楽天モバイル「人口カバー96%」次の目標は衛星通信?
石野純也・ケータイジャーナリスト
同社は、21年夏の達成を目指す大幅な前倒し計画を20年8月に発表したが、
楽天モバイルの自社電波の人口カバー率が2月4日に96%に達した。
楽天モバイルは、自前の基地局がないところは、KDDIのネットワークを借りるローミングで電波を届けている。この契約は26年3月末まである。ただKDDIに支払うコストは膨大で、楽天モバイルの21年第3四半期(7~9月)の営業損失は1052億円まで拡大している。自社回線のエリアを拡大することで、これを圧縮できる。これまでもエリアの拡大に合わせ、楽天モバイルは21年10月、KDDIのローミングエリアを大幅に縮小した。同社とKDDIは半年に1回、ローミングのエリアを見直しているが、楽天モバイルの矢沢俊介副社長は「今残っているところ(8県)も、次回の協議でローミングから外す対象になるのではないか」という。計画通りにいけば、4月以降、建物の中や地下に電波を届ける一部施設を除いて、KDDIのローミング費用はほぼ発生しなくなる。矢沢氏は「ローミングの費用がピークアウトするのも、間もなくだ」と語り、楽天モバイルは23年以降の単月黒字化を目指す。
今後は地方で攻勢をかける
また、圧縮できた費用を原資にマーケティングキャンペーンを強化していくという。特に強化していくのが地方だ。東京23区、名古屋市、大阪市は本格参入当初からローミングをしていなかったため、利用者が多い。一方で、その他の地域は大都市圏の半分くらいの契約希望者にとどまっているという。今後は、地方のどこで使えるかといったメッセージを細かく打ち出しながら、営業店舗も増やしていく。屋内や地下など電波が届かない場所への対応は、「小型アンテナを1日に200から300カ所設置している」(矢沢氏)という。こうした小型アンテナや電波を中継する機器の「リピーター」は、すでに3万カ所を超えて設置しているそうだ。
開設計画より前倒しで人口カバー率96%を達成した楽天モバイルだが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは99%を超えており、依然として差はある。100%に近づけば近づくほど細かな場所への基地局設置が必要で、1%のエリアを広げるのに時間がかかるのが業界の常識だ。
衛星によるエリア拡大も計画
楽天モバイルも今後は人口カバー率100%を目指すが、その鍵になるのが、楽天モバイルも出資して事業を行う米ASTスペースモバイル社による衛星通信だ。AST社が打ち上げた低軌道衛星を使って宇宙から電波を届けるもので、楽天モバイルは、23年以降の実用化を目指す。これが実現すれば、人口カバー率に反映されない山間部なども、丸ごとエリア化できる。 矢沢氏によると、楽天モバイルは100%に近い人口カバー率の実現を、スペースモバイルも活用しながら計画していくという。ただ、衛星基地局は端末までの距離が遠いうえに、一つの衛星基地局がカバーする人数が多く、速度を出しづらい。法制度の課題もあり、実現にはまだ時間がかかる可能性がある。残る4%のエリアを、どうスムーズに構築していけるかは今後の課題と言えそうだ。
<「知ってトクするモバイルライフ」は毎週火曜日に掲載します>
塩梅(あんばい)