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取り戻した薬指
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私の薬指は普通の人よりも1関節分、短くなっています。
7歳の時の事故によるものです。母が私をしばらく実家に預けて仕事に出た時、従兄と鎌で遊んでいて指を切ってしまったのです。元に戻すのは不可能だという医者の言葉に、おばあさんは胸に大きな痛みを残し、母には流すことのできない罪責感を抱かせることになりました。父にとっても短くなった私の左の薬指は、生涯の傷として残りました。生活には支障は無かったのですが、時々人がチラチラ見る視線を感じる時は、何とかして指を隠そうと気を使いました。そんな日は何となく両親に対して神経を尖らせました。
「この手のせいで友達には怖がられ、人が注目するのよ。一生これでどうやって生きていくの、ううう、、」
両親を責めて恨んで不平不満をぶちまけると、それでも心が和らぐようでした。
そうやって歳月が流れたある日、急に父が一緒に病院に行ってみようと言いました。
「あちこち調べてみたけど、指を治すことができるかもしれないって。」
もしかしたら私もまた健全な指に戻るかもしれないという夢が膨らんで、その日から父と一緒に病院を探して行きました。ですが、行く病院ごとに治療は不可能だという絶望的な話だけを聞くことになりました。そうなると明らかに辛くなるはずなのに本当に不思議なことでした。辛いどころか不可能だという言葉を聞けば聞くほど、重かった胸が軽くなり穏やかになっていたのですから。
普通の薬指になるという希望より、もっと大きな贈り物を私はもらったのでした。それは私のために昼夜を問わずに病院を調べて連れて行ってくれた父の真心であり、病院を出てくる時に父が言ってくれた真心のこもった一言でした。
「あぁ、ごめんね。クニ。」
この間、私が辛かったのは短い指のせいではありませんでした。自分の身の上と状況が悔しくて悲しかったからでした。ですが、病院のうわさを頼りに通っている間、父が見せてくれた深い愛は、私の悔しさをきれいに治療してくれました。胸に深く刻まれた傷を。
少し後に私の左手には父の愛に似たキラキラする指輪がひとつはめられました。この指輪は父の愛のおかげで、もう恥ずかしくなくになった薬指を元気に見せようと自らに贈った指輪でした。