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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

20.お風呂屋さん ④

2018年04月15日 | お風呂屋さん
 今日も、お風呂のフロントに立っていると、おかしな客が入ってきた。
 券売機の前に立ってて、ずっと指と券売機を見ている。
 女の人で、歳は40代後半だろうか。黒い長い髪、鼻の所に大きなほくろがある。
 物まねタレントのコロッケが真似をするちあきなおみに少し似ている。
 30分~1時間たっても、券売機の前から動こうとしない。何をそんなに悩んでいるのだろうか。
 「ここのボタン押すんですよね。」女の人が髪をかき上げて聞く。
 「はい、そこのボタンです。」私が答えると、何回かおじぎをして、
 「ここですよね。」
 「はい。」そのやり取りを数十回して、やっと券を買って、フロントに出そうとするが、手を引っ込める。
 私が券を取ろうとすると引っ込めるので、どうしたものか。
 小銭をおく入れ物を目の間に置くと、「ここに置くんですよね。」と聞く。
 やれやれ。どうしろというのだろう。こんなに時間かかる人は初めてだ。
 じっと見ていると、やっと置いてくれた。
 そして、女湯を指さして、「ここに入っていくんですよね。」と言った。
 当たり前だろうと思ったが、笑顔で、私は頷いた。
 「そうです。」入ろうとすると、また戻ってきて、「券上げましたよね。」と言った。
 早く入ってくださいよと足をバタバタとして、心の中で叫んだ。
 漫才のやり取りだったら面白いだろうなと思ったけど、大変だ。
 何回か往復して、やっとお風呂に入ってくれた。
 お風呂も清掃の人に聞いたら、ずっとかかり湯をかけてて、やっぱり時間がかかっているようだ。
 帰り、閉店になって、「この自動ドアから出るんですよね?」と何回か聞いた後、自動ドアの前にそびえ立ってて、そこからが時間がかかる。
 暗闇で、見えない人と、話してて、まじで怖い。
 幽霊と「ここ初めてなんですよ。」「そうなんですか。」と会話しているのかもしれない。
 一人で笑顔で、呟いている。
 幽霊か何かが見えているのかもしれないし、その人におじぎをしているのかもしれない。
 私も、想像力豊かだが、幽霊までは見えない。たまにだが、何か気配は感じることがある。
 見える人なのかもしれないと思うと、背筋がぞっとした。
 深夜2時に車に乗る時も、横に立ってて、人形らしいものをあやしている。
 リングの貞子よりも怖すぎである。
 車に乗り込むと、エンジンを勢いよくかけて、頭を上下に振りまくっている。
 オウム真理教にでも入っているのだろうか。一時車を見ていると、エンジンをふかしながら、駐車場を一回出たと思ったら、戻ってきて、円を描き、何周か回って、やっと帰った。
 まったく、夜の仕事はコリゴリだなと思って、自分の車に乗り込む。
 まさか後ろに人形がいないだろうなとバックミラーを何回も見て、帰る時、事故りそうになった。

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