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ダイオキシンを分解するきのこ

2008年04月14日 | きのこ ゼミ
◆ダイオキシンを分解するきのこ
(2008年4月13日 きのこゼミ発表より)

 『きのこがダイオキシンを分解する』というのは、割と知られた話題ではあるが、どんなきのこがダイオキシンを分解できるかについては正確な情報が出回っていないようである。そこで、ここではどんなきのこがダイオキシンを分解するかについて紹介する。

○これまでに塩素化ダイオキシンを分解すると報告されたきのこ
  Phanerochaete chrysosporium(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
  Phanerochaete sordida(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
  Phanerochaete subceracea(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
  Phlebia lindtneri(和名なし:シワウロコタケ属)
  カワラタケ(Trametes versicolor)
  ワサビタケ(Panellus stypticus)
  ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)
 
○その他の報告例
1)東京都報道発表 平成15年2月27日
 「キノコでダイオキシン類を4週間で60%以上分解できました」
東京林業試験場で行われた研究がHPに掲載されている。
きのこの種類は不明ですが、静岡大学との共同研究で提供されたコウヤクタケ科菌ということなので、おそらくIZU154株ではないかと考えられる。
 http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2003/02/20d2s300.htm
 http://www.tokyo-aff.or.jp/center/kenkyuseika/05_03/img/2005/2005_03.pdf

2)埼玉県環境科学国際センター 
 「マイタケ廃菌床によるダイオキシンの低減化試験」
実証実験開始後70日までで9%程度の減少があったが、実験開始後34日に上層廃菌床を交換した圃場では開始70日後では20%,15%減少した。
 http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BF00/dioxin/mugaika-annex2.html

3)広島県立大学 微生物工学研究室
 焼却灰200グラムにブナシメジ8号菌の使用済み培地20グラムをまぜたサンプルを10種類用意してダイオキシン濃度の変化を調べた。その結果、5カ月後の分解率は56~66%に達し、毒性も1/4程度に減っていた。しかし、菌は6カ月目に入ると弱りだしたという。
 http://www.local.co.jp/news-drift/news3.html

注)京都御苑自然観察会のホームページ(2007年4月29日)の中で、モリノカレハタケ属(モリノカレバタケの間違い)がダイオキシン類を分解するとあるが、公式な発表は見あたらない。
 http://www.kyotogyoen.go.jp/calendarView.php?20070429150850

(詳細は、きのこゼミ資料参照のこと)


参考資料
・Bumpus JA, Tien M, Wright D, Aust SD. (1985) Oxidation of persistent environmental pollutants by a white rot fungus. Science. 228:1434-6.
・伊藤和貴, 大川浩樹, 橘燦郎, 平林達也 (1997) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(II), ダイオキシン分解菌の酵素活性と2,7-Dichlorodibenzo-p-Dioxinの分解との関連およびダイオキシン分解菌のスクリーニング法の改良, 紙パ技協誌, 51: 1759-1768.
・Kamei I, Kondo R. (2005) Biotransformation of dichloro-, trichloro-, and tetrachlorodibenzo-p-dioxin by the white-rot fungus Phlebia lindtneri. Appl Microbiol Biotechnol. 68: 560-6.
・Mori T, Kondo R. (2002) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by wood-rotting fungi, screened by dioxin degrading ability. FEMS Microbiol Lett. 213: 127-31.
・Mori T, Kondo R. (2002) Oxidation of chlorinated dibenzo-p-dioxin and dibenzofuran by white-rot fungus, Phlebia lindtneri. FEMS Microbiol Lett. 216: 223-7.
・大川 浩樹; 伊藤 和貴; 橘 燦郎 (1999) 木材腐朽菌によるバイオレメディエーション(III)ダイオキシン分解菌による2,4,8-トリクロロジべンゾフラン及びジべンゾフランの分解, 紙パ技協誌, 53; 1054-1062.
・Sato A, Watanabe T, Watanabe Y, Harazono K, Fukatsu T. (2002) Screening for basidiomycetous fungi capable of degrading 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin. FEMS Microbiol Lett. 213: 213-7.
・Sato A, Watanabe Y, Bambang Nugroho N, Chrisnayanti E, Natusion UJ, Koesnandar Nishida H. (2003) Screening for dioxin-degrading basidiomycetes from temperate and tropical forests. World J. Microbiol. Biotechnol. 19: 763-766
・橘燦郎, 大川浩樹, 伊藤和貴, 沖妙, 平林達也 (1996) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(I), ダイオキシン分解能を有する菌のスクリ-ニングおよび選抜した菌と数種の木材腐朽菌による2,7-ジクロロジベンゾ-p-ダイオキシンの分解, 紙パ技協誌, 50: 1806-1815.
・Takada S, Nakamura M, Matsueda T, Kondo R, Sakai K. (1996) Degradation of polychlorinated dibenzo-p-dioxins and polychlorinated dibenzofurans by the white rot fungus Phanerochaete sordida YK-624. Appl Environ Microbiol. 62: 4323-8.
・Valli K, Wariishi H, Gold MH. (1992) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by the lignin-degrading basidiomycete Phanerochaete chrysosporium. J Bacteriol. 174: 2131-7.

雑感

2008年04月03日 | きのこ ゼミ 情報メール
とある学会でのこと。
ある著名なS大学のK先生のご発表。

「これまでの私の経験から、変わった形のきのこには、変わった成分が含まれていることが多くあります」

それに対する若手研究者からの質問。

「先ほど先生は、変わったきのこには変わった成分があると仰ってましたが、変わった成分があるから変わった形になるんじゃないでしょうか」

・・・・・(--;)。


まだまだきのこは神秘の存在のようです。
こういう会話が学会で普通に成り立つとは・・・。
他の生物、例えば、植物ならこういう会話は成り立たないでしょう。
もちろん、おわかりのように、きのこが特別な存在ではありません。

では、どう考えればいいのでしょうか?

ひとつの考え方を提示します。

まず、「変わった形」のきのこという考え方に問題がありそうです。
「変わった形」とはどういうものでしょうか?
逆に「普通の形」のきのこをイメージしてみて下さい。
柄の上に傘があって、傘の裏にはひだがある、マツタケのような形が「普通の形」としてみましょう。
いわゆる帽菌類と呼ばれていた形です。
これに該当しない形のきのこ、例えば、ラッパタケやホウキタケ、ホコリタケやブナハリタケ、スッポンタケ、さらにはサルノコシカケも全部が「変わった形」のきのこということになるのでしょうか。
これは、個人の先入観あるいは独断と言えます。
「きのことは、傘があってその下に柄のあるものだ」と決めつけた考え方があると、こういう発言になります。
大げさな言い方になるかもしれませんが、「変わった形のきのこ」といういい方をする人は、偏見に固まった人であると言えます。
きのこは、きのこであり、どんな形をしていたとしても、それはきのこなのです。
(ただし、「きのこ」という定義は、別の意味で難しいものですが、ここではそのことは棚に上げておきます)

もひとつ。
「変わった形のきのこ」が「変わった成分」を持っているのか、
「変わった成分」を持っているから「変わった形」になるのか?

どう考えます?

ここでは進化論的な見方を書いてみます。
「変わった形」のきのことは、系統学的に独特のものだと考えてみます。
そうすると、その中に含まれる化学物質は他のきのこには含まれていない物質が見つかることがあるかもしれません。
つまり、「変わった成分」が「変わった形」を規定しているのではなく、系統的に他のきのことは違うから、他のきのこが含んでいない物質を含んでいることがある、のではないでしょうか。

ご意見をいただければ幸いです。<(_ _)>