学校が夏休みに入って何日か経ったある日、祖父と祖母と一緒に親戚の家に行く事になった。
初盆だからという事で、子供の私にはよく分からなかった。
電車を降りるとのどかな田園風景があり、草むらの香りが漂っていた。人もいなくて駅員さんがぽつんと一人駅の所に立っていた。
祖父が険しい顔をして「行くぞ。」と声をかけた。
久しぶりに兄を訪ねて行くので気合いが入っているみたいだった。私は、祖母の手を握り、駅の階段を降りた。
父親と母親は後から来るという話しだった。
獣道を歩いていく事20分。
やっと親戚の家に着いた。
木で作られた大きな家は、田んぼの中に一軒だけドンと大きく建っていた。
家の中に入るとお香のような匂いが鼻についた。
座敷が玄関に入るとすぐ傍にあり、クワや斧やチェンソー等たてかけられてあった。
おじさんとおばさんが出て来ると、「よう来なすった。」と江戸時代の様な言葉を発していた。
一通り挨拶が終わると、祖父と祖母は大人の話しをしていた。
私は、親戚の子供達とジャンケンで遊んでいた。
すると、おじさんの子供のルイちゃんがやって来て、「この辺蛍がいるんだよ。」と呟いた。
「本当。見たことない。」
「見に行く?」
「うん。」という訳で、夕暮れ時見に行く事になった。
ルイちゃんと手をつないで一緒に歩くと楽しかった。
それが恋だと知るのに大分時間がかかったけど、楽しかった。おじさんの家から10分くらいの所に大きな森があって、そこを小川が通っていた。
隣のトトロが出て来そうな感じがした。
ヒンヤリとした風が吹いてきて私たちを包んだ。
まだ薄暗かったせいか蛍が見えなかったが、一時経つと光が所々見えてきた。
葉っぱについて、蛍の尻の辺りが光輝いていた。
一匹見つけると、周りにも仲間がやって来て、私達に芸を見せびらかしている。 まるで、蛍のコンサートのようだ。
ルイちゃんは「きれい。」と一言呟いた。
私も「すげぇや。」と言い返した。
一時ボンヤリ見ていると、ルイちゃんが一匹捕まえた。
蛍は手のひらで怯えているかのように小さく光をはなっていた。
遠くの方で「ルイちゃん。ご飯よ。」とおばさんの声が聞こえて来た。
蛍の光を後にして、暗い中また手をつないで帰っていた。
ルイちゃんの手に力がこもっていた。
きっと夜道が怖かったに違いない。
二日ほど親戚の家に泊まり、帰る事になった。
駅でルイちゃんと別れる時が辛かった。
おばちゃんが黙っているルイちゃんに「何か言わないの。」と言ったら、手を振って「バイバイ。」と言った。
私も「バイバイ。」と手を振った。
大人になった今でも、時々その光景を思い出す事がある。
満面の笑みで蛍を掴んで見せるルイちゃん。
バイバイと悲し気に手を振る姿。
田舎の風の噂でそのルイちゃんが結婚したと聞いた事があった。
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初盆だからという事で、子供の私にはよく分からなかった。
電車を降りるとのどかな田園風景があり、草むらの香りが漂っていた。人もいなくて駅員さんがぽつんと一人駅の所に立っていた。
祖父が険しい顔をして「行くぞ。」と声をかけた。
久しぶりに兄を訪ねて行くので気合いが入っているみたいだった。私は、祖母の手を握り、駅の階段を降りた。
父親と母親は後から来るという話しだった。
獣道を歩いていく事20分。
やっと親戚の家に着いた。
木で作られた大きな家は、田んぼの中に一軒だけドンと大きく建っていた。
家の中に入るとお香のような匂いが鼻についた。
座敷が玄関に入るとすぐ傍にあり、クワや斧やチェンソー等たてかけられてあった。
おじさんとおばさんが出て来ると、「よう来なすった。」と江戸時代の様な言葉を発していた。
一通り挨拶が終わると、祖父と祖母は大人の話しをしていた。
私は、親戚の子供達とジャンケンで遊んでいた。
すると、おじさんの子供のルイちゃんがやって来て、「この辺蛍がいるんだよ。」と呟いた。
「本当。見たことない。」
「見に行く?」
「うん。」という訳で、夕暮れ時見に行く事になった。
ルイちゃんと手をつないで一緒に歩くと楽しかった。
それが恋だと知るのに大分時間がかかったけど、楽しかった。おじさんの家から10分くらいの所に大きな森があって、そこを小川が通っていた。
隣のトトロが出て来そうな感じがした。
ヒンヤリとした風が吹いてきて私たちを包んだ。
まだ薄暗かったせいか蛍が見えなかったが、一時経つと光が所々見えてきた。
葉っぱについて、蛍の尻の辺りが光輝いていた。
一匹見つけると、周りにも仲間がやって来て、私達に芸を見せびらかしている。 まるで、蛍のコンサートのようだ。
ルイちゃんは「きれい。」と一言呟いた。
私も「すげぇや。」と言い返した。
一時ボンヤリ見ていると、ルイちゃんが一匹捕まえた。
蛍は手のひらで怯えているかのように小さく光をはなっていた。
遠くの方で「ルイちゃん。ご飯よ。」とおばさんの声が聞こえて来た。
蛍の光を後にして、暗い中また手をつないで帰っていた。
ルイちゃんの手に力がこもっていた。
きっと夜道が怖かったに違いない。
二日ほど親戚の家に泊まり、帰る事になった。
駅でルイちゃんと別れる時が辛かった。
おばちゃんが黙っているルイちゃんに「何か言わないの。」と言ったら、手を振って「バイバイ。」と言った。
私も「バイバイ。」と手を振った。
大人になった今でも、時々その光景を思い出す事がある。
満面の笑みで蛍を掴んで見せるルイちゃん。
バイバイと悲し気に手を振る姿。
田舎の風の噂でそのルイちゃんが結婚したと聞いた事があった。
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