第三幕-3
同じ病室。桜子がパイプ椅子に座っている。
また立ち上がって遠藤の掛け布団を直し、眠っている遠藤に話しかける。
桜子:遠藤小吉さん。いいお名前ですね。欲張らず、
身の丈にあった生き方をしろという願いが込められていますよね。
私は物心付いたときからあなたのお名前を存じておりましたよ。
もっと早くにお会いしたかった。
ボブがバタバタと病室に入ってくる。
ボブ:あ、桜子さん。今、警察から帰ってきたところです。
義兄の具合はどうです。
桜子:ずっと寝たまんまです。
ボブ:義兄は明日、警察病院に搬送されるそうです。
まったく、僕まで聴取されるなんて…。
身内が犯罪者になるなんてこれ以上ない最低な気分ですね。
桜子:で、何を聞かれたんです?
ボブ:義兄に以前からロリコンの気がなかったか、とか、
クリスティとの間に子供ができなかったのは
夫婦生活に何か問題があったからじゃないか、とかですよ。
まったく、クリスティが死んだ後でよかったよ。
生きていたとしたら、どんなに嘆き苦しんだ事か…。
桜子:まあ、警察って怖い。
ボブ:そして、義兄の家にも案内されましたよ。
小さな家。中流階級の住む家じゃないか。
一体全体、義兄はクリスティの遺産を相続しなかったんだろうか?
いくら隠居の身とはいえ。
桜子:あのね、日本は土地が狭いの。だから不動産はとってもお高いの。
だから、みんな小さな家で我慢してるのよ。
ボブ:僕たちの父親はテキサスオイルカンパニーの筆頭株主でした。
僕とクリスティは父の死後、株式の5%ずつを相続した。
クリスティはそれをすぐ換金しスイスのチューリッヒシティバンク
に預けたと言っていた。その額は3000万ドルです。
本当はもっと快適な暮らしができていた筈なんだ。
そうすれば、こんな犯罪にも巻き込まれずに済んだかも知れない。
桜子:いくらお金を持っていたとしても幸せとはいえないわ。
伯父さんはきっと寂しかったのよ。
家族も友達もいなかったんだから。一人ぼっちだったのよ。
だから、若い子ともう一度青春を謳歌したかったのよ。
ボブ:若い子と青春を謳歌あああ?
今日、警察で少女の動画を見させられましたよ。
何と言う暗い目!性的虐待を受けていたのは明らかだ。
僕は少女のあんな暗い目は初めて見た。
それを、青春を謳歌だとおおおお?
桜子:ごめんなさい。怒らないでちょうだい。教養がないものですから私。
ボブ:いや、興奮して申し訳ありませんでした。
桜子:私はふと、伯父と相手の方が本当に愛し合っていたんじゃないかって
気がしたものですから。
ボブ:あなたは教養がないんじゃなくて、世間の裏側をご存知ないだけだ。
男が商売女相手に真剣に付き合うものか。
桜子:そういうものなんですか?
ボブ:そうですとも。そりゃ中には商売女を愛していると勘違いする男もいる。
自分のどす黒い欲望を愛という名のオブラートで包んで
不幸な女に束の間の夢を見させる。
しかしそれは、女の心をも征服したいというもう一つの欲望にすぎない。
偽善のかたまりだ。
やがて女が自分以外の男にも同じサービスをしているという
厳しい現実に薄っぺらなオブラートは溶け、
男の口には苦い後悔だけが残る。
もしそれをクリアしたとしても
スカスカ女との夜の生活に男はすぐに飽きる。
桜子:スカスカ女!?
ボブ:そう、スカスカ女。失礼、女性に
桜子:そうね、真剣になる男ってうざったいだけだったわね。
私はあなたのおっしゃる世間の裏側、男が男のために作り上げた
売春のシステムの一から百までを知り尽くしたそのスカスカ女よ。
世間は男女平等って言うけど、
なら女が女のためにそういう組織を作ればいいのよ。
女だって、くたびれて腹の突き出た亭主より
若いマッチョな男に情熱的に愛されたいわよ。
それを商売にすればいいじゃない。
でも、できないわね。
男と女は体の造りが違うものね。
その時点で女の負けよね。そう思わない?
だって、あなたこんなおばあちゃん相手に役に立たないでしょ?
