HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

大梵林(ボリウッド)映画祭 ~おまけ2~ 永遠のボリウッド女神《ミューズ》:パルヴィーン・バビ

2008年11月25日 | インド映画
 今回は、ヒンディー映画史の中で永遠の輝きを放つ一人の女優、いや《女神》を紹介したいと思う。その麗しき《女神》の名はパルヴィーン・バビという…

                

 パルヴィーン・バビ(Parveen Babi: April 4, 1949 - January 20, 2005 )

 インド・アルメダバード出身。1970年に『Charitra』という作品でデビュー。それまで丸っこく、男性に順応な可愛いこちゃんタイプのヒロインが多かった中、欧米型の色っぽく、そして自立した女性像を演じ、インド映画改変期の波に乗り若者のハートを釘付けにした。そして彼女は次々とビックバジェット(大予算)映画のヒロインに起用され大女優への道を突き進む。しかし固定化されたイメージを脱却することが出来ず86年の『Abinash』を最後にスクリーンを去る。その後は酒やドラッグに溺れ、数々のスキャンダルを引き起こす。その後は母親と共にムンバイの高級アパートで暮らしていたが、2002年に母親が亡くなるとますます世間と距離を置くようになり、2005年に糖尿病の合併症により一人寂しくこの世を去る…

   私が最初に彼女の姿を観たのが『アマル・アクバル・アンソニー』で、アミターブ・バッチャンの相手役だった。あまり土着的なイメージはなく、むしろサリーよりもトップモードの洋服が良く似合う都会的な題材の方が彼女をより魅力的にさせた。個人的にはインド的ではなくどちらかと言えば欧米の大女優の雰囲気があり、英語も十分堪能な為(晩年アメリカに一時期住んでいた時にTV番組に出演した際の映像をYOUTUBEで観賞できる)インド国外、欧米圏の映画に進出しても成功していたのではないか?インド国内だけの活躍が真に惜しまれる逸材である。

 晩年は極度のノイローゼに悩まされ、紛らわせる為に酒とドラッグに溺れ、最後は孤独死という、絵に描いたような波乱万丈な人生を送った彼女の一生こそまさに《映画》そのものではないだろうか?

 ●HIMAGINE電影房で紹介したパルヴィーン・バビ出演作品

 『アマル・アクバル・アンソニー』 
 『SHAAN』
 『DO AUR DO PAANCH』

        

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大梵林(ボリウッド)映画祭~第五回~ 『AWARA PAGAL DEEWANA』

2008年11月04日 | インド映画

 思い出した頃に書き綴る毎度おなじみ(か?)大梵林(ボリウッド)映画祭。今回は今世紀に入ってからの比較的新しめの作品で、アンチローカル映画ファンの間ではちょいと有名なアクション・コメディ作『AWARA PAGAL DEEWANA』(02)を紹介。


 マフィアのドンがある日突然心臓発作で死んでしまう。その彼はアメリカの銀行に10億ルピー相当のダイヤを遺産として残していた。遺産騒動をきっかけに互いの事をよろしく思っていないドンの息子ヴィクラーントと彼の娘婿グルは対立し、血で血を洗う抗争が始まった。それと同時にヴィクラーントの陰謀により国際指名手配されたグルの懸賞金を狙って平凡なインド系アメリカ人・アンモールも動き出し、事態はより大きなものになっていく…

        

 以前紹介した『PURAB AUR PACHHIM』では西洋化に苦悩するインド人を描いていたが、30年近く経つ今作では悩むどころかアメリカ在住の2世インド系アメリカ人はもちろん、インドの都市部に住む人たちまでもがごく自然に欧米スタイルの生活を営んでいる姿が当たり前のように描かれていた

 作品は基本的にコメディで、ドロドロした遺産騒動とは別に在米インド系アメリカ人のアンモールが隣に越してきた国際指名手配犯のグルによって、嫁にいびられながらも平凡な生活を送っていたのが次第に抗争に巻き込まれていく様が悲しくて、笑える。そしてグルの妻で遺産相続権利者であるプリーティに恋をしてしまったり、反対にアンモールの女性秘書がグルに惚れてしまったりとラブ・コメディ部分ももちろんありインド娯楽映画の定石は外さない。

        

