夜になると冷たい風が吹いている。遠くから鈴虫が鳴いているのが聞こえてきた。鈴虫の鳴き声が夏の終わりを告げているかのように寂しく聞こえた。夏が終わるかと思うとせつなくなる。
夜の空を真ん丸い月が照らしていた。
近くにある銭湯から帰っているヒロシとリョウコは、肩を並べて歩いていた。ヒロシはタオルを頭に乗せていた。
リョウコと付き合ってもう長い。かれこれ三年くらい経った。お互い結婚を意識する歳なのかもしれない。
リョウコは美人だ。街で歩いていると知らない男が振り返るような美人だ。今も一緒に歩いていてそう思う。フロ上がりの髪をぬらしているリョウコを見て、いい女だなと思う。ひょっとしたら世界中で一番美しいのかもしれない。
「ヒロシ。月がきれいだね」リョウコは、月を指差した。私よりも月の方が照れて雲で隠れていた。
「今日は満月かな。リョウコの方がもっと綺麗だけどね」私も月に負けずに照れて言った。
「もう。そんな事ばかり言って。」二人声をそろえて笑った。
銭湯から帰っている親子連れやカップルが前を歩いていた。月の光で影が出来ていた。子供が親の影を踏んで遊んでいた。飽きると私達を見て、くすくすと笑っていた。
銭湯の湯の温もりが冷めた頃、ちょうどアパートへ着いた。
古びたアパートの階段を上がった。ギーギーと音が鳴った。登る時、踏み外さないかと心配でならなかった。
部屋は畳四畳半の狭い部屋だった。トイレとフロも共同だった。いつかお金持ちになってリョウコを安心させて幸せにしてあげたいと思う。
私の気持ちを察したのかリョウコがお茶を入れるからと台所へ向かった。
私は、靴を脱ぐと、すぐにベランダへ行って窓から月を見た。
外よりも更に大きく見えた。ずっとこのまま月を見ていたい気分になった。月には何があるのだろうか。きっと希望があると思えた。月の下を見下ろすとラーメンの屋台が来ていた。月の光で屋台がボンヤリと見えた。
「お茶入れたよ。どうぞ。」リョウコはお茶をテーブルの上に置いた。
「ありがとう。」私は机の側により、お茶を飲んだ。少し熱かった。熱さが舌から胃の辺りに来るまでに考えた。リョウコは、なぜ私のような男の所に来るのだろうか。
大学の頃、ミスコンテストに選ばれたと言っていた。そんなに美人ならお金持ちの所にお嫁にいけるだろう。私のような貧乏な男と付き合わなくてもいいだろうと思う。
「リョウコ。本当に俺みたいな男でいいのか?」毎晩聞く質問をした。何度聞いたか分からない。
「この前も言ったでしょう。ヒロシが大好きでここにいるの。他の男の人なんか嫌だから、ここにいるの。」
「そうか。」お互いしんみりとした。リョウコの大きな目が私の目を見ていた。見つめ合って一時沈黙が流れた。沈黙を破ったのはラーメンのチャルメラの音だった。
その後、急いで布団を押入れから引っ張り出した。
お互い裸になり、リョウコを強く抱きしめた。リョウコの体から石鹸の優しい香りが漂っていた。
ギシギシと狭い部屋が動いた。月が揺れて見えた。月の方も恥ずかしくて雲でまた隠れていた。
隣では、テレビの音量が急に大きくなった。私達の声が聞こえないようにしているのかもしれない。
リョウコは、猫のような甘い声を出していた。
下の部屋からはドンドンとおばさんが布団たたきで叩いていた。
一刻も早くここを引っ越さなければゆっくり出来ないなと思った。
リョウコは小さな声で「もう」と嘆いていた。リョウコも同じ事を考えているに違いない。
私の方がもっと「もう」と言いたかった。こんな生活はウンザリだ。
薄暗い電球のまわりを元気に飛びまわっているハエが無性に腹立たしかった。
夜の空を真ん丸い月が照らしていた。
近くにある銭湯から帰っているヒロシとリョウコは、肩を並べて歩いていた。ヒロシはタオルを頭に乗せていた。
リョウコと付き合ってもう長い。かれこれ三年くらい経った。お互い結婚を意識する歳なのかもしれない。
リョウコは美人だ。街で歩いていると知らない男が振り返るような美人だ。今も一緒に歩いていてそう思う。フロ上がりの髪をぬらしているリョウコを見て、いい女だなと思う。ひょっとしたら世界中で一番美しいのかもしれない。
「ヒロシ。月がきれいだね」リョウコは、月を指差した。私よりも月の方が照れて雲で隠れていた。
「今日は満月かな。リョウコの方がもっと綺麗だけどね」私も月に負けずに照れて言った。
