

人は誰しも、諍いや争いなどのトラブルを嫌うのではないでしょうか。
そのトラブルの多くは、ちょっとした言動が原因であったり、それが契機となって人間関係がこじれたりしているようです。
かねてより、【心 de 経営】ということを基本に、永年コンサルティングをして参りました。「de」は、フランス語の前置詞で、英語にしますと「of」に近い意味合いであり用法であると認識しています。
「de」を、英語の「of」の意味で用いますと「心 of 経営」、すなわち「経営”の”心」となります。「de」を、そのまま、日本語の「で」に置き換えますと「心で経営」となります。
ここでは、後者の「心で経営」に重点をおいて、経営に限らず、人間関係における「心づかいのあり方」を、平素の体験から感じるがままにを徒然に記述してまいります。それにしても、他人に優しくするには、自分に厳しくなければならないことを痛感しています。
物事や人の心には多面性があります。お届けするブログが正論であるか否かは、皆様のご判断にお任せしますが、参考にして下さいますと幸いです。

■3 あたり前のことをあたり前にできるようにする
近年、経営コンサルタントの先生が「あたり前のことをあたり前にできるようにする」ということをおっしゃるようになり、それがマスコミなどでも、あたり前のように言われるようになりました。
40年余前に、私が経営コンサルタントとして独立起業したときに、「あたり前のことがあたり前にできる企業創り」を目指していると話をすると、「その様なことにお金を払う必要があるのか」という反応が一般的でした。
あたり前のことを教えてもらうために、経営コンサルタントに高額な顧問料を支払うつもりはないというのです。
「営業は足で稼ぐ」という、古い営業方法は、今日、馬鹿にされます。しかし、自社の商品・サービスにピンポイントなニーズを持った見込み客に対して、適切なアプローチを繰り返すことにより、受注に結び付けられるというのは、昨今のマーケティングでも形を変えて生き残っています。
効果ある手法は、時代が変化をしても、時代に即した形にカスタマイズして行けば、業績も改善するのです。
経営コンサルタントとして、走りたての若造であった私にとっては、「あたり前のことがあたり前にできる企業は成長する」ということは信念でもありました。
その表現を改めたり、プレゼンテーションのやり方を変えたりして、その信念を貫いて40余年、よくもこれだけでやってこられたものだと、我ながら感心します。
ベテラン営業パーソンの多くが、伸び悩んでいることを目の当たりにしてきました。彼らは、自分の営業スタイルに固執し、その成功体験から、その観念から脱することができないでいるのです。
上司も、適切なアドバイスをすることができなかったり、相手がベテランだけに躊躇したりするので、ベテランほど業績が好ましくないままなのです。
足で稼ぐというあたり前のことを、それとなくアドバイスできるのが経営コンサルタントなのです。
では、なぜ、ベテランは、業績が良くならないのに、自分の営業スタイルを変えようとしないのでしょうか。
私は、吉田兼好の徒然草に出て来る「高名の木登り」の話を良くします。
高名の木登りが、若者に木の登り方を指導するときに、若者が登り始める前も、登り始めてからも何も言いません。登りきって、降り始めても、それでも何もアドバイスをしません。あとわずかで地上に降りられるところに来たとき、「気をつけろ」とひと言、言ったそうです。
あとわずかというときには、気が緩みがちなので、それをいましめたのです。慣れたこととも同じで、いつもと同じようにできると思って、気軽にやっているとミスをします。
前述のベテラン営業パーソンも、自分の成功体験から、このお客様は、必ず受注にたどり着けるという自信が、そのお客様の購買を決断させる様な「決め言葉」のパンチが弱くなってしまっているのです。足で稼ぐという、あたり前のこともおろそかになりがちです。
心づかいができる人というのは、常に相手に対して注意を払っていますので、ちょっとした言葉や態度の端々から、相手の気持ちの変化を読み取れるのです。平素から相手の言動に対する注意力を忘れずに、相手の一挙手一投足にまで集中することを忘れるとほころびが出てしまいます。
当たり前なこと、簡単なことというのは、換言しますと「基本的なこと」なのです。基本を軽視しては、失敗することに繋がりかねないと自分を戒めるべきではないでしょうか。
(ドアノブ)