 肝心の(アクション映画好きだからね)アクションシーンは物凄く出来が良く、銃器アクションあり、カー&バイクアクションあり、そして格闘アクションありと盛りだくさんだ。特に格闘アクションは『マトリックス』に代表する香港経由ハリウッド直輸入的アクションとはいえ、なかなか工夫がされていて香港アクション映画好きにも十分堪能してもらえると思う。

 というのも、この映画のアクション指導はコアなクンフー映画ファンにはおなじみのフィリップ・コー(高飛)が担当していたのだ(無記名だがディオン・ラム(林迪安)も参加との事)。最初に登場する中華マフィアの放った刺客たちのアクションがやけにクンフー映画的だったのはその為だったのか!と一人納得した次第だ。
 
 香港の武術指導家たち、今世紀に入って至る所で仕事してるんですね。大御所のユエン・ウーピンやチン・シウトンはもちろん、フィリップ・コクやトン・ワイ等といったマニアックな面子までもが海外作品でその名を連ねている事実は、長年香港クンフー映画を観続けた者たちにとってこんなうれしい事はないだろう。

 ただ、高飛はこれ以前よりフィリピン映画界で活躍しており、現地で活躍する大島由加里の作品の監督や製作なども手がけているし、当ブログでも以前紹介したSFアクション大作SUPER NOYPI』(06)でもアクション指導を受け持ったりとフィリピン映画界には無くてはならない存在となっている。果たしてこの映画の製作者はどういう経路でこの人選をしたんだろう?と気にはなるところだ。ディオンは多分『マトリックス』に参加していたからという気はするが。

       

 なぜアンチ・ローカル映画ファンにこの作品が知られているかというと、劇中に『マトリックス』のコピー場面があるからなのだ。

 オリジナルではネオとトリニティがビル内で派手な銃撃アクションをするシーンをこの作品ではすべて(トリニティの壁歩きも)一人の俳優で行っていて、そのシーンだけがクローズアップされて紹介されているのである。たしかにそのまんまコピーは許される事ではないにしろ、その場面が存在するからといって作品全体を低く見てしまっていいものだろうか?それに評価するなら、まず全編通して観るべきからではなかろうか?それではあまりにもこの作品が可哀想である。  

        
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大梵林(ボリウッド)映画祭~第四回~ 『DO AUR DO PAANCH』

2008年10月24日 | インド映画

 何だかんだ言ったって今年も残すところあと二ヶ月…あっ、あと一ヶ月ちょいか。何してるんでしょうね、私。

 終着点の見えぬままダラダラと開催している大梵林(ボリウッド)映画祭も四回目。今回はアミターブ・バッチャン全盛時の肩のこらないオールスター・アクション・コメディ作『DO AUR DO PAANCH(2+2=5)』(80)を紹介。


 大泥棒ビジャイとスニールは犬猿の仲。双方とも腕は超一流なのだが、同じ犯行現場を選んだ為に警察に御用となり仲良く(?)同じ刑務所で厄介となる。

 出所後ビジャイは仕事を依頼される。それは大富豪の一人息子を富豪の血縁である暗黒街のボスに引き渡すことだった。早速ビジャイはその息子の通う全寮制学校へ体育教師として赴任することになるが、物事は簡単にはいかないもので同時期にスニールも誘拐目的で音楽教師としてこの学校へ潜り込んでいたのだ。

 相手を出し抜くためにビジャイとスニールは、あの手この手を使いまるで児戯のような化かし合いを繰り返すが、新しく赴任してきた女教師たちに恋するようになると次第に自分たちのしてきた事に嫌気が差してきた。ビジャイとスニールは一致団結し暗黒街のボスから息子を守ることにするが、痺れを切らしたボスの魔の手がすぐそこまで来ていた。果たして二人(と女教師二人)は息子を守ることが出来るだろうか…?

            

 主役であるアミターブ・バッチャンシャシ・カプールの華麗なアクションや笑いあり、パルヴィーン・バビヘーマ・マリーニとのラブロマンスあり、そして暗黒街のボスたちが絡むバイオレンスシーンなどが見事に調和したマサラ・ムービーだ。全寮制学校が舞台ということでファミリー映画な面も見受けられて正に全方向対応映画といってもいい。とはいってもボスの手下が生徒たちの給食に毒を盛って子供たちがバタバタと倒れていくシーンがあるのでどーかなぁ?

