や自分の考え、座談会の時間を楽しみにしていたことを言葉にしてくれ、彼にとって、舞台芸術部での活動が自身の高校生活の中で熱を注いでいる一つの大切な時間なのだということがすごく伝わってきました。
時間が足りないくらいでしたね!
座談会には各校の校長先生や先生方もいて、時間いっぱいにたくさんの言葉を交わすことのできた時間となりました。
最後に、
第1週目のこのブログの更新が遅れてしまいまして、「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」西日本・東日本巡回公演は、今第2週目から第3週目に突入しようとしているところです。
この2週間、私自身、年を重ねていく中で失ってきてるものや感覚、様々なものに対する関心や驚き、一つのことから広がるイメージや想像、自分が思い描くものへの強い願いや欲望を彼らから直接肌で感じ、沸き立つものがある、色濃い出会いの一つ一つでした。
仲間と一緒に観たヘレン・ケラーの公演が、彼らが大人になった時、思い起こされるような高校生活の中の大切な思い出の一つであったなら、と思います。
これまで出会ってきた若い観客たちや先生方の姿を力に、台風も吹き飛ばす勢いでこれからの出会いに向かって行きます。
アニー・サリバン役/高階ひかり