モッチョム岳からの下りでさらに娘の歩行速度が遅くなった。足の指先の痛みに加えて足裏のマメが潰れ、痛い痛いと悲鳴をあげながら下り続けた。
日没となり、ヘッドランプを点けて下り続けた。
深夜の午前2時半に登山口に無事下山。すでに暦は変わり、昨日の朝、歩き始めてから19時間ほど歩き続けたことになる。その間にとった休憩は小休止だけで、まとまった休憩は山頂の昼食のみ。さすがに娘は疲労困憊の様子だけど、無事下山できて安堵した穏やかな表情だった。
そして一言、「荒行だった」とポツリ。「あらぎょう」かあ。ごめん。確かに、結果的に「荒行」を病気療養中の娘に強いてしまったなあ。
よく痛みを我慢して弱音も吐かずに歩き続けたなあと僕は感心した。それからずっと娘に付き添って見守るように後ろを歩いてくれた山の友達に感謝だ。
車でテント場に戻る途中、自販機で買って飲んだ冷たい飲み物の美味しかったこと。
深夜のテント場は静まり返っていた。空は満天の星だった。できるだけ物音を立てずに軽い食事をとってから静かに寝た。
目覚めると今日もいいお天気。娘は満身創痍で足を引きずりながら歩いている。さらに痛みは増したようだ。
遅い朝食をとり、温泉でさっぱりしてから屋久杉ランドまでドライブすることにした。
紀元杉まで行って引き返した。
屋久島6日目は静かに暮れた。夕方、キャンプ場の近くにある味徳というお店に3人で食事にでかけた。僕はトビウオの定食をいただいた。
食事の後、店の前で二人と別れ、一足先にハナちゃんの待つキャンプ場に、島特有の甘い風を頬に受けながら、ほろ酔い加減で急いで歩いて戻った。