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世にも不思議な物語。
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一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

14.午後の雨

2017年06月02日 | 雨の物語
 もうすぐ3時間目の国語が始まる。
 窓から、校庭の運動場を見るとどんよりとした薄暗い曇り空から雨が降っている。
 まったく雨の日は嫌いだ。じめじめと蒸し暑くなり、サウナに入ったような感覚に陥る。
 国語の児玉先生がドアをガラガラと入って来た。
 「ハイ。今から授業を始めます。」細長い男の先生だ。
 先生が黒板に問題を書いて、「誰か分かる人~」と聞いてきた。
 みんな分からないから俯いているのを見ると、児玉先生自ら手を挙げて、「ハイ、児玉君。」と自分で言って、スラスラと答えを黒板に書いた。その姿にみんな驚いた。まさか自分で言って、自分で答えたよとざわざわした。
 一時して、また問題を出して、今度は、隣の斎藤の名前を呼んだ。
 斎藤が立って、答えようとしたけど、間違ってたらしく、児玉先生が、大きな声で「無念~です。」と呟いた。
 宗教家か何かかと思ったが、授業を面白おかしくしていたに違いない。
 確かに私は国語の授業が好きになり、成績も上がった。
 3時間目が終わり、昼食の時間になった。
 隣のクラスのサヤが自分のクラスのノリコと弁当を食べるために入ってくる。
 その姿を見るのが好きだった。
 ショートカットで、さわやかな茶色の大きな瞳、紺色のブレザーの夏服を着こなしている。華奢な体によく似合っていた。
 隣の椅子に座り、机を挟んで対面でノリコと話をしながら、弁当を食べはじめた。
 私は少しだけ、意識をして、アンパンを食べ牛乳を飲む。
 サヤと目が合ったような合わないような感覚になり、黙って、アンパンをかじりながら、だるい外の雨を見ている。
 運動場側にある渡り廊下で、走っている友達が、出席簿を持った先生に怒られている姿が見えた。
 少しだけ笑みがこぼれる。
 サヤがこちらを見て、私の顔を見て笑ったのか、窓の外の風景を見て笑ったのかは分からないが、少し微笑んだ。
 その後に、サッカー部のキャプテンのケイスケがクラスに入って来た。
 女性はみんなケイスケに目が行く。背が高くて、かっこよくて、スポーツ万能で成績優秀だ。
 とてもかなわない。
 サヤもケイスケの方を見るとケイスケがサヤの方に来て、弁当の中の卵焼きを一つ取り上げて、食べた。
 「結構いけるな。」
 「やめてよ。」
 そんな会話が聞こえてきて、大声で、「無念~です。」と私は言った。
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