上級韓国語 - ちょんげぐりの世界

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나다と태어나다 (おもしろ語彙の世界)

2023-12-12 | 言葉の使い方
まずは恒例の練習問題からです。
次の文でよりふさわしい語は(  )内のどれでしょうか。

①우리 첫아이는 1991년 1월 8일에(났다・태어났다).
②이 마을이 내가 (나서・태어나서) 자란 곳이다.
③올해는 모차르트가 (난 ・태어난) 지 250년 되는 해다.

①우리 첫아이는 1991년 1월 8일에 태어났다.
〔私たちの第一子は1991年1月8日に生まれた〕
*第一子が生物としての存在として「生まれた」ことを表すので‘태어나다’が正解です。
②이 마을이 내가 나서 자란 곳이다.
〔この村は私が生まれてから育った場所だ〕
*生物としての存在ではなく,ある場所で育ったという過去の状態を表すので‘나다’が正解です。
③올해는 모차르트가 태어난 지 250년 되는 해다.
〔今年はモーツァルトが生まれてから250年になる年だ〕
*モーツァルトが生まれたことを表すので태어나다が正解です。

このように‘태어나다’は,生物が母親の胎内から出産されることを指します。一方,‘나다’は,ある状態に至ること,またはある存在になることを指します。

韓国語の‘나다’ほど,さまざまな場面で使われる語はありません。
①物理的な意味で「出る」
・모가 나다:角が立つ 
・수염이 나다:ひげが生える
・여드름이 나다:にきびができる
・풀이 나다:草が生える

②事象が起こる
・고장이 나다:故障する
・구멍이 나다:穴ができる[あく]
・길이 나다:道ができる 
 ・불이 나다:火事が起こる
・소리가 나다:音が出る  
・소문이 나다:噂が広まる
・자리가 나다:席が空く  
 ・탈이 나다:災難が起こる
・홍수가 나다:洪水が起こる

③感情が起こる
・화가 나다:怒る  
・욕심이 나다:欲望が起こる
・성(이) 나다:腹が立つ,憤る

④内にある物が外へ出る,湧き出る
・눈물이 나다:涙が出る
・샘물이 나다:泉が湧き出る 
・석유가 나다:石油が湧く
・피가 나다:血が出る 
・혼이 나다:ひどい目にあう
・기운이 나다:元気が出る 
・기억이 나다:思い出す

⑤音や匂いなどが出る
・냄새가 나다:匂いがする
・붉은빛이 나다:赤い光が出る
・소리가 나다:音が出る
・연기가 나다:煙が出る

⑥露出する
・바닥이 나다:底がつく
・티가 나다:目立つ
・신문에 기사가 나다:新聞に記事が出る

⑦出現する,(世に)出る
・신동이 나다:神童が出現する
・큰 인물이 나다:偉人が生まれる
・영웅이 나다:英雄が現われる
・인재가 나다:人材が現われる
・마땅한 혼처가 나다:ふさわしい結婚相手が現われる
・유명한 장군이 난 곳이다.:有名な将軍が出た所だ

⑥(物を)産する,産出する
・사과가 많이 나는 고장:リンゴの産地 
・바다에서 나는 생선:海で獲れる魚
・이 지방에서는 석탄이 많이 난다.:この地方では石炭が多く産出される
・석유 한 방울도 나지 않는다.:石油1滴も出ない

⑦そのほか
・해가 나다:太陽が出る  
・돈이 나다:お金が手に入る

「나다」は,日本語の「なる」や「生じる」に相当する動詞で,その基本的な意味は「発生する」です。‘나다’は‘생기다’に最も近い言葉です。例えば“자리가 났다”は“자기가 생겼다”に,“도로가 났다”は“도로가 생겼다”に置き換えても意味にほとんど差はありません。

●‘나다’と‘태어나다’の違い
・나는 부산에서 났다 (私は釜山で生まれた)
・나는 부산에서 태어났다 (私は釜山で生まれた)

‘나다’と‘태어나다’は,どちらも「出産によって世に出る」という意味ですが,ニュアンスに若干の違いがあります。
‘나다’は,出産という事件を事実的・客観的・価値中立的に指す言葉で,特定の人物や出来事に特別な意味づけをすることはありません。
次に‘태어나다’の深い意味について見てみましょう。‘-나다’の前に付いた‘태어-’は‘타다’から来た言葉です。‘타다’には①燃える,②乗る,③液体に別の液体または粉末を加える,④給与・賞などをもらう,などという意味がありますが,ここでは④の意味の‘타다’です。

“용돈을 타다”,“개근상을 타다”,“경품을 타다” というように,‘타다’は,誰かから何かをもらうときに使う言葉です。‘받다’という言葉があるのに,わざわざ‘타다’と言うのは,‘타다’は,とても良いものをもらう時に使われるのです。“타고난 재주”「才能・体力・運命などを授かる」ということばもあります。

よって,‘태어나다’は
・아이가 태어나다 (赤ちゃんが生まれる)
・나라가 태어나다 (国家が誕生する)
・새로운 시대가 태어나다 (新しい時代が始まる)
のように,単に「生まれる」という意味だけでなく,その誕生に「神聖な意味」が込められている言葉です。

さて,前に挙げた“나는 부산에서 났다”と“나는 부산에서 태어났다”の間にはどのような違いがあるのでしょうか。 しいて翻訳すれば“나는 부산에서 났다”は「私は釜山で獲れた」というニュアンスで,“나는 부산에서 태어났다”は「私は釜山で母親の胎内から生まれた」という意味になりまが,日常会話では,どちらの単語を使っても問題ありません。

●まとめ
나다:出産という事件を事実的・客観的・価値中立的に指す
태어나다:出産を神聖な出来事として見る意識が込められている

●おまけ 뽀록나다とは?
‘나다’つながりで,おまけの一語をご紹介します。
よく会話で耳にする言葉で,辞書には載っていない言葉に‘뽀록나다’があります。この言葉は,一見すると‘뽀록’という名詞と‘나다’という動詞が結合した固有語のように見えます。しかし,‘뽀록’は日本語の「ボロ(襤褸)」から来ています。「ボロ」は,基本的には‘넝마, 누더기’を意味しますが,派生的に「粗雑な所,欠点」の意味としても使われます。そのため,‘뽀록나다’というと「欠点を露呈させる,失敗する」の意味になります。ただしこれは俗語なので,国立国語院では‘드러나다’,‘들통나다’と言い換えています。


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