            

 この時期のバッチャンはホント「脂が乗っている」という表現が相応しいぐらい肩に力が入ってない余裕な演技を見せている。出演する映画がすべてヒットしていることを考えれば当然といえば当然なのだが。つまり眼中に敵は無し、という事だ。事実当時の人気者はだいたいバッチャンと共演しており(オールスター映画だからね)、ピンで自身の存在を脅かす存在というものは皆無だったのではなかろうか?

            

 大衆の欲する夢をスクリーン上で見せられる存在。これぞ本当のスーパースターだと思う。果たして今日の日本に存在するだろうか?
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大梵林(ボリウッド)映画祭 ~おまけ~ 『CASH』 OP

2008年09月25日 | インド映画
 今回は作品紹介でなく、ここ最近のボリウッド映画のお気に入り動画を観ていただこう。

 

 これは2007年に製作された『CASH』という作品で、南アフリカを舞台にダイヤモンドを巡って繰り広げられる泥棒アクションだ。近年のボリウッド映画は海外にロケ地を求める事が多く、日本でも公開されたSRカーンの『DONドン/過去を消された男』や当ブログでも紹介した『Krrish』でも行われていた。インド以外のインド移民がいるマーケット(『ドン』はマレーシア、『Krrish』はシンガポールで撮影)で売りやすくしてるんでしょうかね?ということは南アフリカにもインド系住民がいるってことだよね。

 まぁ、観てくださいよ。かなりハリウッド映画調で(雰囲気は60年代スパイ活劇っぽいかな?)洗練されているでしょ。映画のOPでありながらPVを観ているような感じ。これを欧米文化に毒されたと見るかインド映画はここまで進んでいたのかと見るかは人それぞれだが、少なくとも欧米っぽい映像を目指して撮っている日本映画よりかはレベル高いでしょ?
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大梵林(ボリウッド)映画祭~第三回~ 『PURAB AUR PACHHIM』

2008年09月24日 | インド映画

 何とか懲りずに続いている大梵林映画祭。第三回はポップでしかもちょっと真面目な内容の作品『PURAB AUR PACHHIM(東と西)』(71)です。


 主人公・バラート(Bharat)は熱心なヒンドゥー教徒。その彼がイギリスの大学へ留学することになった。イギリスで財を成した叔父の所に下宿させてもらうことになり、彼は叔父の一人娘・プリティ(Prithi)と知り合う。しかし、彼女を含めこの地に住むインド系市民たちは西洋主義にかぶれインド人としての誇りやアイデンテティーを失っていた。バラートは環境の違いに戸惑いながらもプリティに心惹かれ、彼女もインド人としてのアイデンテティーを失わず輝いているブハートを愛し始める…

 スチール写真の金髪美女(インド人・劇中のプリティの事)を見た瞬間、「これは珍品に違いない!」と思い、早速鑑賞した。
 インドの独立運動が導入部分で描かれていてそのシーンだけモノクロ画面なので最初はすごい重厚で、クソ真面目な映画なのかと思っていたのだが、インド独立後数十年たった現代(71年当時)に場面が変わるととたんにカラーになり、いきなり雰囲気が明るくなる。
 この作品の売りのひとつは英国ロケで、70年代初頭のイギリスの風俗が垣間見ることができる。サイケデリックな衣装やボディ・ペインティングなど当時を知っている物なら懐かしさでいっぱいだろう。ま、あくまでも主人公の持つインドらしさの“対”としての俗物的なものですが。たぶん年配の方は
「なんじゃ、汚らわしい」
と思い、若者たちは
「カッコいいぜ、ロックだぜ」
と思って観てたんじゃないでしょうか?

              
              

 もうひとつの売りは主人公の恋人・プリティ役を演じた女優サイラ・バヌ(Saira Banu)で、ブロンドヘアーにミニスカートを中心とした70年代ファッションといういでたちは現在の目で見ても刺激が強すぎます!最初彼女を見たときは○尻○リ○かと思った。わがままだし… (あくまでもイメージですよ、イ・メ・ー・ジ!!)
 そんな西洋かぶれの彼女(役柄ですよ?)も主人公の誘いでインドへ来たときから性格が徐々に変わり始め、次第に身も心も“正しい”インド人女性へと変貌していく姿は微笑ましく可愛らしい。インドに来た当初に壁に貼ってあるヒンドゥー教の神様のポスターを見てビビッちゃっている場面がカワイイんだな、これが。

 もっともっとこのような珍品インド映画を観たいぞと真にそう思う。

            
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大梵林(ボリウッド)映画祭 ~第二回~ 『ROTI KAPDA AUR MAKAAN』

