きのこ ゼミ ブログ

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バイオカフェ「アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐を誘導する植物セスキテルペン」

2005年11月28日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐を誘導する植物セスキテルペン
    大阪府立大学 生命環境科学部 林英雄・秋山康紀
 http://biocafe.kobe-c.ac.jp/upload/hayashi/index.files/frame.html
               (きのこゼミ情報メール11月28日配信)


日本生物工学会関西支部では、新しい企画としてバイオカフェを開始しました。

HPの解説によると:
バイオカフェ(Biocafe)とは
ホームページを通じて大学の研究室と一般参加者とを結び、講演会(説明会)を開催して、さらにお互いの交流を深める新しいタイプの講演会です。
http://biocafe.kobe-c.ac.jp/

この中に、菌根菌の研究解説がありましたので、ご案内します。
解説としては詳しくはありませんが、一度ご覧下さい。

「森林生態系の落葉分解と腐植形成」

2005年11月28日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆紹介「森林生態系の落葉分解と腐植形成」
 B.バーグ&C.マクラルティー/著 大園享司/訳
 シュプリンガー・フェアラーク東京
               (きのこゼミ情報メール11月28日配信)

 リター(litter)という語はおそらく一般の方にはなじみがないものであろう。広辞苑(第5版)にはその語は見当たらず、ジーニアス英和辞典(第3版)をひいてlitterを探すと、【1】散らかったもの、くず、ごみ、がらくた、【2】乱雑、混乱(状態)、【3】寝わら、【4】担架、担いかご【5】(ブタ・イヌなどの)一腹の子、などと出てくる。より収録語数の多いリーダース英和辞典(第2版)ではかろうじて【2】寝わら、(ペットのトイレに敷く)砂、厩肥、(木の根もとの)敷きわら、(森林の地表を覆う)落葉落枝(層)、葉積(層)、と出てくる。つまりこの本で扱っているリターという語は、英語圏でもほとんど日常の語としては使われていないことになる。

 “リター”とは、森林中における土壌の上層の植物由来の有機物を多く含む層を示し、落葉・落枝・樹皮・花・種子・昆虫の死骸・微生物などから構成される。実際には大部分が植物由来の物質であり、セルロース・ヘミセルロース・リグニンが主成分である。

 森林植物が地球の大気中の酸素を大量に生産していることは多くの人が認識していることであるが、その一方で大量の二酸化炭素を吸収し、光合成により有機物として固定していることも忘れてはならない。こうして固定された有機物は、草食動物・昆虫の餌となり、さらにこれらの動物・昆虫は肉食動物・昆虫の餌となる。いわゆる食物連鎖である。こうして見ていると、全ての生物のエネルギー源を植物が作り出していることになる。しかし、こうした有機物は永遠に存在するものではなく、いずれは分解され、やがては土に還り、再び大気中の二酸化炭素となる。いわゆる炭素循環というものがこの流れである。

 リター分解に関する研究は、森林生態系における炭素循環の重要なポイントであるとともに、地球上の炭素循環の大きなパートを占める。調査対象となる森林は、国が違えばもちろん違う植生になり、それは国内でも同じことで、さらに同一地域のごく近い場所でも同じ植生が存在しないため、ある地域のケーススタディに陥ってしまう危険性をはらんでいる。しかし本書は、リター研究について多くの研究データをまとめ、様々な視点からデータを紡ぎ上げており、特定の地域のケーススタディに収まることなく一般論へ導きうる大きな視野からの森林の動態研究にまで発展している。

 ただ残念なことは、ここで紹介されている木質成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)のきのこによる生分解についての解説は、リターではなく木材について行われた研究例ばかりであり、木材腐朽菌による分解機構がそのままリター分解に適用できるかについての議論はやや物足りない。この点について、最近の知見があれば、きのこ研究者にも本書は受け入れやすかったであろう。

専門者向き(大学院生以上)