話すことと聞くことのバランスを維持しなさい
多くの人に好感を得て、時々その人たちから対話の相手になってくれと要請を受ける人の中に、相手の意志を無視して自分の主張だけを押し出す人は一人もいない。
相手に抑圧されたら人は当然反発心を持つものだ。相手が自分の言葉だけ押し出してこちら側の話に全く耳を傾けないならば、必ず、心の中で「自分だけすごいと、よくもまあ騒いで。」と思うはずだ。
話が上手いことと無駄口が多いことは厳格に違う。私たちは話が上手い人を「口が上手い」とか、「言葉使いが上手い。」と言う表現を使って尊重するが、無駄口が多い人にそのような表現を使わない。
それは単に「言葉だけ多い人」なだけだ。無駄口の多い人は大概話題を独占しようとするから、相手の口を封じやすい。
話が遮断された人はまるで水がいっぱいに満ちた器と同じだ。水はいっぱいに溜まったらあふれるものだ。話したい欲求でいっぱいに満ちた人の口には結局不満の声が出てくるものだ。
「あなたのしたい通りに思いっきり騒ぎなさい。私はこれ以上あなたの相手をしたくもないから。」
すべての対話が不可能な相手として、自分一人だけ騒ぐ言葉に疲れてしまった相手は一人ずついなくなって結局、彼は一人ぼっちになる。
大部分の人は他人の言葉を傾聴することよりも自分の話しに耳を傾けてくれることを望む。自分を主張したいし、自分を表現したい欲求に渇いているからだ。だから、穏やかな状況で自分の言葉を最後まで聞いてくれる人に会うとすぐに親近感を感じる。
「本当に意味のある時間でした。」
「機会があったならばもう一度お訪ねして話をしたいです。」
「おかげ様で楽しく貴重な時間を過ごしました。」
このような賛辞が相手の口から出たならばあなたはその人の心を完全に掴んだのに違いありません。
その人はあなたの洗練された言葉使いが好きになったのではなく、あなたの好意的な沈黙と積極的な肯定の表現に心を奪われたのかも知れません。
ある商売の上手い人に、客を引きつける秘訣が何なのか聞いた。
その答えはすごく簡単だった。
「私がやったことはただ客の言葉に耳を傾けることの他にありません。」
正にこれです。有能な商売人は体で対話のテクニックを会得した人です。
物を買ったり売ったりする所では製品に対する100の説明よりも顧客の話をよく聞いてやることが何よりも大きなサービスです。顧客の不平を言ったとしても1から10まで聞いてあげたら、すまなくてありがたい気持ちになってものを買うようになるのです。
ある時アメリカのある日刊紙にこんな広告が載ったことがあります。
「あなたの話を気分よく聞いてさし上げます。1時間10ドル。」
広告が出るとアメリカ全国から予約の電話が激しく降り注ぎ始め、広告を出した人はいくらも経たない内に大金持ちになったと言うことだ。
人の話を聞いてやることはその人の心を理解して受け取ると言う意味だ。
どんなに些細な話でも相手が注意深く傾聴しようとする配慮と関心を送ってくれるときに人は誰でも感動を受けるものだ。そんな時、あなたは一言も話さなくても相手に「有益な対話の時間を持ちました。」と言う充足感を持たせてやるのだ。
正しい対話の態度
1. 相手の話に一生懸命耳を傾ける。
2. 相手の話を止めない。
3. はじめて会った人の名前はすぐに覚えて使うようにする。
4. 相手の話が自分の意見と違っていてもその場で指摘してはならない。
5. 自分が相手よりはすごいと言う態度を見せてはいけない。
6. 自分の意見が間違っていたならば正直に謝罪する。