恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

13.カップル

2005年12月04日 | 若い恋
 お洒落の雰囲気の店内は、クリスマスが近づいている事もありにぎやかだった。
店内の音楽は、山下達郎のクリスマスイブが流れていた。
 彼女と久しぶりのデートで、家の近くの喫茶店に来ていた。
 もうすぐクリスマスという事で、サンタクロースの話しをしていた。
 ふと窓の外を見ると雪がスローモーションのように降っていた。隣の席の子供が窓越しに見て「わーきれい」と叫んでいた。
 私も隣の子供につられて雪を見ていると、昔付き合っていたノリコの事を思い出した。
 目の前の彼女と付き合う前、三年くらい付き合っていた彼女がいた。
 彼女よりはおとなしくて、ケーキ作りが趣味だった。ノリコは元気だろうか?チラチラと雪の降る日に公園で小さなチーズケーキを食べた事を思い出した。
 私がおいしいと言うと、ノリコは満足そうに雪の子みたいに微笑んでいた。
 店内の音楽が、山下達郎から、B'Zのいつかのメリークリスマスへと変わっていた。
 気がつくと、目の前の彼女が私の顔を覗き込んでいら立っていた。
 「ねぇ、ちゃんと聞いてる?この店でイブの夜過ごそうよ。」彼女が指を指した雑誌のページには、イルミネーションがキラキラと光るクリスマスツリーがよく見える店があった。値段もそれなりに高かった。
 「もちろん聞いてるよ。分かったよ。そこの店でイブを過ごそう。」彼女の顔を見ると、ノリコが今誰と過ごしているのか少し気になっていた。
 店内の音楽がB'Zからマライアキャリーへと変わった。
 彼女は、いら立ったまま雑誌を閉じるともう店を出ようと言った。
 外に出ると、年の暮れという事もあり、買物帰りの人や仕事帰りの人達が忙しそうに歩いていた。
 そんな人達に紛れて歩いていると、彼女が私の腕を急につかんで寂しそうな目をした。ノリコの事を考えていた事を見透かしているのかもしれない。
 私が「どうしたの?」と聞くと、彼女は静かに「おんぶして」と呟いた。
 私はぎこちない笑顔を浮かべると彼女をおんぶした。背中にずっしりと彼女の体重がのしかかった。
 「少し重くなったんじゃないか?」と冗談交じりに言った。
 怒るかなと思ったが、彼女はおんぶしてもらった事がうれしいのか、笑って頭を一回叩いただけだった。彼女の笑顔を見ると幸せな気持ちになった。
 おんぶしたまま、イルミネーションがキラキラと光る街を通り抜けた。
 降っていた雪は、いつの間にかノリコの思い出と共に消えていた。

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2 コメント

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お願い・・・・・ (ぱぷ子)
2005-12-05 09:58:05
消えないでほしい、



雪も、思い出も・・・・・。





・・・・・そしてお願い、



このままずっと、



ふたりでいさせて・・・・・!







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カップルになったら。 (キーボーです。)
2005-12-05 14:41:02
 カップルになっても、何かのきっかけで、別れた前の彼女の事を思い出したりするものかなと思い書いてみました。

 なった事はないですが、よく書けたと自分では思ってしまいました。

 雪のように嫌な思い出は早く消したいですよね。

 クリスマスには、いい思い出がたくさん皆さんに出来ますように☆
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