2008年09月12日 | インド映画
 夏休み特別企画として勝手に打ち上げた大梵林映画祭だが、家庭の事情でなかなか更新できず九月に入ってしまいましたが、ちょっとの間はこのまま紹介していこうかな?と思っている次第であります。是非紹介したいインド以外の映画があれば差し変わりますが。ともあれ暫しのお付き合いを…

 第二回は『ROTI KAPDA AUR MAKAAN(衣食住)』(74)です。 
          
               

 主人公は大学を卒業したインテリであるが、高い地位の職業に就けず定年後リタイヤした父と兄弟たちを養うため収入の低い歌手として働いているが、プライドの高い主人公はそんな現状に満足せず悶々とした日々を送っていた。そしてそんな彼に嫌気が差したのか一時は結婚まで誓い合った恋人も青年実業家に求婚され彼の元へと走っていく始末。
 不幸の連鎖はこれだけに留まらず、せっかく手に入れた建設工事の現場監督の仕事も理不尽な理由で解雇され、心臓に問題のあった父も心労で死んでしまう。そんなある日、とある人物から持ちかけられた危険な仕事の話に報酬金額の多さに乗ってしまう。しかし仕事は成功するものの組織からは報酬金額を払ってもらえず、警察からは追われてしまう。そして追跡劇の途中、彼の身をかばってかつての恋人が命を落としてしまう。怒りに燃えた主人公は仲間たちと組織との対決に向かうのだった…

              

 暗い、重い。何度観るのやめようかと思ったほどに。それをギリギリ持ちこたえさせたのは主人公のインテリ兄ちゃんではなく、弟役のアミターブ・バッチャンの若々しさだった。家族のために犯罪を犯し、償うために自ら軍隊に入り、(たぶん)パキスタンとの戦闘中に銃弾が元で右腕を失い、それでいて犯罪に巻き込まれた兄貴を助けるというこれ以上ない“ええ役”である。
 その”片腕”バッチャン、ラストの大立ち回りに失った腕もモロともせずバイクを疾走させ悪漢たちを蹴散らすシーンがあり、これを観ただけでも十分モトは取れたかな?と一人納得した次第。それまでが重く悲しい展開だったばかりに。

              
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大梵林(ボリウッド)映画祭 ~第一回~ 『DISCO DANCER』

2008年08月06日 | インド映画
 ようやく開催されましたHIMAGINE電影房が送る夏の集中連載企画、大梵林(ボリウッド)映画祭!記念すべき第一回目は『DISCO DANCER』(83)です。

 幼い頃からストリート・ミュージシャンの父親に付いて音楽に親しんできたジミーは、ある日横暴なスター歌手に見切りをつけた有能なマネージャーにスカウトされる。彼の手腕でジミーはスターへの道を駆け上っていくが、落ちぶれた元スター歌手のパトロンである芸能事務所社長はあの手この手を使い、ジミーを肉体的・精神的に追い詰め、ついには両親をも策略により失ってしまう。怒りに燃えたジミーは正義の鉄槌を打つ為社長の邸宅に単身で殴り込みに向かう…

               

 てっきりタイトルがDISCO DANCERなので、『サタデーナイト・フィーバー』みたいなダンスものかと想像していたらディスコダンスしながら唄う歌手の話でビックリした。
 しかも普通の芸能界サクセスストーリーじゃなく、主人公をステージに立たせまいと悪徳社長がチンピラたちを雇って彼をフクロにして脚を折ったり、ギターに高圧電流を流して、それを持った主人公の母親が感電死してしまい彼はギター恐怖症になってしまったり、挙句の果てには銃器を持ったチンピラが立ち直りかけている主人公のステージに乱入してブッ放つという荒業まで披露してくれたりと、これって本当に芸能界ものか?と目を疑いたくなる場面が目白押しだ。まぁ、こういうムチャ振りがゲテモノ好きのハートをくすぐるんですが… 

               
                
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大梵林(ボリウッド)映画祭 ~序章~『Om Shanti Om』

2008年07月24日 | インド映画

 未だ「インド映画は泥臭い」
「ハリウッドや日本と比べ映画後進国」
だと思っている一般映画ファンの固定概念を覆そうと密かに思っているHIMAGINE電影房が送る夏の一大イベント(あくまでもモニター上ですが)《大梵林映画祭》!!あっ、梵林 っていうのはねハリウッドが漢字表記で聖林と書かれるように(実際HOLLYWOODは柊の木という意味らしいのだが)、ボリウッドを勝手に漢字で当て字にしたものなのだ、全然一般的ではないが。