立つの?立たないの?どっちよ。
ボブ:う、あんた…
同じ病室。桜子がパイプ椅子に座っている。
また立ち上がって遠藤の掛け布団を直し、眠っている遠藤に話しかける。
桜子:遠藤小吉さん。いいお名前ですね。欲張らず、
身の丈にあった生き方をしろという願いが込められていますよね。
私は物心付いたときからあなたのお名前を存じておりましたよ。
もっと早くにお会いしたかった。
ボブがバタバタと病室に入ってくる。
ボブ:あ、桜子さん。今、警察から帰ってきたところです。
義兄の具合はどうです。
桜子:ずっと寝たまんまです。
ボブ:義兄は明日、警察病院に搬送されるそうです。
まったく、僕まで聴取されるなんて…。
身内が犯罪者になるなんてこれ以上ない最低な気分ですね。
桜子:で、何を聞かれたんです?
ボブ:義兄に以前からロリコンの気がなかったか、とか、
クリスティとの間に子供ができなかったのは
夫婦生活に何か問題があったからじゃないか、とかですよ。
まったく、クリスティが死んだ後でよかったよ。
生きていたとしたら、どんなに嘆き苦しんだ事か…。
桜子:まあ、警察って怖い。
ボブ:そして、義兄の家にも案内されましたよ。
小さな家。中流階級の住む家じゃないか。
一体全体、義兄はクリスティの遺産を相続しなかったんだろうか?
いくら隠居の身とはいえ。
桜子:あのね、日本は土地が狭いの。だから不動産はとってもお高いの。
だから、みんな小さな家で我慢してるのよ。
ボブ:僕たちの父親はテキサスオイルカンパニーの筆頭株主でした。
僕とクリスティは父の死後、株式の5%ずつを相続した。
クリスティはそれをすぐ換金しスイスのチューリッヒシティバンク
に預けたと言っていた。その額は3000万ドルです。
本当はもっと快適な暮らしができていた筈なんだ。
そうすれば、こんな犯罪にも巻き込まれずに済んだかも知れない。
桜子:いくらお金を持っていたとしても幸せとはいえないわ。
伯父さんはきっと寂しかったのよ。
家族も友達もいなかったんだから。一人ぼっちだったのよ。
だから、若い子ともう一度青春を謳歌したかったのよ。
ボブ:若い子と青春を謳歌あああ?
今日、警察で少女の動画を見させられましたよ。
何と言う暗い目!性的虐待を受けていたのは明らかだ。
僕は少女のあんな暗い目は初めて見た。
それを、青春を謳歌だとおおおお?
桜子:ごめんなさい。怒らないでちょうだい。教養がないものですから私。
ボブ:いや、興奮して申し訳ありませんでした。
桜子:私はふと、伯父と相手の方が本当に愛し合っていたんじゃないかって
気がしたものですから。
ボブ:あなたは教養がないんじゃなくて、世間の裏側をご存知ないだけだ。
男が商売女相手に真剣に付き合うものか。
桜子:そういうものなんですか?
ボブ:そうですとも。そりゃ中には商売女を愛していると勘違いする男もいる。
自分のどす黒い欲望を愛という名のオブラートで包んで
不幸な女に束の間の夢を見させる。
しかしそれは、女の心をも征服したいというもう一つの欲望にすぎない。
偽善のかたまりだ。
やがて女が自分以外の男にも同じサービスをしているという
厳しい現実に薄っぺらなオブラートは溶け、
男の口には苦い後悔だけが残る。
もしそれをクリアしたとしても
スカスカ女との夜の生活に男はすぐに飽きる。
桜子:スカスカ女!?
ボブ:そう、スカスカ女。失礼、女性に
桜子:そうね、真剣になる男ってうざったいだけだったわね。
私はあなたのおっしゃる世間の裏側、男が男のために作り上げた
売春のシステムの一から百までを知り尽くしたそのスカスカ女よ。
世間は男女平等って言うけど、
なら女が女のためにそういう組織を作ればいいのよ。
女だって、くたびれて腹の突き出た亭主より
若いマッチョな男に情熱的に愛されたいわよ。
それを商売にすればいいじゃない。
でも、できないわね。
男と女は体の造りが違うものね。
その時点で女の負けよね。そう思わない?
だって、あなたこんなおばあちゃん相手に役に立たないでしょ?
立つの?立たないの?どっちよ。
ボブ:う、あんた…
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