使ってみた第3世代「iPhone SE」5G対応とAI強化
石野純也・ケータイジャーナリスト
アップルが第3世代の「iPhone SE」を3月18日に発売する。半導体を強化し、高速通信規格の5Gに対応した。廉価モデルの位置づけで、価格は64ギガバイト(GB)版が5万7800円。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルも同日から扱う。発売に先立ち試用できたため、使用感をお伝えしたい。
デザインは第2世代を踏襲
デザインは約2年前の2020年4月に発売した第2世代を完全に踏襲している。第2世代、第3世代ともに17年9月に登場した「iPhone 8」をベースにしたホームボタンがあるモデルだ。大型化が進む最近のスマートフォンの中ではコンパクトで、しっかり手になじむ。画面の端に指が届き、文字が打ちやすいのもメリットだ
ただ、画面の4.7インチは最近のスマホの中では小さい。縦の長さも、iPhoneの最新モデルと比べると短いので、1画面に表示できる情報量は少ない。サイトやメールを読む際にはスクロールすればいいが、新しいスマホに慣れていると、写真や動画を見る際に迫力が足りないと感じるかもしれない。
AI強化で逆光も自動処理
心臓部の半導体は、21年9月に発売した「iPhone 13」シリーズと同じ「A15 Bionic」を採用した。処理能力は非常に高く、アプリは非常にスムーズに動く。A15 BionicはAI(人工知能)の処理能力を大きく強化した半導体で、iPhone SEもその機能を使える。写真に撮った文字を識別する機能(英語と数字のみ)や、標準搭載されている翻訳アプリに、AIの処理能力を活用している。
カメラの画質が向上したのも、画像処理の性能アップによるところが大きい。逆光や明暗差の大きい被写体を自動で識別して補正をかけるシステム「スマートHDR4」に対応する。筆者はiPhone SEで逆光の写真を撮ってみたが、普段なら白く飛んでしまう背景をしっかり写すことができた。
暗いところでの撮影で、複数枚の写真を撮り合成してノイズを減らす「ナイトモード」には非対応だが、夜景を撮った際のノイズは少ない。画質は、iPhone 13シリーズと比べるとやや劣る印象もあるが、5万円台の廉価モデルとしては十分なクオリティーだと感じた。
5Gのメリットを存分に使える
5G対応になり、通信速度が格段に速くなったのも評価できるポイントだ。日本では、第2世代のiPhone SEが発売される直前の20年3月に5Gのサービスがスタートしたが、第2世代は4Gまでしか使えなかった。サイトを見たり、SNSを使ったりするには4Gでも十分だが、アプリのダウンロードなどはどうしても遅くなる。動画を再生する際にも、5Gで速度が速いと高画質にできるなどのメリットがある。
今回筆者は、au回線で使ってみたが、東京都内では5Gでつながる場所が多く、移動中も快適につながる。駅など5Gエリアを強化した場所では、毎秒300メガビットを超えるスピードになることもあった。サイトを表示するときも待たされる感覚がなく、非常に快適だ。
指紋センサーでロックを解除したり、Apple Payで支払いができたりするのも快適だった。コロナ禍でマスクを着けている時が多いので、顔認証のフェイスIDよりホームボタンに指を置く指紋認証の方が使いやすい。iPhone SEはスマホを初めて使う利用者にも向いている一台と言えそうだ。
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