きのこ ゼミ ブログ

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紹介:「マツタケ菌根の人為的形成」 

2005年05月23日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆紹介:「マツタケ菌根の人為的形成」 
    吉村文彦 化学と生物, Vol.43(5), 285-287 (2005)


 以前井ノ瀬氏に紹介していただいた「ここまで来た!マツタケ栽培」の一部を著者の吉村文彦氏が紹介したコラムです。
 吉村氏は岩手県の岩泉まつたけ研究所の所長であった方で、東北地方におけるマツタケ栽培に力を注いでこられました。この春、まつたけ研究所は閉鎖され、吉村氏は現在出身地である京都に戻ってこられています。

 このコラムでは、これまでの成果の中から、マツタケシートを用いたマツタケの人為的な菌根増殖について紹介されています。マツタケシートとは不繊布にマツタケ菌糸を人工的に増殖させたものです。これをアカマツ幼苗に巻きつけて山へ植林し、もちろん山の管理を行いながら、マツタケ山を育成するという研究です。

 具体的なプランとしては、
・1年目 多数のアカマツの苗を発根処理して鉢植えにする
・2年目 アカマツ苗の細根にマツタケシートを接種し、山に植える
・3年目 マツタケ菌根が形成された苗を掘り起こし、直径30cmほ
    どの円周(初めてマツタケを発生するシロの大きさ程度)上に
    植えなおす
     気温の上昇につれて、マツタケは伸張するアカマツの根に感
    染してどんどん菌根を増やし、人為的なシロを形成する
     うまくいけば、その秋にマツタケが発生(?)

 先日、NHKの朝のニュース(関西版)でこの試みが京都西山で行われていると紹介されていました。西日本からは絶滅しつつあると言われるマツタケが復活するのでしょうか、楽しみなことです。


「蛹化(むし)の女」 歌:戸川純

2005年05月23日 | 面白きのこ情報
◆冬虫夏草をイメージした歌
 「蛹化(むし)の女」歌:戸川純

 先日、BGMでパッフェルベルの“カノン”を聴いたとき、ふと昔の歌を思い出しました。それは、この曲に冬虫夏草をイメージした歌詞をつけて歌っていたものです。

 ヨハン・パッフェルベル(1653~1706)はドイツ・バロックのオルガン音楽の発展の上で、バッハの先人として重要な位置にある作曲家です。 パッフェルベルの“カノン”といえば誰もが一度は聴いたことがあるほど有名で人気のある曲です。

 この“カノン”に歌詞をつけて歌っていた歌手が、戸川純です。奇抜な衣装と派手なステージ演出、旋律を無視したボーカルで一部には非常に人気のあった歌手です。代表曲は「玉姫様」「レーザーマン」です。 でも、この「蛹化の女」では戸川純がしっとりと“カノン”の旋律に不可思議なイメージの歌詞を載せて歌い上げています。

 歌詞だけを見ると理解しにくいところもあります。いえ、女性ならわかるのかもしれません。この不可思議な歌詞が“カノン”の旋律と戸川純の独特の歌声で切ない叫びが伝わってきます。

 機会があれば、一度聴いてみて下さい。

「蛹化の女」
   作詞:戸川純
   作曲:Johann Pachelbel(「カノン」より)
   編曲:国本佳宏

きのこの和英辞典2(補足)-ヒトヨタケの英名-

2005年05月11日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆きのこの和英辞典2(補足)-ヒトヨタケの英名-

ヒトヨタケ英名一覧
  ヒトヨタケ:inky cap (インクきのこ)
        smooth inky cap (すべすべしたインクきのこ)
  ササクレヒトヨタケ:shaggy inkcap (ぼさぼさのインクきのこ)、
            shaggy mane (ぼさぼさの頭髪)
  ワタヒトヨタケ:woolly inky cap (わたのようなインクきのこ)
  ネナガノヒトヨタケ:miniature woolly inkcap (ミニチュアわたインクきのこ)
  ヒメヒガサヒトヨタケ:Japanese umbrella (日本傘)
  キララタケ:glistening inky cap (きらきら輝くインクきのこ)、
        mica cap (雲母のかさ)

・きのこの和英辞典
 http://cocktail.kpu.ac.jp/agricul/woodmtrl/waei.htm


外生菌根共生系の生理状態とマツタケのパズル

2005年05月11日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆紹介:「外生菌根共生系の生理状態とマツタケのパズル」
    鈴木和夫 日本森林学会誌, Vol.87(1), 90-102 (2005)
               (きのこゼミ情報メール5月11日配信)


「日本人にとってマツタケは特別なきのこである」と誰が言ったか思い出せないけれど、頻繁に聞かされる言葉です。今回紹介する解説は、最近のマツタケ研究の成果をまとめたもので、現在進行形の内容も含めて極めて興味深いものです。

 まず、前置きに、マツタケ研究における一連と課題として、
  1.マツタケに類似する近縁種との種間の識別と種内の変異
  2.腐生菌か寄生菌か、本当に共生菌か?
  3.マツタケ菌根の形態形成
  4.マツタケのシロの動態と子実体形成
を挙げており、これらに関して自らの研究グループの成果を紹介しています。

 この解説の中で新しい知見として紹介されているものは次の事柄です。
・マツタケ菌根は発達過程で菌鞘の菌糸が減少し、フェノール類が増加して黒変し、菌鞘が非常に変化に富む。
・菌根内では内皮まで達するハルティヒネットを確認した。
・DNA解析からこの菌根内の菌糸がマツタケであることが判明した。
・宿主アカマツの細胞とハルティヒネットの間で、活発な物質交換が行われていることをATPase活性の分布から確認した。
・アカマツ-マツタケ菌根の迅速人工合成法を確立した。また、人工菌根の結果、アカマツ苗の生長が促進された。
・これらの研究成果から、これまで「マツタケは半寄生的である」という見解もあったが、典型的な外生菌根菌であることが判明した。
・マツタケシロの菌糸体およびアカマツの根の伸長は、5月から7月に活発に認められ、根は再び9月に伸長して、シロは1年間に10cm伸長した。
・子実体発生位置との記録から、マツタケのシロの活性部位は一般に幅10~15cm、深さ10cmの環状型をなしている。
・マツタケ子実体1本が発生するのに必要な菌糸体量は約100gである。
・マツタケ菌糸にはデンプン分解能力があり、アカマツ樹皮やブナおが屑を栄養源とすることが可能である。
・人工培養のためのマツタケ菌糸の成長促進には、界面活性剤や天然植物油(オリーブオイル)が有効である。

 鈴木先生の解説はいつも手前味噌の感があるんですが、ここで紹介している内容はまだまだ解析途中とはいえ、なかなか面白いので機会があれば一度読んでみてください。