ゴールデンウィークという事もあり、久しぶりのデートで、カオリと一緒に遊園地に来ていた。
観覧車に乗るまでは良かったが、どうやら風邪をひいたみたいだ。
季節の移り変わりで熱も少しあるのだろう。
カオリの顔が薄っすらと歪んで見える。
カオリが遊園地の中にある鏡の世界という建物に入りたいと言った。
私は、あまり気が乗らなかったが、店の従業員にチケットを見せ、手を引かれる様に入りこんだ。
全部鏡張りになってて、自分の顔とカオリの顔が映し出されている。入る瞬間、前の鏡にぶつかった。「馬鹿ね。」とカオリが笑った。カオリだけ、更に奥の方に進んでいく。
「おい。早いよ。」カオリは、おかまいなしに先に行き、また鏡にぶつかった。
迷い込んだら逃げられないこの迷路。カオリと私の隙間にある気持ちのようだ。
カオリの事を探していると、鏡の後ろで手招きをしている髪が長い赤い服を着た女の人がいる。パッと後ろを振り返ったが誰もいない。
もう一度鏡の中を覗くと確かにいる。
「幻でも見ているのか。」顔をつねってみた。痛かった。なんだこの女は、鏡の中にいるぞと思った。
微熱があるからなのか。幻でも見ているのか。分からなくなった。
ふと横を見ると更に違う女がいる。ショートカットが印象的な女の人だ。目がクリッとしてて、可愛らしい女だ。
ここはそういう店なのか。男の客を喜ばせる為のサプライズなのか。
いや違う。女が鏡の中にいるサプライズなんて聞いた事がない。
二人とも私の方を見て、手招きをして何かを叫んでいる。ジッと見ると、どこか懐かしい感じがして、頭の回路の奥の方で、パチンとスイッチが入り思い出した。
この女達は、昔別れた女達だ。
次から次へと鏡の中に女が出てくる。学生服を着ている女もいる。これは、何年前の女だ。高校生の頃に付き合った女が出てくるなんて、幻に決まっている。
確かどれもこれもいい別れ方をしていない。
女の呪いなのだろうか。
「カオリ」と叫ぶとすぐ隣にいた。汗をグッショリとかいていた。
「さっきからうなされていたわよ。大丈夫。」と私の顔を覗き込んだ。
「やっぱり、カオリが一番だ。」と言うとカオリが笑顔で振り返り呟いた。
「私は鏡の中だよ。」
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観覧車に乗るまでは良かったが、どうやら風邪をひいたみたいだ。
季節の移り変わりで熱も少しあるのだろう。
カオリの顔が薄っすらと歪んで見える。
カオリが遊園地の中にある鏡の世界という建物に入りたいと言った。
私は、あまり気が乗らなかったが、店の従業員にチケットを見せ、手を引かれる様に入りこんだ。
全部鏡張りになってて、自分の顔とカオリの顔が映し出されている。入る瞬間、前の鏡にぶつかった。「馬鹿ね。」とカオリが笑った。カオリだけ、更に奥の方に進んでいく。
「おい。早いよ。」カオリは、おかまいなしに先に行き、また鏡にぶつかった。
迷い込んだら逃げられないこの迷路。カオリと私の隙間にある気持ちのようだ。
カオリの事を探していると、鏡の後ろで手招きをしている髪が長い赤い服を着た女の人がいる。パッと後ろを振り返ったが誰もいない。
もう一度鏡の中を覗くと確かにいる。
「幻でも見ているのか。」顔をつねってみた。痛かった。なんだこの女は、鏡の中にいるぞと思った。
微熱があるからなのか。幻でも見ているのか。分からなくなった。
ふと横を見ると更に違う女がいる。ショートカットが印象的な女の人だ。目がクリッとしてて、可愛らしい女だ。
ここはそういう店なのか。男の客を喜ばせる為のサプライズなのか。
いや違う。女が鏡の中にいるサプライズなんて聞いた事がない。
二人とも私の方を見て、手招きをして何かを叫んでいる。ジッと見ると、どこか懐かしい感じがして、頭の回路の奥の方で、パチンとスイッチが入り思い出した。
この女達は、昔別れた女達だ。
次から次へと鏡の中に女が出てくる。学生服を着ている女もいる。これは、何年前の女だ。高校生の頃に付き合った女が出てくるなんて、幻に決まっている。
確かどれもこれもいい別れ方をしていない。
女の呪いなのだろうか。
「カオリ」と叫ぶとすぐ隣にいた。汗をグッショリとかいていた。
「さっきからうなされていたわよ。大丈夫。」と私の顔を覗き込んだ。
「やっぱり、カオリが一番だ。」と言うとカオリが笑顔で振り返り呟いた。
「私は鏡の中だよ。」
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