土曜日の夜、岡山駅前の居酒屋『鳥好』で開かれる山の会の忘年会にでかけた。カミさんや娘や息子夫婦に「飲み過ぎないで」コールとともに見送られて大学病院の病室を出る。賑わいを見せている夜の街を歩いて駅に向かった。
定刻15分前に着くとすでにほとんどの会員が揃っていた。長年一緒に山歩きをしてきた山仲間と近況を語り合い、歓談しながら呑む酒は旨い。あっという間に2時間半が過ぎ、お開きとなった。
バス停からカミさんにメールする。カミさんからすぐに返事が返ってきた。カミさんの調子はよさそうだ。体調が悪い時はメールを打つのも大儀で返事が遅く、文章にも乱れがみられる。メールのレスポンスと文章はカミさんの体調のバロメーターにもなっている。
今年四回目の入院生活も早一ヶ月が経過した。難しい病気と向き合って入院生活を続けているので、精神状態や感情に起伏や変調があっても不思議ではないのに、カミさんは常に安定していて沈着冷静。これまでただの一度も辛いとか悲しいとか言ったことがなく、弱音や泣言を並べることがないことに感心している。感銘を受けていると表現してもいいくらいだ。
これといった趣味を持たないカミさんにとって、余暇を過ごす唯一の楽しみは本を読むことなので、多くの本を通じて精神性が僕の想像を遥かに越える高みに達しているのかもしれない。今の病状を天命と受け止めて希望を失わずに静かに病気と向き合っている。
病室で病臥するカミさんに迎えられ、「ありがとう」の言葉を添えて笑顔で見送られて病室を出る毎日。どちらが病人なのかわからなくなりそうなくらい、カミさんの「ありがとう」に励まされて僕は生きている。ありがとう。
母親の看病のために一週間の特別休暇をとって東京から帰省してくれていた娘を今日の午後空港まで送る。娘にも心からありがとうと言って見送ろう。