 この集中連載では主に70~80年代の《古き良き》ボリウッド製娯楽映画を紹介しようと思っているのだが、今回はわざわざ《序章》と銘打って2007年に製作された話題作『Om Shanti Om』を扱いたいと思う。何故か?それはこの作品の舞台がヒンディー映画黄金時代の70年代だったからだ。

 1977年のヒンディー映画界。一介のジュニア・アーティスト(エキストラ)のオーム・プラカーシュ(演:シャールク・カーン)は明日のスーパースターを目指して撮影所に足を運ぶ毎日。そんな彼の心の恋人はスター女優のシャンティー。巨大ボードビルに描かれた彼女を前に一人芝居を演じては悦に浸っていた。

               

 そんなある日、シャンティーが出演する作品にエキストラで参加したオームは撮影中の事故で炎に囲まれてしまった彼女を命がけで助けたことから二人の関係は急接近していくのだが、実は彼女は大物プロデューサー・ムケーシュと極秘結婚しており彼の子まで身ごもっていたのだ。ムケーシュは大手スポンサーの娘との結婚話も進行中でありシャンティーの存在を疎ましく感じた彼は深夜、シャンティーを映画セットに招き火を放って彼女を殺すことに決めた。

              

 燃えさかるスタジオ、シャンティーの絶望的な悲鳴。そこにちょうど居合わせたオームは彼女を救う為単身炎の中に飛び込むのだが、願いは叶わず大爆音とともにオームは撮影所の外まで吹き飛ばされ、ちょうど通りがかった映画スター・カプールの車に跳ねられてしまう。大急ぎで運ばれた大病院の集中治療室での治療の甲斐もなくオームは息絶えてしまうが、別の病室ではカプールの妻がちょうど新しい生命を授かったところであった…

              

 それから30年後、カプール家の一人息子として生を受け今やスター街道驀進中のオーム・カプールはあの日同じ病院で死んだ同名のオームとそっくりの顔となっていた。本日の撮影はクライマックスのダンス・シーン、お抱えの美人ダンサーズと共にノリノリで撮影していたのだが、特殊効果の炎が彼の顔をかすめた時、何か得も知れぬ感覚が体を走った。

               

 あれは一体なんだったのだろう?不思議な感覚に突き動かされるかのようにオームはあの大惨事のあった古い映画スタジオに足を運んでいた。そしてあの日シャンティーが殺されたセット跡にくると前世の記憶が一気に蘇ってきた。そう、オーム・カプールは同時刻にこの世を去ったオーム・プラカーシュの生まれ変わりだったのだ。そんなある日、ハリウッドで映画制作を行ったりして今や大物プロデューサーとなっていたムケーシュが30年ぶりにインドに帰ってくるというニュースが飛び込んできた。オームはあの日の復讐とシャンティーの弔い合戦のために行動に出た…

               


 現在ではハリウッド調の大作や、ミュージカル・シーンなしの作品、1ジャンルの作品も頻繁に製作されているヒンディー映画。私自身もここ昨今の欧米並みに洗練されたテイストの作品を追っかけていたが、
やはりインド映画はこうでなくっちゃ!
と再認識した次第だ。3時間の夢を見る為に庶民は汗水流して働き、わずかな収入を映画のチケットに換えているんだもの、いろいろ見せ場があったほうが楽しいじゃない?恋愛あり、感動あり、ダンスあり、アクションありとこの作品もインド娯楽映画の定石を踏まえていて夢見心地のまま上映時間はあっという間に過ぎていく。これぞ娯楽映画の醍醐味である。

 私自身インド映画は見ている割にはあまり詳しくないのだが、この作品には70~80年代のヒンディー映画のオマージュやそれを元にしたクスグリが入っているとの事。わかる人が観れば「あぁ~!」と思うらしいのだが、残念ながら全然判らんかった。『Sholay』のボードビルがあった所ぐらいかなぁ?判ったのは。

