◆ダイオキシンを分解するきのこ
(2008年4月13日 きのこゼミ発表より)
『きのこがダイオキシンを分解する』というのは、割と知られた話題ではあるが、どんなきのこがダイオキシンを分解できるかについては正確な情報が出回っていないようである。そこで、ここではどんなきのこがダイオキシンを分解するかについて紹介する。
○これまでに塩素化ダイオキシンを分解すると報告されたきのこ
Phanerochaete chrysosporium(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phanerochaete sordida(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phanerochaete subceracea(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phlebia lindtneri(和名なし:シワウロコタケ属)
カワラタケ(Trametes versicolor)
ワサビタケ(Panellus stypticus)
ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)
○その他の報告例
1)東京都報道発表 平成15年2月27日
「キノコでダイオキシン類を4週間で60%以上分解できました」
東京林業試験場で行われた研究がHPに掲載されている。
きのこの種類は不明ですが、静岡大学との共同研究で提供されたコウヤクタケ科菌ということなので、おそらくIZU154株ではないかと考えられる。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2003/02/20d2s300.htm
http://www.tokyo-aff.or.jp/center/kenkyuseika/05_03/img/2005/2005_03.pdf
2)埼玉県環境科学国際センター
「マイタケ廃菌床によるダイオキシンの低減化試験」
実証実験開始後70日までで9%程度の減少があったが、実験開始後34日に上層廃菌床を交換した圃場では開始70日後では20%,15%減少した。
http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BF00/dioxin/mugaika-annex2.html
3)広島県立大学 微生物工学研究室
焼却灰200グラムにブナシメジ8号菌の使用済み培地20グラムをまぜたサンプルを10種類用意してダイオキシン濃度の変化を調べた。その結果、5カ月後の分解率は56~66%に達し、毒性も1/4程度に減っていた。しかし、菌は6カ月目に入ると弱りだしたという。
http://www.local.co.jp/news-drift/news3.html
注)京都御苑自然観察会のホームページ(2007年4月29日)の中で、モリノカレハタケ属(モリノカレバタケの間違い)がダイオキシン類を分解するとあるが、公式な発表は見あたらない。
http://www.kyotogyoen.go.jp/calendarView.php?20070429150850
(詳細は、きのこゼミ資料参照のこと)
参考資料
・Bumpus JA, Tien M, Wright D, Aust SD. (1985) Oxidation of persistent environmental pollutants by a white rot fungus. Science. 228:1434-6.
・伊藤和貴, 大川浩樹, 橘燦郎, 平林達也 (1997) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(II), ダイオキシン分解菌の酵素活性と2,7-Dichlorodibenzo-p-Dioxinの分解との関連およびダイオキシン分解菌のスクリーニング法の改良, 紙パ技協誌, 51: 1759-1768.
・Kamei I, Kondo R. (2005) Biotransformation of dichloro-, trichloro-, and tetrachlorodibenzo-p-dioxin by the white-rot fungus Phlebia lindtneri. Appl Microbiol Biotechnol. 68: 560-6.
・Mori T, Kondo R. (2002) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by wood-rotting fungi, screened by dioxin degrading ability. FEMS Microbiol Lett. 213: 127-31.
・Mori T, Kondo R. (2002) Oxidation of chlorinated dibenzo-p-dioxin and dibenzofuran by white-rot fungus, Phlebia lindtneri. FEMS Microbiol Lett. 216: 223-7.
・大川 浩樹; 伊藤 和貴; 橘 燦郎 (1999) 木材腐朽菌によるバイオレメディエーション(III)ダイオキシン分解菌による2,4,8-トリクロロジべンゾフラン及びジべンゾフランの分解, 紙パ技協誌, 53; 1054-1062.
・Sato A, Watanabe T, Watanabe Y, Harazono K, Fukatsu T. (2002) Screening for basidiomycetous fungi capable of degrading 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin. FEMS Microbiol Lett. 213: 213-7.
・Sato A, Watanabe Y, Bambang Nugroho N, Chrisnayanti E, Natusion UJ, Koesnandar Nishida H. (2003) Screening for dioxin-degrading basidiomycetes from temperate and tropical forests. World J. Microbiol. Biotechnol. 19: 763-766
・橘燦郎, 大川浩樹, 伊藤和貴, 沖妙, 平林達也 (1996) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(I), ダイオキシン分解能を有する菌のスクリ-ニングおよび選抜した菌と数種の木材腐朽菌による2,7-ジクロロジベンゾ-p-ダイオキシンの分解, 紙パ技協誌, 50: 1806-1815.
・Takada S, Nakamura M, Matsueda T, Kondo R, Sakai K. (1996) Degradation of polychlorinated dibenzo-p-dioxins and polychlorinated dibenzofurans by the white rot fungus Phanerochaete sordida YK-624. Appl Environ Microbiol. 62: 4323-8.
・Valli K, Wariishi H, Gold MH. (1992) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by the lignin-degrading basidiomycete Phanerochaete chrysosporium. J Bacteriol. 174: 2131-7.
