キューピーヘアーのたらたら日記

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『象』 レイモンド・カーヴァー 村上春樹 訳

2021-07-18 15:00:01 | 
レイモンド・カーヴァー最晩年の小説集。

7つの短編小説が収められている。


結論から言えば、

カーヴァーを初めて読むという人に

本書はすすめない。


カーヴァーらしくない

気の滅入る小説が多かった。

読みながら僕は、

カーヴァーも癌を告知され

平常心ではいられなかったのだな

と勝手に同情を寄せていたのだが、

訳者の村上春樹の解説によると、

告知後の作品は最後の『使い走り』のみであるらしい。


だが、この短編集を読むと、

死を意識した人が動揺を隠しきれないで

参った自分を露呈させている、

としか思えないのだ。

多分、予感のようなものはあったのだろう

と思う。


ただ、『使い走り』においては

もう諦観の境地に達している。

チェーホフの死の前後を描きながら

自らの死をシミュレートしているその目は

冷徹で自己憐憫などみじんもなく、

作家レイモンド・カーヴァー最後の作品にふさわしく

優れた作品に仕上がっている。



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