東電福島第一原発事故と避難生活中の女性の自殺の因果関係を認めて東電に対して損害賠償を命じる判決が福島地裁で言い渡された。
慣れない土地に避難を強いられた生活が精神的にきついことは容易に想像できるので自死された女性はお気の毒だし、心からご冥福をお祈りする。だけどこの判決には疑問を感じる。天災地変に起因する原発事故と自殺の因果関係を認める今回の判決には理不尽さすら感じる。
避難を強制する施策についてチェルノブイリから日本は学ばなくてはいけないことがまだまだあるようだ。
チェルノブイリ事故から25年目の2011年にロシア政府から公式な報告書が出され、同年、ウクライナ政府からも報告書が出された。その中で避難について重要なことが記述されている。すなわち避難先での住環境や人間関係に適応できないことによる精神的ストレスと生活習慣の変化等による悪影響についてだ。
1. 「1990年代に成立した法律によって、セシウム137が37kBq/m2以上の地域をチェルノブイリ汚染地域としたことが、その後何年にもわたって社会的・経済的、そして精神的な影響を何倍にも大きくした。」
2. 「事故後25年の状況を分析すると、放射能そのものの悪影響より、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限などの他の影響のほうが、遙かに大きな損失をもたらしたことは明らかだ。」
3. 「チェルノブイリ原発事故の主な教訓の一つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されていないことであると今こそ主張すべきである。」
以上の報告に学び、強制避難の基準を緩めて、自己責任で、住み慣れた土地に早く戻してあげるという判断があっていい。寿命が尽きるまでの期間と放射能の影響が出る期間を各自で判断して、特に高齢者は避難先で精神的なストレスを貯めるより自宅に戻って暮らしたいと望むのであれば、望みを叶えてあげる自主避難施策があっていいと思う。ロシア政府の報告書はそういう教訓を与えてくれていると思う。