(2008年4月13日 きのこゼミ発表より)
『きのこがダイオキシンを分解する』というのは、割と知られた話題ではあるが、どんなきのこがダイオキシンを分解できるかについては正確な情報が出回っていないようである。そこで、ここではどんなきのこがダイオキシンを分解するかについて紹介する。
○これまでに塩素化ダイオキシンを分解すると報告されたきのこ
Phanerochaete chrysosporium(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phanerochaete sordida(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phanerochaete subceracea(和名なし:コウヤクタケ科マクカワタケ属)
Phlebia lindtneri(和名なし:シワウロコタケ属)
カワラタケ(Trametes versicolor)
ワサビタケ(Panellus stypticus)
ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)
○その他の報告例
1)東京都報道発表 平成15年2月27日
「キノコでダイオキシン類を4週間で60%以上分解できました」
東京林業試験場で行われた研究がHPに掲載されている。
きのこの種類は不明ですが、静岡大学との共同研究で提供されたコウヤクタケ科菌ということなので、おそらくIZU154株ではないかと考えられる。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2003/02/20d2s300.htm
http://www.tokyo-aff.or.jp/center/kenkyuseika/05_03/img/2005/2005_03.pdf
2)埼玉県環境科学国際センター
「マイタケ廃菌床によるダイオキシンの低減化試験」
実証実験開始後70日までで9%程度の減少があったが、実験開始後34日に上層廃菌床を交換した圃場では開始70日後では20%,15%減少した。
http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BF00/dioxin/mugaika-annex2.html
3)広島県立大学 微生物工学研究室
焼却灰200グラムにブナシメジ8号菌の使用済み培地20グラムをまぜたサンプルを10種類用意してダイオキシン濃度の変化を調べた。その結果、5カ月後の分解率は56~66%に達し、毒性も1/4程度に減っていた。しかし、菌は6カ月目に入ると弱りだしたという。
http://www.local.co.jp/news-drift/news3.html
注)京都御苑自然観察会のホームページ(2007年4月29日)の中で、モリノカレハタケ属(モリノカレバタケの間違い)がダイオキシン類を分解するとあるが、公式な発表は見あたらない。
http://www.kyotogyoen.go.jp/calendarView.php?20070429150850
(詳細は、きのこゼミ資料参照のこと)
参考資料
・Bumpus JA, Tien M, Wright D, Aust SD. (1985) Oxidation of persistent environmental pollutants by a white rot fungus. Science. 228:1434-6.
・伊藤和貴, 大川浩樹, 橘燦郎, 平林達也 (1997) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(II), ダイオキシン分解菌の酵素活性と2,7-Dichlorodibenzo-p-Dioxinの分解との関連およびダイオキシン分解菌のスクリーニング法の改良, 紙パ技協誌, 51: 1759-1768.
・Kamei I, Kondo R. (2005) Biotransformation of dichloro-, trichloro-, and tetrachlorodibenzo-p-dioxin by the white-rot fungus Phlebia lindtneri. Appl Microbiol Biotechnol. 68: 560-6.
・Mori T, Kondo R. (2002) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by wood-rotting fungi, screened by dioxin degrading ability. FEMS Microbiol Lett. 213: 127-31.
・Mori T, Kondo R. (2002) Oxidation of chlorinated dibenzo-p-dioxin and dibenzofuran by white-rot fungus, Phlebia lindtneri. FEMS Microbiol Lett. 216: 223-7.
・大川 浩樹; 伊藤 和貴; 橘 燦郎 (1999) 木材腐朽菌によるバイオレメディエーション(III)ダイオキシン分解菌による2,4,8-トリクロロジべンゾフラン及びジべンゾフランの分解, 紙パ技協誌, 53; 1054-1062.
・Sato A, Watanabe T, Watanabe Y, Harazono K, Fukatsu T. (2002) Screening for basidiomycetous fungi capable of degrading 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin. FEMS Microbiol Lett. 213: 213-7.
・Sato A, Watanabe Y, Bambang Nugroho N, Chrisnayanti E, Natusion UJ, Koesnandar Nishida H. (2003) Screening for dioxin-degrading basidiomycetes from temperate and tropical forests. World J. Microbiol. Biotechnol. 19: 763-766
・橘燦郎, 大川浩樹, 伊藤和貴, 沖妙, 平林達也 (1996) 木材腐朽菌によるバイオレメディエ-ション(I), ダイオキシン分解能を有する菌のスクリ-ニングおよび選抜した菌と数種の木材腐朽菌による2,7-ジクロロジベンゾ-p-ダイオキシンの分解, 紙パ技協誌, 50: 1806-1815.
・Takada S, Nakamura M, Matsueda T, Kondo R, Sakai K. (1996) Degradation of polychlorinated dibenzo-p-dioxins and polychlorinated dibenzofurans by the white rot fungus Phanerochaete sordida YK-624. Appl Environ Microbiol. 62: 4323-8.
・Valli K, Wariishi H, Gold MH. (1992) Degradation of 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin by the lignin-degrading basidiomycete Phanerochaete chrysosporium. J Bacteriol. 174: 2131-7.