私の家は喫茶店をしている。喫茶店とは言っても定食屋みたいなものだ。自宅まで電話一本あれば配達もしている。子供の頃、配達の母親に付いて行くのが好きだった。ワゴン車に乗って、知らない演歌のカセットを聞きながら配達の場所に行くのが好きだった。
いつもの場所に車で向かっている時、必ず道路の脇の石段に座っているおばぁちゃんがいた。しわくちゃの白髪頭のおばぁちゃんは、私の顔を見ると必ず手を振ってくれた。
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私は、小学生の頃、ただ、一度だけ万引きに付き合わされたことがある。付き合ったというよりその場所にいたといったほうがいいだろう。
私の友達は悪かった。ケンという名前で、小学一年から、タバコを吸っていたし、金を盗もうと常日頃から考えていた。まさか本当に実行に移すとは夢にも思っていなかった。
「マリの家にいこうぜ」真夏のとても暑い日に、何気なく誘われた私は、ついていくことにした。マリは女の友達で金 . . . 本文を読む