深夜の工事現場。今日はクリスマスイブなので、監督をはじめ、ヘルメットの上に、サンタの赤い帽子を被り、作業着も赤と白で統一している。トナカイの角をヘルメットに着けている者もいる。
交通誘導員も帽子は赤い帽子と長い白髭をつけて、車を誘導させている。誘導棒も赤と緑、グルグルと光っている。
約600メートルの道路は、オレンジや茶色、色とりどりのランプが四方八方で垂れ下がり、北風が吹くとランプを揺らして、妖艶な光で辺りを写し出している。
昨日から産気づいて、妻の吐き気が凄い。もうすぐ生まれるかと思うと心配だ。お腹も今出てきそうなくらいにパンパンに膨らんでいる。
「生まれそうかも。」妻が大きなお腹を抱え、破水していた。
「やばい。病院にいかないと。」パジャマの上からコートを着て、車のカギを取り、毛布で妻を包んで、マンションの部屋を出て、エレベータに乗った。
乗ると酔っぱらいのおじさんがいた。酒の匂いが室内に充満して、妻が「気持ち悪い。」と呟いた。
妻の背中を擦り、一階フロアへと着いた。酔っぱらいも降りて、おぼつかない足取りで、「ジングルベル。シングルベル。鈴が鳴るー。俺は寂しいクリスマス。ヘイ。」と陽気な替え歌を歌った。
駐車場へと向かい、車の助手席に妻を乗せ、マンションを出た。ここから、病院まで車で約15分の所にある。
妻の顔も真っ青になっている。エンジンをかけ、駐車場を出た。ハンドルを握る手に力が入る。
普段は、40キロを超した事がないが、時速80キロを出した。これなら10分弱で着きそうだと思い、更にアクセルを踏み込むと、後ろからパトカーのサイレン音が聞こえ、「前の車止まりなさい。」とスピーカーで叫んでいる。
「しまった。」スピード違反は、間違いないし、妻は、シートベルト締めていない。しかも、胸ポケットにいつも入れている免許証も家の中だろう。
もう一度「前の車止まりなさい。」と聞こえてきて、考える間もなく、車を道路の路肩に止めた。
パトカーから降りた警察官が運転席の窓際で「免許証を見せてください。」とお決まりの文句を言った。見る限り、大学卒業したての様な若い警察官だった。
「すみません。急に妻が産気づいて、免許証忘れて来ました。」
「そうなんですか。それは、お困りでしょう。」助手席に座っている妻の顔をライトで照らした。真っ青な顔をしている妻を見ると警察官は、「今から、病院まで誘導しますから、私のパトカーの後ろをついてきてください。」と言った。
「分かりました。」若い警察官が胸に付けているトランシーバーで、「応援を頼む。」と言った。
「いい警察官でよかったわね。」妻が小さな声で呟いた。
「本当。よかった。」窓を閉めて、パトカーの後ろをついていく。パトカーはサイレンを鳴らし、赤信号でも止まる事なく進んでいく。交差点ごとに、パトカーが一台増えた。前に二台、後ろに二台。合計四台の車が自分の車を警護するように張り付いている。大統領の警護でよく見る光景だなと思い、妻と苦笑した。
また、交差点に差し掛かると、全面通行止めの看板が出ていた。車を止める。
警察官が交通誘導員と話をしている。よく見ると、赤い帽子を被って、白髭がある。
警察官が私の車の所に走ってきて、「ここが病院から近いので、全面通行止めを一時的に解除してもらいました。」サイレンが絶え間なく流れている。
工事をしたであろう所に、鉄板を10枚くらい工事のおじさん達が被せている。
「よいしょ。よいしょ。」重いのか中々動かない。顔を真っ赤にして、鉄板を被せている。人手が足りず、警察官も手伝った。合計30人くらいの工事のおじさんと警察官が作業にあたった。
その姿を見た妻が「サンタのおじさん達、クリスマスの日に大変だね。」と言って静かに笑った。つわりの吐き気が少しは良いみたいだ。
私は、警察官と作業員とサンタの格好が、滑稽で可笑しかった。
頑張ってくれたので、あっという間にパトカーと車が通る道が出来て、ゆっくりと進んだ。
おじさん達が、微笑んで私たちに手を振っている。子供が生まれる事を知っているのだろう。
「子供がんばって生めよー。」「健康な子供生まれろー。」「メリークリスマス。」等と叫んでいるおじさんの姿がずらっと並んでいる。
「今日子供が生まれたら、この日の事を伝えようと思うわ。」
「あぁ、そうだな。」パトカーのサイレン音と工事現場の人達の温かい声が冬空にどこまでも響いていた。
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交通誘導員も帽子は赤い帽子と長い白髭をつけて、車を誘導させている。誘導棒も赤と緑、グルグルと光っている。
約600メートルの道路は、オレンジや茶色、色とりどりのランプが四方八方で垂れ下がり、北風が吹くとランプを揺らして、妖艶な光で辺りを写し出している。
昨日から産気づいて、妻の吐き気が凄い。もうすぐ生まれるかと思うと心配だ。お腹も今出てきそうなくらいにパンパンに膨らんでいる。
「生まれそうかも。」妻が大きなお腹を抱え、破水していた。
「やばい。病院にいかないと。」パジャマの上からコートを着て、車のカギを取り、毛布で妻を包んで、マンションの部屋を出て、エレベータに乗った。