 監督であるファラー・カーンはこれが劇場第2作目。彼女(なんと女性だったのだ!)は以前は映画のコレオグラファーをしていたそうで、なるほどダンスシーンがとても美しく、時にはカッコよく撮られている。
 インド映画界におけるコレオグラファーの地位はとても高く、ダンスシーン全体(ダンス自体はもちろん、カット割や進行など)の責任を受け持つのだそうだ。香港映画でいうところの《武術指導》とよく似ている。それだからこそコアなファンがクンフー映画を観るときにユエン・ウーピンやチン・シウトンといった名前で映画を選ぶようにインドではコレオグラファーの名で映画を選ぶことがあるそうだ。

 ヒンディー映画だけではなく、世の中の《映画》という存在を愛している人たちであればこの『Om Shanti Om』、絶対観てほしい一作である。ちなみにこのタイトルの意味は「幸せでありますように」との事である。
えぇ、十分に幸福感を味あわさせて頂きましたとも!!

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予告 大ボリウッド映画際(仮)

2008年07月13日 | インド映画
 救済中古ビデオ紹介も終わらぬうちに次回予告っ!
ここ一ヶ月、何年かぶりにインド映画熱が襲い掛かってきまして、しかも今回は70~80年代モノばかりを狂ったように観ております。ここまでくるとどうかしちゃってます、こりゃ。

 というわけで(訳わかんないでしょ?)8月頃か早くて7月後半には古いヒンディー映画を中心とした、仮タイトル『大ボリウッド映画際』をやりたいと思っています。…途中で挫折するかもしれんが。









 動画はボリウッドのマスターピース『Sholay』(75)と、最近製作されたリメイク作(といわれている)『Ramgopal Varma Ki AAG』(08)の同じホーリー祭りのミュージカル場面。何で技術もアップしてるはずのリメイク作がこんなにスケール小さくて、オリジナルのほうが広々としてるんだろう?オリジナルが70mmフィルムだからとかの問題だけじゃないような気がするんだけど?
 もちろん曲も踊りも断然オリジナルが一番だよね。 
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インド映画の宝石箱やぁ~(by彦磨呂) 『SHAAN』

2008年01月06日 | インド映画

 長かった正月休みも本日で最後。う~ん、明日が来るのがイヤな気もするがそういうわけにもいくまい。そういう時は思いっきり派手な映画でも観て気を紛らわそう。うん、それがいい!

 今回はアミターブ・バッチャンの傑作のひとつ『SHAAN』(80)を紹介。

  70年代後半~80年代前半のインド映画界において一つのトレンドだったのが、バッチャンをはじめ多数の主演級俳優が一堂に介する《オールスター映画》だった。内容はハリウッド流のド派手アクションあり、恋愛あり、笑いありと庶民にとってこれ以上無い“観る”ご馳走で、私自身もこの時期のインド映画(ひいてはヒンディー映画)が大好きだ。 しかし、俳優たちのギャラの高騰や乱作の影響で次第に飽きられ始めてしまうのだった。美味しいものはたまに食べるから美味しいのであって、毎日食べてりゃそりゃ飽きるって。

 それで『SHAAN』の内容はというと、バッチャンとシャシ・カプールの詐欺師コンビがインド征服を狙うシャカール率いる犯罪集団に兄を殺されてしまい、同じく妹を殺されたシャトルグン・シンハーと手を組み、見事仇を討つというこれ以上無い簡単なもの。ま、映画自体はもっといろいろ山あり谷ありですがね。

           

 バッチャン&カプールが劇中熱を上げるパルヴィーン・バービー、ビンディア・ゴッサミという女優さんがとてもよく、色香を振りまいて彼らに接近して騙したかと思えば、一緒になって詐欺行為をしたりしてとっても楽しい。
 彼&彼女等の人もうらやむラブラブ模様がちょうど激しいアクションの間に挟みこまれており、いわば箸休め的な感じ。こういった構成は上手いなぁ。 最後の秘密基地内のバトルなんて『007』(R・ムーアの方)シリーズを彷彿させ、見せ場の大予算によるセット&ミニチュア破壊シーンはこの当時の世界水準と照らし合わせても全く引けを取ってない。いやぁ~すごい映画だわ、こりゃ。

             
            
             
           

 実はYOUTUBEで拾ったものを自分でDVD化して今回観たんだけど、音と画が全く合ってなくて酷いの何の。きちんとシンクロしたのがインターミッション(休憩)のちょっと前。正規のDVD買おうかな?販売してたらだけど…

               
                 ●いくらなんでもヤリすぎじゃ… 
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