「もう。そんな事ばかり言って。」二人声をそろえて笑った。
銭湯から帰っている親子連れやカップルが前を歩いていた。月の光で影が出来ていた。子供が親の影を踏んで遊んでいた。飽きると私達を見て、くすくすと笑っていた。
銭湯の湯の温もりが冷めた頃、ちょうどアパートへ着いた。
古びたアパートの階段を上がった。ギーギーと音が鳴った。登る時、踏み外さないかと心配でならなかった。
部屋は畳四畳半の狭い部屋だった。トイレとフロも共同だった。いつかお金持ちになってリョウコを安心させて幸せにしてあげたいと思う。
私の気持ちを察したのかリョウコがお茶を入れるからと台所へ向かった。
私は、靴を脱ぐと、すぐにベランダへ行って窓から月を見た。
外よりも更に大きく見えた。ずっとこのまま月を見ていたい気分になった。月には何があるのだろうか。きっと希望があると思えた。月の下を見下ろすとラーメンの屋台が来ていた。月の光で屋台がボンヤリと見えた。
「お茶入れたよ。どうぞ。」リョウコはお茶をテーブルの上に置いた。
「ありがとう。」私は机の側により、お茶を飲んだ。少し熱かった。熱さが舌から胃の辺りに来るまでに考えた。リョウコは、なぜ私のような男の所に来るのだろうか。
大学の頃、ミスコンテストに選ばれたと言っていた。そんなに美人ならお金持ちの所にお嫁にいけるだろう。私のような貧乏な男と付き合わなくてもいいだろうと思う。
「リョウコ。本当に俺みたいな男でいいのか?」毎晩聞く質問をした。何度聞いたか分からない。
「この前も言ったでしょう。ヒロシが大好きでここにいるの。他の男の人なんか嫌だから、ここにいるの。」
「そうか。」お互いしんみりとした。リョウコの大きな目が私の目を見ていた。見つめ合って一時沈黙が流れた。沈黙を破ったのはラーメンのチャルメラの音だった。
その後、急いで布団を押入れから引っ張り出した。
お互い裸になり、リョウコを強く抱きしめた。リョウコの体から石鹸の優しい香りが漂っていた。
ギシギシと狭い部屋が動いた。月が揺れて見えた。月の方も恥ずかしくて雲でまた隠れていた。
隣では、テレビの音量が急に大きくなった。私達の声が聞こえないようにしているのかもしれない。
リョウコは、猫のような甘い声を出していた。
下の部屋からはドンドンとおばさんが布団たたきで叩いていた。
一刻も早くここを引っ越さなければゆっくり出来ないなと思った。
リョウコは小さな声で「もう」と嘆いていた。リョウコも同じ事を考えているに違いない。
私の方がもっと「もう」と言いたかった。こんな生活はウンザリだ。
薄暗い電球のまわりを元気に飛びまわっているハエが無性に腹立たしかった。
とろけそうな
おはなしですねぇ…
美人のリョウコと、貧しいけれど、
愛に満ちた生活をしているヒロシ。
さいこうですねぇ…。
…途中から、ヒロシさん、「私」になっちゃってますけど、
…さては、キーボーさん、美人の彼女、できたかな???!
顔と性格が悪いからでしょう。自分で言ってればいけないかな。(笑)
こういう美人で性格もいい彼女が出来れば死んでもいいと思うんですけどね。
こういう生活が夢ですね。狭いアパート暮らしだけど、お互い愛に満ち溢れている。
お金なんていらない。純粋にお互いを見られる関係でいつまでもいたいものです。
いつか金持ちになって、彼女の為に尽くすそういう心構えが大切なのではないでしょうか。
「美人で性格もいい彼女ができれば死んでもいい」ってのは、美人じゃない女性は、ききたくない言葉ですね。でも、「あまりに幸せで、死んでもいい」って、どっかの小説にもあったけど、実はワタシも、…最近…感じてるんですよ......。
幸せすぎて何が幸せなのか分からなくなるのは幸せ恐怖症って言うのだそうです。
あまり幸せすぎると不倫などに走りがちになるので気をつけましょう。
彼女いなくても私も幸せなのかもしれませんね。
「てっきり旦那さんとうまくいってないのかなと思っていましたよ。(笑)」...これ、浅いですよ、読み。「あまりに幸せで、死んでもいい」って、結婚生活のこと言ってんじゃないですよ...。
「あまり幸せすぎると不倫などに走りがちになるので気をつけましょう。」...これは、鋭い!!!ですね。
...状況、わかっちゃう、かな...?
「幸せすぎて何が幸せなのか分からなくなるのは幸せ恐怖症って言うのだそうです。」...これ、肝に銘じておきます......。