乗ると酔っぱらいのおじさんがいた。酒の匂いが室内に充満して、妻が「気持ち悪い。」と呟いた。
妻の背中を擦り、一階フロアへと着いた。酔っぱらいも降りて、おぼつかない足取りで、「ジングルベル。シングルベル。鈴が鳴るー。俺は寂しいクリスマス。ヘイ。」と陽気な替え歌を歌った。
駐車場へと向かい、車の助手席に妻を乗せ、マンションを出た。ここから、病院まで車で約15分の所にある。
妻の顔も真っ青になっている。エンジンをかけ、駐車場を出た。ハンドルを握る手に力が入る。
普段は、40キロを超した事がないが、時速80キロを出した。これなら10分弱で着きそうだと思い、更にアクセルを踏み込むと、後ろからパトカーのサイレン音が聞こえ、「前の車止まりなさい。」とスピーカーで叫んでいる。
「しまった。」スピード違反は、間違いないし、妻は、シートベルト締めていない。しかも、胸ポケットにいつも入れている免許証も家の中だろう。
もう一度「前の車止まりなさい。」と聞こえてきて、考える間もなく、車を道路の路肩に止めた。
パトカーから降りた警察官が運転席の窓際で「免許証を見せてください。」とお決まりの文句を言った。見る限り、大学卒業したての様な若い警察官だった。
「すみません。急に妻が産気づいて、免許証忘れて来ました。」
「そうなんですか。それは、お困りでしょう。」助手席に座っている妻の顔をライトで照らした。真っ青な顔をしている妻を見ると警察官は、「今から、病院まで誘導しますから、私のパトカーの後ろをついてきてください。」と言った。
「分かりました。」若い警察官が胸に付けているトランシーバーで、「応援を頼む。」と言った。
「いい警察官でよかったわね。」妻が小さな声で呟いた。
「本当。よかった。」窓を閉めて、パトカーの後ろをついていく。パトカーはサイレンを鳴らし、赤信号でも止まる事なく進んでいく。交差点ごとに、パトカーが一台増えた。前に二台、後ろに二台。合計四台の車が自分の車を警護するように張り付いている。大統領の警護でよく見る光景だなと思い、妻と苦笑した。
また、交差点に差し掛かると、全面通行止めの看板が出ていた。車を止める。
警察官が交通誘導員と話をしている。よく見ると、赤い帽子を被って、白髭がある。
警察官が私の車の所に走ってきて、「ここが病院から近いので、全面通行止めを一時的に解除してもらいました。」サイレンが絶え間なく流れている。
工事をしたであろう所に、鉄板を10枚くらい工事のおじさん達が被せている。
「よいしょ。よいしょ。」重いのか中々動かない。顔を真っ赤にして、鉄板を被せている。人手が足りず、警察官も手伝った。合計30人くらいの工事のおじさんと警察官が作業にあたった。
その姿を見た妻が「サンタのおじさん達、クリスマスの日に大変だね。」と言って静かに笑った。つわりの吐き気が少しは良いみたいだ。
私は、警察官と作業員とサンタの格好が、滑稽で可笑しかった。
頑張ってくれたので、あっという間にパトカーと車が通る道が出来て、ゆっくりと進んだ。
おじさん達が、微笑んで私たちに手を振っている。子供が生まれる事を知っているのだろう。
「子供がんばって生めよー。」「健康な子供生まれろー。」「メリークリスマス。」等と叫んでいるおじさんの姿がずらっと並んでいる。
「今日子供が生まれたら、この日の事を伝えようと思うわ。」
「あぁ、そうだな。」パトカーのサイレン音と工事現場の人達の温かい声が冬空にどこまでも響いていた。
とても心温まるお話ですね~。
新しい命の誕生とともに、
多くの人の心もプレゼントしてもらえて、
幸せ120パーセントですね。
そして実は
このお話をアップしていただいた12月7日は、
私のお誕生日でして・・・
その日にこんな素敵なお話をアップしていただいていたなんて・・・。
ちゃっかり、素敵なプレゼントをいただいた気分になっちゃいました。
思わず、ありがとうございます☆って感じです。
まさか誕生日だったとは、おめでとうございます。
偶然とはいえ、誕生日プレゼントになったならよかったです。
素敵に年を重ねてくださいね。
つたない物語を、素敵なお話しと言っていただけて嬉しいです。
皆さんの心の中にありそうなお話を、常にアップしていきたいと思ってますが、改めて、物語の奥深さを感じてしまいますね。
また、読んでやってください。
この先が読みたいと想いました!
私はあまり本など読まないのですが
次は…どうなるのかな?って
想いました。
文章に気持ちが入っていて
感動しました!
現実にありそうでないような。でもあって欲しいようなお話をこれからも考えていきたいですね。
現実は多分、結構つらいことが多いので。せめて、物語だけでも、幸せな気持ちで読んで欲しいですね。
本を読まない人でも読めるをもっとうにこれからも書きたいと思ってますが、そろそろ限界かな(笑)
でも、感動したとか面白いとか言ってくれる人がいるので、また、つたないブログを続けていけそうです。
この先を書いてもいいのですが、味がなくなるんですよね。普通の小説みたいで(笑)想像してください。
あえてかくなら、病院に無事について、幸せになりましたとかかな。おもしろくないでしょ?(笑)
だから、いつも最後書きたくないんですよね。(笑)