十一月のはじめの時の移ろいは 蔓草の葉の黄金色の楯を ふいに 一滴の血しぶきのように 濃い朱色に染めて 散らす 妖精が花をあしらい 小人が織りなす 苔のしとねに ものみな慈しめと (R.ブラウニング)。今宵 黄昏の光の中に この年は暮れてゆき 詩人は 秋深い森で 想いに沈み 枯葉のもらす もの悲しい 吐息に 耳傾ける だが 年の守護の天使は 精霊の昇天のように 旅立ち 春は緑 夏は輝かしい 青だった 時の衣を 脱ぎすてる いまは地上の使命をすべて果たし 幾千の谷を 珠玉の実りで満たし 果樹園には 薔薇色の果実 また いたる所に花をふりまき しばし西の方に 天使は歩みをとどめ やさしい別れの微笑で 沈みゆく日の 五彩の光となって すべての者に送り いま 神のもとへ帰ってゆく(ドイツの詩より)。おお はげしい西風 秋の精の息ぶきよ 姿の見えぬきみの登場に 枯葉は震えて 妖術者に追われた亡霊のように 散り果てる 黄ばみ やがて黒ずみ 蒼ざめ また熱病に赤く 悪疫に冒された者の群れ それをしり目に 暗い冬の臥床へと きみの戦馬は駆り立てる 翼のある種子は そこを墓として 冷たい屍のように 臥して待つ いつの日か きみの青空の姉妹 春の風は吹き起こり 花の馬車を駆って 夢見る大地を訪れ (大気で養った 羊の群れのように 芳わしい新芽を伴い) あざやかな色と香りで 平野を 丘陵を満たす日を待つ 荒ぶる精霊よ いたる所に働く者よ 破壊しまた 守護する者よ 聞け おお聞け 私を きみの竪琴として弾け たとえあの森のように あまねく 私の葉が枯れ落ちてもかまわない 響きわたる きみの雄壮な音楽は 秋の調べの 沈む想いをとき放ち また 悲しみの甘美な響を奪うのだ 猛々しい精よ 私の精霊となれ 激情の精よ この宇宙から 私の重い魂を追いはらえ 枯葉のように 新しい誕生を促すために そして この詩の呪文によってふりまけ まだ火の消えぬがより 灰と 火花を散らすように 私の言葉を 全人類に向って 私の唇を借り 予言の辣叺を 吹きならすのだ おお 風よ 冬来たりなば 春遠からじ と ”西風の詩” (シェㇼー)