風のBLOG

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2017年『ヘレン・ケラー 〜ひびき合うものたち』春 西日本巡回ツアー第9週目

2017-07-26 20:00:19 | 全国巡回公演
7月17日 プレミアム公演(守口文化センター)
18日 八鹿高校(養父市立八鹿文化会館)
19日 日高高校(日高文化体育館)
20日 志摩高校(伊勢市観光文化会館)


猛暑日が続く中、『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』春の西日本ツアー、いよいよ最終週となりました。
5月下旬から2ヶ月間この公演を続けていますが、一回一回の観客席との関係が面白く、未だ見ぬ可能性がこの舞台にまだまだあるように感じます。

大阪プレミアム公演

2008年より毎年地道に積み重ねてきたプレミアム公演。関西地域の学校の先生方と演劇の場の可能性についての本当の意見を交わせる機会をつくりたいという想いで始めました。当初は少数の方々とスタートした公演ですが回を重ねるごとに人の輪が広がり、今年は大阪の高校で演劇部顧問をされてきた先生方が昨年立ち上げた〈日本学校演劇教育会 関西支部〉との共同開催により、学校の先生方、演劇部員の中高生、障害者施設や支援団体の方々、風を応援してくれる方々、『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』に関心を持たれた方々、この舞台を高校時代に見た卒業生など約300名の方々が足を運んで下さいました。
開演前に舞台裏見学の時間を設ける一方、ロビーでは関西支部の先生方が自作の台本で芝居をして会場を盛り上げてくれました!









関西支部の南村武先生の挨拶を経て公演が始まると、小さな子どもたちの声と中学・高校生の真っ直ぐな視線、全てを暖かく見つめる大人たちの姿がありました。
公演後の座談会では関西支部の吉田美彦先生の司会のもと、渋谷と稲葉が参加し観客席の皆様と演劇の本質に迫る話を交わすことができました。
東日本巡演中の合間を縫って駆けつけてくれた〝ジャンヌ〟メンバーを含めたくさんの人たちに支えられた公演でした。









八鹿高校





先週末に公演をした和田山高校と近隣の地域に今週も公演に訪れました。
八鹿高校は3年前にも『ジャンヌ・ダルク』を上演している学校です。創立120周年の節目の年に『ヘレン・ケラー』の公演を観る意義について校長先生のお話しを受けて開演しました。生徒の皆さんは一人一人が自分の目で見て感じ考えることを楽しんでいるようでした。文化祭で演劇発表や自作のビデオ上映などを行うため、終演後には希望者の生徒さんたちと舞台裏見学、座談会を行いました。





座談会ではアニー・サリバン役の渋谷に熱心に質問する声が聞こえていました。解散後も個人的に残って心の内を話してくれた生徒さんもいたようです。将来のこと、自分にどんな可能性があるのか不安に思ったり、人との関係に悩んだりいつも心の中に溜めているもの。それを露わにした時に受け止める人がいる。劇場での出会いを生きる力にしてほしいと願います。







日高高校



全国でも数少ない看護科と福祉科の学校。この学校で学ぶために寮に住んでいる生徒さんも多いそうです。公演前に、南アフリカから来た英語のノエル先生の離任式がありました。教室でも職員室でも分け隔てなく人に興味を持つ人柄が学校に良い影響を与えていたことが伝わってきました。また生徒さんが劇団紹介をして下さり、台本の作者・松兼功氏についての詳しい話からこの学校ならではの関心の深さを垣間見ることができました。



落ち着いた雰囲気の中で舞台を見て考えてくれた生徒の皆さん。そして生徒代表挨拶の言葉。アニーがヘレンに幸せになって貰いたいと言った時に実習で知り合った障がい者の方のことを考えました。これからの仕事の中で人々にたくさんの喜びを感じてほしいという内容で、言葉を発する生徒会長さんの意志の強さ、輝いた表情に私たちの方が圧倒されました。
終演後の舞台裏見学には150人もの生徒さんが参加してくれました。








志摩高校


志摩高校では芸術鑑賞行事をしばらく行っていなかったため、演劇鑑賞は10年振りになるそうです。学校の近くの会館が工事や日程の都合で使えず、伊勢市まで電車で30分以上かけて学校の皆さんが集まってくれました。なんと!学校が近畿鉄道にかけ合って特別貸切列車が走りました。その名も「演劇鑑賞列車 風号」‼︎





「生徒たちが自分自身を大切にして逞しく生きていってほしい」という想いで『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』の鑑賞行事を企画した先生たち。生徒たちが真近で舞台を観る姿、劇団員と握手をしたり話したりする様子を本当に嬉しそうに見守ってくれました。春の旅千秋楽の公演は先生方一人一人の生徒たちを想う心が原動力となり紡ぎ出した素敵な公演でした。










今回の旅公演で特に印象的だったことは、公演後にお話をした生徒さんから「舞台でセリフも大きな動きもなく立っている時、心の中で何を思っているんだろうと見入ってしまいました。どんな想いで演じているのでしょうか?」という問いかけを度々もらいました。
私たちも客席の皆さんの心の内を聞きたいと願いつつ舞台に立っているのですが、観る人たちもまた人の心の奥にあるものを感じ取ろうとしています。
演劇の場が、非日常の短い時間のなかで初めて会う人たちとも互いに深く関心を持ち合い、本当の姿、本当の言葉で人と出会える場であることを信じて旅をした2ヶ月間でした。


文 : 稲葉礼恵(ヘレン・ケラー役)