「だっこして。そして…ちゅーして」
思いもかけない先輩の言葉に、僕はどう答えたら正解なのだろう?
笑いながら、やめてくださいよと理性で応じるのか、それとも本能に身を任せてキスをすればいいのか。
そうこうしている間に、先輩の、ちょっぴりお酒の匂いがする、艶やかな唇が迫って来る。
僕の頭の中で理性と本能とが乱闘し――そして本能が勝った。
「だっこして。そして…ちゅーして」
思いもかけない先輩の言葉に、僕はどう答えたら正解なのだろう?
笑いながら、やめてくださいよと理性で応じるのか、それとも本能に身を任せてキスをすればいいのか。
そうこうしている間に、先輩の、ちょっぴりお酒の匂いがする、艶やかな唇が迫って来る。
僕の頭の中で理性と本能とが乱闘し――そして本能が勝った。
「その…欲しいなぁ。キミのア・レ♥」
顔を赤らめながらも、物欲しそうなその視線は下へ下へとさがっていく。
は?アレってもしかして…な、何言ってるんだよ!
オレは一応確認のため、硬いジーンズの中で窮屈そうにしているイチモツを覗き込む。すると彼女はそうそう!と言わんばかりに、首を縦にぶんぶんと振った。
――はぁ
清楚だと勝手に思っていた、この子がまさか”肉食系女子“だったなんて――どうしよう?ここは彼女の部屋、あまりにもアウェイすぎる。頭の中でいろんな事がぐるぐると駆け巡る中、彼女が「ね♥」とひと言耳元で囁いた。
蔑んだ目で俺を見ている。小娘だと侮ったのがそもそもの間違いだった。
この事が周りに知れ渡れば、社会的地位や長年育んできた家庭生活――
様々なものを失う事になるが構うものか。ただ今は彼女の愛が欲しい。そのためなら俺の全てを捨てたっていい。
「ねえ、おじさん?――」
そう言って赤いペディキュアが塗られた、この可愛い足をすっと目の前に差し出す。
何という女王様気取り。だがこの俺は彼女に平伏した奴隷のような存在だ。
汗がしみ込んだ、彼女の足裏の臭いに引き寄せられるように、俺は何の躊躇もなく顔を近づけた――
サン・ガール (Sun Girl)
初出:『サン・ガール』第1号 (1948年8月)
今やディズニーの傘下となってしまった、アメコミ2大巨頭のひとつマーベル社。スパイダーマンやアイアンマンほか数多くのスーパーヒーローを世へ輩出している事で知られていますが、創立最初からこの屋号ではありませんでした。1939年に創立されたタイムリー・パブリケーションズが発行したコミック誌『マーベル・コミックス』が現在知られるマーベルの (1961年より) 由来となっています。現在主によく知られるのは《マーベル》になった後のヒーローですが、コミック黄金時代のタイムリー時代、次の社名であるアトラス時代のヒーローは、リバイバルされたサブマリナーやキャプテン・アメリカを除けばほとんど知られておらず、長いコミック史の闇に隠れてしまっています。
そんなタイムリー時代のスーパーヒーローであるサン・ガールは、第二次大戦後の1948年に登場し、犯罪者やマッドサイエンティストらと戦っていましたが、主演誌が3号刊行されただけで消滅してしまいます。後にマーベル・ユニバースでもちょいちょい出てきたりしましたが、彼女が主役に返り咲くことは二度とありませんでした (2013年に同名の女性ヒーローが登場しますが)。掲載誌が3号で終わってしまっているため、コミックの中では彼女の個人的なキャラクターが示されず、メアリー・ミッチェルという本名が出たのはずっと後の事で、彼女は誰にもプライベートを見せることなく、腕にはめた太陽光線照射器と高い身体能力で、この世の悪と戦う姿を延々と紙の中で見せているだけでした。