１３．横恋慕

　悟と朋美はいい関係を続けて三年が経とうとしていた。
　真夏の暑い午後、大事な話しがあると言って、朋美が悟を部屋に呼んだ。
　部屋に入ると朋美はこの世の終りみたいな深刻な顔をしていた。
　悟が「どうかしたのか。」と聞くと、「私、妊娠したの。」と言葉を探すように答えた。
　悟は一時考えて、「俺、絶対朋美を幸せにするから生もうぜ。」と呟くと同時に朋美は泣き出した。
　「実は悟の子供じゃないんだ。」部屋の中に言葉がポッカリ浮かんで重圧で沈んでいた。
　「俺の子供じゃないということはどういうことだ。」
　「登と一度そんな関係があったから、その時だと思う。」よりにもよって親友の名前を言うとは思ってもいなかった。
　「それじゃ、浮気をしたと言う事か。」
　「私、寂しかったの。」泣きじゃくる朋美を見て怒りが込み上げていた。
　「お前じゃ話しにならねぇ。登を今すぐ呼べよ。」悟は大声で叫んだ。一時して、登が走ってノコノコとやって来た。
　「悟ごめん。こんなハズじゃなかった。」土下座をして謝った。
　「うるせぇ。」悟が胸を掴んで、怒りの顔面を殴った。それで登は、部屋の壁にぶつかり倒れこんだ。
　「私が悪かったわ。お願いやめて。」朋美が登を助けるように前にふさぎ込んだ。オイオイ。助ける相手を間違っているんじゃないかと疑問がよぎった。登は倒れたまま何も言わず黙っている。
　「もういいよ。」二人を見て呆れ果て、悟は家に帰った。
　次の日。
　悟が家にいるとサイレンが鳴り響き警察がやって来た。
　「悟君ですよね。警察のものですけど、昨日登君が亡くなりましてね。ちょっと話しを聞かせてもらえますか。」警察手帳を見せられ、一瞬何がなんだか分からなかった。戸惑っていると更に話を続けた。
　「昨日の喧嘩で、殴られて打ち所が悪かったのでしょう。署までご同行願います。」ガチャと手錠をはめられパトカーに乗せられた。
　それから、悟は刑務所に入る事になり、子供の父親は死んだ。
　真夏に起きた悲劇。
　ほんの些細な浮気が原因だった。たった一度の過ちを誰にも言えず、朋美はどうする事もできないまま大声で泣く事しか出来なかった。
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