恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

11.おばぁちゃん

2005年07月13日 | 家族
 私の家は喫茶店をしている。喫茶店とは言っても定食屋みたいなものだ。自宅まで電話一本あれば配達もしている。子供の頃、配達の母親に付いて行くのが好きだった。ワゴン車に乗って、知らない演歌のカセットを聞きながら配達の場所に行くのが好きだった。
 いつもの場所に車で向かっている時、必ず道路の脇の石段に座っているおばぁちゃんがいた。しわくちゃの白髪頭のおばぁちゃんは、私の顔を見ると必ず手を振ってくれた。
 小さい手を大きく見えるように振ってくれるのだった。私も負けない位に大きく手を振るとニコッとしてくれる。笑顔が素敵なおばぁちゃんだ。私はいつもうれしい気持ちになった。
 ある時、ふとおばぁちゃんがいなくなった。子供心で、なぜいなくなったのかはよく分からなかった。
 現在、私も大人になった。母親にその事を話すとそう言えばいた様な気がするね。と言われた。
 最近、そこの場所を車で通った。
 何気ない普通の道路だったが、石段のイスに腰かけて手を振っているしわくちゃのおばぁちゃんの姿が見えたような気がした。
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