コンサルタントバンク コンサルタント(プロ・希望者)+ 士業の異業種交流会

コンサルタントバンクは、コンサルタントや士業の先生方の異業種交流会で、無料で登録できる組織です。関連情報をお届けします。

【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 10 かほりに電話をしようか・・・

2024-12-27 12:21:00 | 【小説風 傘寿】老いぼれコンサルタントの日記

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 10 かほりに電話をしようか・・・ 

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。慣れないニューヨークを中心としたアメリカでのビジネスですが、時として折れそうになってしまいます。そのようなときに、若い竹根の支えとなってくれるのが、本社で竹根をフォローしてくれるかほりで、実務支援だけではなく、存在の有り難さに感謝を竹根です。

◆6章 苦悩
 商社マンは、商品を輸出すれば良い、というのが、それまでの商社の生き方でした。はたしてそれで良いのか、疑問に纏われながらの竹根好助でした。その竹根が、何とか現状で仕事をしながら活路を見いだそうと考えていました。
 しかし、問題は、そんなに簡単なものではなく、苦悩する竹根です。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
     直前号 ←クリック

◆6-10 かほりに電話をしようか・・・
 懐かしい香りと共にかほりからの手紙を繰り返し読み続けた。読めば読むほど、心が乱れる竹根である。
――これでいいのだろうか――
――かほりさんにとって、これでいいのだろうか――
 自問自答を繰り返した。
――女性にここまで言わせておきながら、今更自問自答もなかろう――
 竹根は決心がついた。すぐにかほりに電話をした。呼び出し音が鳴り出した。胸がときめく。なんて言おうのか、考えもしないでかけてしまった。なんて言おう――
 呼び出し音はするけど、かほりは出てくれない。
――かほりさんの声を聞きたい――
 まだ、呼び出し音が鳴っている。
――これは、神様がかほりとの結婚を許さないという合図なのか――
 その時間は、日本では午前中で勤務時間中である。かほりは会社であろう。それがわかるとホッとした。神を信じているわけではない竹根が、神の啓示のように思ったことを、自分ながらおかしく思った。
――そうだ、たとえ会社で仕事中であろうと、かほりに一言感謝の言葉を伝えよう――
 そう思うと、もう受話器を握ってダイヤルを始めた。何度もかけたことのある会社の電話番号である。会社の交換台にすぐに繋がった。
「相本さんをお願いします」
「失礼ですが、どちら様でしょうか」
 竹根は一瞬躊躇した。
「竹根と申しますが、相本さんには名前を言わないでつないでください」
 交換嬢は、それが同じ福田商事の竹根からとは気がつかないらしい。一瞬クスッと笑ったように聞こえた。
「はい、海外営業部の相本と申します」
――あの声だ。かほりさんの・・・――
 竹根が何も言わないと、「どちらさまでしょうか」と聞こえてきた。
「誰だと思います?」
 かほりの驚いた様子が、電話の向こうにうかがえた。
「手紙をありがとう。だけど、私から連絡をするまで、動かないでください。よろしいですね」
 有無を言わさない竹根の言い方は、かほりにとっては初めてである。かほりは涙をこらえようとするが、ほおをツーと流れるのがわかる。うなずくだけで、声にはならない。
「かほりさんの気持ちがうれしい。では電話を切ります」
 かほりは受話器を握ったまま、うつむき状態で見える範囲の周囲を見回した。誰もかほりのことを見ている人はいないようである。他の人に見られないように、化粧室に飛び込んだ。ハンカチで目頭を押さえてから、目の周りとほおを水に濡れた手で涙を拭いた。じっと鏡の中の自分を見つめた。しばらくして落ち着いたところで化粧をし直した。
――好助さんは私の気持ちを受け入れてくれたのだわ――
 竹根の声がまだかほりの耳に残っている。力強い「連絡するまで動くな」という言葉が・・・
  <続く>

■ バックナンバー
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【小説風 傘寿】 老いぼれ... | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

【小説風 傘寿】老いぼれコンサルタントの日記」カテゴリの最新記事